官能小説販売サイト 船地慧 『制服の冒険』
おとなの本屋・さん


船地 慧    制服の冒険

目 次
1 桃の食べごろ
2 学園のエマニエル
3 〃ターザン〃ごっこ
4 妖精をおか
5 セックス入門書のききめ
6 青い性がうずく
7 〃福チン〃をねらえ!
8 濡れすぎたモデル
9 森でける青春
10 レッスンは濃厚に

(C)Satoshi Funachi

◎ご注意
本作品の全部または一部を無断で複製、転載、改竄、公衆送信すること、および有償無償にかかわらず、本データを第三者に譲渡することを禁じます。
個人利用の目的以外での複製等の違法行為、もしくは第三者へ譲渡をしますと著作権法、その他関連法によって処罰されます。


   1 桃の食べごろ

     1

 自転車での通学の行き帰りに、すぎもとは、その少年と出会うことが多かった。帽子のしょうから、少年は八重の通っている大沼女子学院の北にある、尾上工業高校の生徒だ、と分かっていた。
 学校への一本道の県道にさしかかるあたりから、八重は前方に少年の姿を見かけたり、後ろから追い抜かれたりした。顔も体つきも武骨そうな少年だった。
 八重も少年も、この春、高校二年になっていた。県道は田園のなかを真っ直ぐに伸びている。田園は広々と遠くの山裾まで拡がり、陽春の訪れとともに、れんげ草やたんぽぽの花が咲き乱れていた。
 その日の朝も、八重はその少年の姿を前方に見た。八重は親友のなみようと並んで自転車を走らせていた。車などときどきしか出くわさない道が一キロほど続き、東西に伸びる市街道路との交差点に出る。大沼女子学院高等部の校門は、その十字路を右折したあたりにある。
「八重、あいつ、よっく見かけるわね」
「そうね。そういえば、もう二年目になるわよね。あたいは意識したことないけどさ」
 八重は長めのひだスカートをひるがえして、ペダルを踏む。白いソックスの脚がふくらはぎまで見える。目が大きく、顔立ちも整っている。ほっそりとした体にしては、でんが大きい。その臀部がサドルの上でモクッ、モクッと動く。
「朝の挨拶くらい、してもよさそうなものなのに。〃おっす〃とかさ」
 唇をゆがめて洋子はいった。丸顔でずんぐりむっくりの体型だ。セーラー服の胸元は、はちきれんばかりに盛り上がっている。
「あいつ、人見知りするタチなのかな。コナかけてもこないってのは」
「過保護の一人息子だったりしてさ」
「こっちも声かけたりしないしね。あたいの好みじゃないから」
 八重は笑った。大沼女子学院はその名のとおり、女生徒ばかりの高校だけに、男性への関心は異常なほど高く、ボーイフレンドの数を自慢にするような風潮がある。男女共学の普通高校よりも、不純異性交遊や妊娠などの事件は多い。生徒の誘惑に負けて、教師が〃淫行〃に走ったりもするのである。
「あいつ、カモろうよ。八重のその美貌とスタイルなら相手はころり。気晴らしに丁度いいじゃない?」
 男性にモテたためしのない洋子は舌なめずりした。魅力的な八重に男を釣らせ、そのおこぼれにありつこうという寸法だ。
「洋子もいうわねえ。う、ふふっ――じゃあ、決めた。ただし、いざというときになって、もたつかないことね」
 八重は自信ありげにうなずき、笑った。少年の姿は視界から消えていた。

     2

 数日後の帰校時、八重は校門の前で少年を見かけた。ゆっくりとペダルを踏んでとおかる自転車を、八重は追っかけた。数分後には自転車を並べていた。
「ちょっとオ、あんた。名前は何ての?」
 八重の声はいささかうわずっていた。自分のほうから男性に声をかけるなんて、はしたない、と思ったが、洋子の前で強がった手前、ぜひとも少年と関係をつけたかったのだ。
「えっ、名前かあ。さくらいさむってんだがなあ、何か用かい?」
 桜井は過保護らしくないしっかりした声でいって、太い眉を寄せた。
「別に――ただ、一年も前から顔を知ってて、名前も知らないんじゃ、サマにならないでしょ。あたいは杉本八重、お友だちになりたいのよー」
 それは高慢な、いつもの八重の言葉ではなかった。いってしまってから、お安く見られるかな、と後悔した。
「ほ、ほんとうかい。からかっているんじゃない?」
 一瞬、桜井は口ごもり、笑った。白い歯並びを、八重はきれいだと思った。
「マジよ、マジ。おかしいかなあ」
「おれ、前から、キミに目をつけてたんだ。だけど声をかけたりする勇気がなくて――」
 桜井は前方を見つめていた。五段変速ギヤをローの2に落とす。前方の家並みが近づく。県道はそこで左右に分岐する。八重の名も家も桜井は前から知っていた。何度も八重を尾行したことがあるのだ。
「ふうーん。そうだったの?」
 八重は桜井に親しみを覚えはじめていた。
「キミの家は、宮内町の角っこの薬局だろ。中学生の妹がいてさ、あの子もかわいいよなあ」
「よーく知ってるのねえ。感心しちゃうな」
「だからいったろう、たんだよ。表のコンドームの自動販売機で、コンドームを五回くらいは買ったかな」
「ばーか、スケベー。よっくいうよ。するとあんた、ガールフレンドがいて、青春してるってわけ?」
 見かけによらず、こいつ発展家なんだな、と八重は思った。八重の初体験は昨年の夏だった。
 ディスコで知り合った大学生と、海水浴に行き、乗せてもらった車のなかで、処女を奪われた。
 よくあるケースだ。その後その大学生とは十回ほどセックスしたが、今年になってからは会っていないし、会いたいとも思わなかった。彼への恋情はさめていたのだ。
「なかなか。この面だもんな、モテるもんかあ。キミんとこで買ったコンドームをチンポにかぶせ、キミの姿を想像してオナってたさ。八重といっぱーつ、なんていっちゃったりしてさ」
 桜井は案外あけすけで、饒舌だった。
「いやだあっ、嘘でしょ?」
 八重は顔をしかめて笑った。男根にコンドームをはめてオナニーする桜井の姿が、目に浮かぶようだった。
「ほんとだよ、ほんと。その顔、そのスタイルだもんな、憧れちゃうよ――おれ、キミの写真持ってるんだぜ。それを見ながらシコシコやると、ドバーッ。大量放出ってわけ」
 冗談とも真面目ともつかない表情で、桜井はいい放つ。
「あたいの写真、持ってるわけないじゃん」
「うっしっし。それが、持ってるんだなあ。プールサイドに立ってるキミの水着姿――ヨッコにもらったんだ」
「ヨッコって、なみようのこと?」
「そう、あいつ、おれの家の近くなんだ。中学校も一緒だったしな」
 県道を境に、右は田崎中学の校区で左は森脇中学の校区だ。田町二丁目の洋子は、田崎中学の出身だが、八重は森脇中学の卒業だった。洋子が桜井と同じ中学だったとは――。
「ああ、それで――あいつ、あんたのことを。彼女、顔が悪い分だけ、頭はいいのかな」
 八重はうなった。洋子はモテないひがみから、双方をたきつけていたのだ。畜生めッ、思い知らせてやらなきゃあ、と八重は思った。
「彼女、キミに何かいったのかい?」
「まあね。でもそうと分かれば、とっちめてやらなきゃあ。ふ、ふふっ」
 あいまいに八重は言葉を濁したが、そのとき頭のなかには、洋子がたまげるような妙案が浮かんでいた。
「どういうことか知らないけど」
 桜井は首を振った。
「あいつ、あたいとあんたをいいようにあしらっているってわけ。彼女の思いどおりに、あたいたちお友だちになっちゃうというのはどうかしら?」
「いいよ、キミと友だちになれるなんて、ごきげんだよ」
 桜井はうれしげな顔を、八重に向けた。気持ちのはずみが、ペダルを踏む足に出ている。
「じゃあ、善は急げ。ええっと、今度の日曜日の午後二時、あたいのうちでおデイトってことにしない?」
「うん、キミさえその気なら」
 二人は丁度県道と直角に交わる街路の交差点まできていた。
「約束したわよ。きっとよ」
 八重は自転車のハンドルを右へ切った。背を見せてとおかる。桜井はせっかちで強引な八重の言葉に、不自然なものを感じたが、弾む気持ちに不自然さは圧し潰され、別段気にはならなかった。左の道へ折れた桜井は口笛を吹いていた。


 
 
 
 
〜〜『制服の冒険』(船地慧)〜〜
 
*このつづきは、ブラウザの「戻る」をクリックして前ページに戻り、ご購入されてお楽しみください。
 
「船地慧」 作品一覧へ

(C)おとなの本屋・さん