二階堂修一郎 女が牝に変わるとき
目 次
I エッチなお仕置
II 締まりのいい女
III 四畳半の逢引き
IV 十七歳は濡れた
V 不倫に酔いたい
VI 燃えた女の告白
VII 背徳の恋に狂う
VIII 打算的な下半身
IX 蒸発した妻の謎
X 恍惚は死の香り
(C)Syuichiro Nikaido
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I エッチなお仕置
1
そろそろ彼がやってくる時間だ。
彼、こんなことになるときっと時間に正確なんだから……。
あたしは、しぶしぶ(でもないかな?)着ているものを全部脱いじゃうのだ。
そう、ブラもパンティもみいんな取って、生まれたまんまの姿にもどるの。
午後の五時半。
セックスするには、ちょっとだけ早いような気もする時間。
あたしの部屋。
お夕食の支度の真最中。
それなのに、何故、裸になるのかって?
彼の命令なの。
ううん。
命令でもないかなあ。
どうしてもいやなら、無理にとはいわないよ、と彼はやさしくいってくれたから。
でも、そのやさしくってとこが、くせものなんだなあ。
あたしが、結局、いわれたとおりにしないと、彼、決まって、小さないじわるをしてくるの。それもすっかり忘れた頃になって。陰険よね。あたしなんて、どっちかっていうと、にぶいほうだから、すぐには気がつかないのね。少おしたってから、あっ、あの時のことかあ、なんて思ったりするわけ。
たとえば、ついこのあいだも、こんなことがあった。
理由は、おそらく、夜中に、彼がふっと目醒めて、近くのスナックにのみにいこう、っていったんだけど、あたしは、いくら明日が日曜日でも、もうとってもとっても眠たかったから、いやあ、とそのまま寝ちゃったのよね。
彼は、
「そうか。それならいいよ。俺ひとりでのんでくるよ」
と、ぶつぶついいながら、でていったわ。
あとできいたら、やっぱりひとりじゃおもしろくなかったらしく、一時間ほどで帰ってきたらしかった。
そのちょうど一週間後の夜だった。
いつものように、あたしは、彼に抱かれていたんだけど……。
途中までは、いつもとたいして変わらなかった。
小さな波が、いくつか寄せてきていて、それが肉の芯にとどきそうなところだった。
「ああ、ああっ、ああん」
いつものように、あたしは息だか声だかわからないものをあげていたと思う。
「ううん……」
あたしが、エクスタシーにのぼりつめる間際の表情は、彼、とっくに熟知していた。
ぴたっ、と彼の動きが止まったのだった。まるで、おもちゃの電池が切れちゃったみたいに。
一瞬、何がなんだかわからなかったけど、すぐに、あれ、と思ったわ。
目を開いたら彼の顔があった。
「どうしたのよお、もう少しなのにい」
彼、横を向いて、知らん顔をした。
彼のペニスは、もちろん、あたしのバラの花びらのなかに、すっぽりと包まれたままだ。
「ねえ、ねえたらっ」
「今夜は、ここまででやめておこうかな」
「えっ!? 嘘っ」
彼、乳首をつまんで、もちあげた。それから、指で、びんびんと弾いた。
「痛いっ、もう……ううん……」
「さ、抜くぞ」
「いやっ、いやいや」
「じゃあ、どうするんだ?」
「続けてよ、このまま」
「おまえは、最近、わがままになって、俺のいうことをきかなくなったからなあ」
「そんなことない」
「出会った頃の素直さが、なくなってきたよ」
「ううん。そんなお話なら、あとできくからあ」
「ほんとだな」
「うん。だから、早くうっ」
早くしないと、せっかくの漣がどこかへいっちゃう。
あたしは、自分から彼に抱きついていった――。
だいたい、あの途中で、急に、じっとしちゃうなんて、女の子に失礼よね。
いくら、あたしと彼のなかだって、どうしていいかわかんなくなっちゃう。
きっと、のみについていかなかったことへの報復だったんだ。
彼、それから、何もいわなかったから、あたしもきかなかったけど、まちがいない。
そんな彼だからね、まあ、出来ることなら、いわれたとおりにしたほうがいいと思ってるの。
だって、あの途中で、ほんとにストップされたら、もうたいへんよ。
どういったらいいのかな、あそこがむずむず、もぞもぞ、しちゃったままで、眠ることも出来ないって感じ。
奥の部屋(といっても2DKなんだけど)にいって、ゆっくり服を脱ぐ。
ブラはそうでもないけど、パンティには、やっぱり少しだけ抵抗が残る。
するするって脱いで、丸めてベッドのそばに投げちゃうのだ。
すぐに抱かれるわけでもないのに、全裸になるというのは、ほんとに変な気分。自分の部屋だから、なおさらだ。
乳房を両手でもちあげてみる。
84センチだから、まあまあなのだ。
乳首は、あたしの最も感じる性感帯のひとつだから、あたしは、とくに大事にしている。
まさかとは思うけど、乳暈が大きくならないように念じつつ、もみもみする。
「ううん……」
自分でも感じちゃう。もっと愛撫していたい気もするけど、お夕食の支度の途中だし、彼、そろそろやってくるかもしれない。
エプロンをだす。
そうなの。
彼の希望は、あたしが、生まれたまんまの姿に、エプロンだけをつけて、お夕食の準備をすることなのよ。
エプロンは、胸も隠れちゃうやつ。そのほうが、色っぽいんだって。
あたしにいわせれば、自慢のおっぱいが、ぷりんぷりんとのぞいてたほうが、とっても色っぽいと思うんだけど、男のひとの心理も微妙だからなあ……。
エプロンのヒモを腰で結ぶと、リボンがお尻にかかる。
彼、それがたまらないんだって。
前から見ると、ちょうど、タンクトップみたいな服に、ミニスカートをはいているようなかっこうになるんだけど、振りむくと、お尻が丸だしになっちゃうところが、もうたまらないらしいの。
ばかねえ、男のひとって……。
「ねえ、ほんとに、裸になって、エプロンだけつけて待ってるの?」
念のため、あたしはきいたのだった。
「ああ」
「あなたがくるまでに、誰かきたらどうするのよ」
「別に、いいだろ。そのままでれば」
「いやよ、そんな」
「振りむかなきゃわかりゃしないよ」
「わかっちゃうわよ」
「じゃあ、ノーパン喫茶ごっこやってるんでーす、とでもいえば」
「もう、ひとのことだと思って。ねえ、パンティだけ、はいてていいでしょ?」
「ばか、駄目だよ。それじゃあ、エプロンの意味がまったくないだろう」
「………」
「おまえの、ぴちぴちした白いお尻が、エプロンからのぞいているのが、いいんじゃないか」
「はあい」
エプロンだけで、彼を待つようになって、これで、三回目だけど、さいわい、彼以外のひとがノックしたことはない。
でも、不安よねえ。
あかりがついているから、居留守も使えないし……。使っちゃうけど。
今夜のメニューは、彼の大好きなビーフシチュウだ。
いつの間にか、あたしの得意料理にもなっちゃった。
かわいい? お尻を弾ませながら、あたしは、食卓に食器を並べだした。
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