官能小説販売サイト 隆麗司 『女秘書の濡唇〜五時からのオフィス〜』
おとなの本屋・さん


隆 麗司    女秘書のくちびる〜五時からのオフィス〜

目 次
第一章 PM4:30 ミルク色の太腿が展示場の車のなかに舞う
第二章 PM9:30 研修所のテニス更衣室で淫惑のポーズを
第三章 PM11:00 経理課の奈津子先輩の熱い愛撫にとろけて
第四章 PM3:00 まさか重役室のなかでこんなことを……
第五章 PM9:30 狭いヨットの上で牝と牡の獣となって
第六章 PM5:00 課長の罠におちて無人の検査室で襲われ……
第七章 PM8:00 ソ連人バイヤーの灼熱の肉鋼に貫かれて

(C)Reiji Ryu

◎ご注意
本作品の全部または一部を無断で複製、転載、改竄、公衆送信すること、および有償無償にかかわらず、本データを第三者に譲渡することを禁じます。
個人利用の目的以外での複製等の違法行為、もしくは第三者へ譲渡をしますと著作権法、その他関連法によって処罰されます。


 第一章 PM4:30 ミルク色の太腿が展示場の車のなかに舞う

     1

「では、お近づきを祝って乾杯しましょう」
 早瀬浩二は、料理の並んだテーブルを前にコの字型に座った小牧亜由美と、ソビエト人バイヤー、アレクセイ・イワノフに向かって、ちょっとポーズを作った。
「あなたのお国では、乾杯を何と言うのかしら」
 グラスに注がれたディジェスティフの柔らかな液体の色を眺めてから、亜由美は長いまつげを動かして、アレクセイを見た。
 アレクセイは上手な日本語で答えた。
「ワタシタチ国デハ、乾杯ヲ、〃トースト〃ト言イマス」
「トースト? パンのトーストと同じですね」
 早瀬が軽く笑い、
「では、お客様を歓迎する意味で、トーストといきましょうか」
「ウレシイデス。デハ、トースト」
 アレクセイはグラスを目の高さに掲げ、店内の淡い照明を映して不思議な光沢をのせたワイングラスの陰から、粘っこい視線を亜由美に投げた。
(男に見られている……)
 亜由美は訳もなく胸がときめくのだった。
 男たちが自分の顔や、時にはかなりぶしつけに、胸のあたりに射るような視線を注ぐとき、彼女の神経にかすかな電流が走る。それは、男の胸のなかにある淫らな欲望を若い女の感覚がいち早くキャッチするからだが、亜由美はそのような内なるざわめきがとても快いものに感じるのだった。
(この人も、わたしに性の魅力を感じている)
 普通の娘ならば、あけすけに見つめられると反撥や恥じらいをおぼえるものだが、亜由美はちがった。男の視線を浴びるのを待ち受けているのだ。
 食前酒はおいしかった。オー・ド・ヴィーのなめらかで、はかない甘さが口のなかにひろがっていく。
 気がつくと、早瀬浩二も、アレクセイに負けるものかと、亜由美から目を離さないのだ。
 たしかに今夜の彼女はことのほか美しかった。
 ソビエト極東貿易公団日本担当のアレクセイを招いて、シベリア開発用機材を売りつける下工作をする大切な宴席にコンパニオンとして、特に秘書課から抜擢された彼女は、精いっぱいのおしゃれをしていた。早瀬も内心目をみはって、陸にあがった美しい人魚のような秘書の肢体に心を奪われている。
 場所は六本木。広尾の方角へ少し歩いた所を左へ折れた物静かな高級住宅地の真ん中にある高級フランス料理店へ、会社命令でアレクセイを招待し、機材売り込みを有利に進めるために、輸出課の若手社員早瀬と秘書課から小牧亜由美が接待係として選ばれた。
 会社の幹部も顔を見せない非公式な会談だったが、うまい酒と料理を並べてアレクセイを落とせという命令を、営業担当常務星野剛一から早瀬と亜由美は受け取っていた。
 小牧亜由美は、大手町に本社がある総合商社・アサヒ商事の秘書課に勤めている。
 秘書課には八人働いており、男三人、女五人である。女性五人は亜由美をふくめて二十代なかばの若さだが、なかでも亜由美は容貌、容姿ともに際立って美しかった。ただ美しいばかりでなく、育ちの良さが匂う立居振舞いや、身につける装飾品や、服の好みが垢抜けて、並みの娘とは一次元ちがっていると周囲の評判だった。
 シベリアの地下資源開発の共同事業を日ソ政府間で取り決めてから、開発機材売り込みにメーカーや商社が暗躍した。アサヒ商事でも、モスクワ支社勤めの経験がある輸出課の早瀬に、秘書の亜由美をつけて、いち早くソビエト貿易公団の実力者アレクセイにコネをつけたのである。
 早瀬浩二は今年二十七歳の中堅社員で、名門私立大学を卒業して五年前にアサヒ商事に入社し、営業畑を経て、三年前から輸出課勤務にまわった。
 折りから経済大国日本を支える輸出産業華やかなときを迎え、語学に堪能な彼は、ヨーロッパ、アメリカに出張の経験を持ち、アサヒ商事のエリート社員のひとりに数えられている。
 父親はやはり貿易商社の営業重役で、親子で貿易輸出関連の仕事に就いている。うりざね顔で、はっきりした目鼻立ちは育ちの良さを匂わせる坊ちゃんタイプだが、仕事の熱心さは人一倍で、社のOLたちにも人気があった。
 仕事もやり手だが、遊びの面でもなかなかの腕で、女性関係の噂も時折りきこえた。しかし、さっぱりした遊びをするので後くされを残さないことが悪い噂につながらなかった。要するに遊び上手の現代青年なのである。
 ところが、アレクセイはホステス役として出席した亜由美に気を奪われて、肝腎の商談が空転してしまう始末だった。
 早瀬にしても、アレクセイと歩調を合わせるかのように、食前酒を飲み、舌びらめのムニエルが運ばれた頃には、強いフルーツブランデーの酔いがまわったのか、話題はもっぱら亜由美の気をひくことばかりを並べたてている。
 亜由美も、久しぶりにやってきた六本木の高級レストランの雰囲気に刺激されて、しきりに機嫌を取り結ぶ二人の男と他愛ないジョークを投げ合った。
(早瀬さんて、噂にきいてたよりは、会話センスがある人だわ。こんな人ならば遊び相手にして、ちょっとつきあってもいいな)
 亜由美は、早瀬にそんな評価を下していた。そのくせ、アレクセイも捨てたものではないと未練たっぷりなのだ。
(ロシア人のオジンてお腹のでっぱった赤鼻男かと思ったら、案外、ミッキー・ロークばりのいい男だわ)
 アレクセイはかなり遊んでいる様子で、たくみな日本語を駆使して、きわどい話を持ち出し、早瀬がトイレに立った隙に、ふいに亜由美のしなやかな掌を握り、
「アナタ、本当ニ美シイ方デスネ。今夜、イカガデスカ。ワタシノホテル、ココカラ近イシ、夜景トテモキレイデスヨ」
 と露骨な誘いを持ちかけてきた。
「あら、すてき。ソビエトの男性って、とても誘い方がおじょうずね」
「オオ。デハ、ワタシノ申シ出ヲ受ケテクレマスネ」
「ちょっと待って。今夜は残念ながら仕事で来ておりますの。だからつぎの機会に」
「ツギノ機会。ソレハイツデスカ」
 亜由美の断わり方には拒絶ではない柔らかさがあった。アレクセイが身を乗り出したとき、トイレから早瀬が戻り、二人の意味ありげな様子をチラリと見て露骨にいやな顔をした。
 
 
 
 
〜〜『女秘書の濡唇〜五時からのオフィス〜』(隆麗司)〜〜
 
*このつづきは、ブラウザの「戻る」をクリックして前ページに戻り、ご購入されてお楽しみください。
 
「隆麗司」 作品一覧へ

(C)おとなの本屋・さん