官能小説販売サイト 牧場由美 『令嬢 男狩り(下)』
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牧場由美    令嬢 男狩り(下)

目 次
のぞき部屋の女
オナニータイム
人気上昇
スキャンダル
葛藤
最後の勝負

(C)Yumi Makiba

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   のぞき部屋の女

     1

 父と細川隆介の秘密を見た翌日、美紗江は星愛電気株式会社に退社願を提出した。
 人事部長の金田は、美紗江の提出した退社願を、最初は冗談だと思ったらしいが、彼女が本気だと知ると、いすの上で飛び上がって、泡を吹かんばかりの表情で専務のところへ飛んでいった。
「一体、どうしたんだ、星愛くん……」
 専務や常務が入れ代わり立ち代わり、部屋にきて説得をはじめた。
 常務が、美紗江の父親に連絡を取ろうとしたが、社長は朝から行方知れずだった。
「ともかくこの封筒はぼくが預かっておく。急にやめると言われたって、それでは会社が困る。君の後任者に対する引き継ぎもあるし、半月くらいは会社にきてもらわないと……」
 金田人事部長が言った。
「わかりました。半月は会社にまいります。その間に、引き継ぎをして、きれいにやめさせていただきます」
「星愛くん、お父さんは、いや、社長はこのことを知っておられるのかね?」
「昨晩から、会っておりませんので……」
「社長は自宅にいましたか?」
「昨晩は帰りませんでした。おそらく、細川さんも休んでいると思いますが……」
「設計部の細川くんかね?」
「たぶん、彼は父と一緒だと思います」
 美紗江がそこまで言うと、隆介と美紗江の父の関係を、人事部長はうすうす知っていたのだろう。専務と顔を見合わせて、黙ってしまった。
「そういう事情だったのか。しかし、会社はやめなくたって……」
 なおも引き留めようとする人事部長の声には、力がなかった。
 美紗江は、その日、会社を五時半に出た。アメ横をしばらくぶらついた後、御徒町から山手線に乗った。
 神田で中央線に乗り換えて、彼女はそのまま新宿に出た。
 行く場所は決まっていた。
 歌舞伎町の雑居ビルに、真っすぐ、彼女は入っていった。
 エレベーターに乗ると、五階のボタンを押した。
「いらっしゃいませ」
 エレベーターの扉が開くと白と黒のストライプのワイシャツを着た男がていねいに頭を下げた。
「客じゃないのよ。あたし、ここで働きたいと思って……」
「少々、お待ち下さい」
 美紗江は、赤いじゅうたんが敷かれた待合室に通された。その店は、のぞき部屋だった。
 のぞき部屋というのがどういう店なのか、美紗江はその時には、まだよくわからなかった。しかし、その店が、自分の望んでいる満足感を与えてくれそうな気がしていた。
 マネジャーの名刺を持った、男が出てきた。名刺には、田沢紀和と書かれてあった。
「お待たせいたしました」
 丸い眼鏡をかけて鼻ひげを生やした中年男はいんぎんに礼をした。
「あたし……」
「お嬢さま、うちの店で働きたいのだそうですね。タレントさん希望ですか?」
 田沢と名乗った男は、美紗江の頭の先からつま先までを、品定めするようなねばっこい目で見た。
「はい、でも……」
 腰を浮かせかかった美紗江の体を、田沢は押さえた。
「今まで、こういう店で働いたことがございますか? あるいは水商売の店で、仕事をしたことはありますでしょうか?」
 田沢は、美紗江の向かいの側のソファに座った。美紗江は男の視線を気にしながら、スカートのすそを引っ張り、深く脚を組んだ。
「ありません」
「でも、やってみたい? こういう商売は、とてもきついですよ」
 田沢は、メタルフレームの眼鏡に指先をあてがった。
 ロビーの片側には、七つほどの木の扉が並んでいた。低いムードミュージックが流れている。おそらく、緑色の扉の向こうには、狭い個室があるのだろう。マジックミラーを通して男たちが、ショーを見ながらオナニーをしているのかもしれない。
 白衣の女が、腰に小さなかごをぶら提げて部屋から出て、隣の部屋に入っていくのが見えた。
「あたし、やりたいんです。高校生のころから女性週刊誌なんかで、こういう店のことを知っていました」
「昼間、会社にお勤めですか?」
「はい、でも、もうすぐ退社いたします」
「すると、ショーに出ていただくとしても、当分は、夜だけということになりますね?」
「そんなに長い時間やりたくないんです。せめて、自分の欲求を満足させられるだけの時間だけでも……」
 美紗江は脚を組み直した。
 短めのスカートの奥で、ピンクのショーツがちらっと見えたのだろう。田沢の鼻ひげが震えた。
 
 
 
 
〜〜『令嬢 男狩り(下)』(牧場由美)〜〜
 
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