南里征典 特命欲望課長
目 次
第一章 帰国便の男
第二章 社長未亡人の秘事
第三章 女体巡礼の着手
第四章 社長令嬢、よがる
第五章 雌雄の光景
第六章 夜の探索者
第七章 痴色の官能女優
第八章 情事が呼ぶ謀略
第九章 熱くたぎって、決着
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第一章 帰国便の男
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ニューヨーク発東京行JAL361便は、夕刻五時に、夕暮れの空が赤く染まりはじめたケネディ空港を離陸し、今、順調に日本へと飛行していた。
高度一万七千メートルに達して、水平飛行に移ってもう数時間が経つので、乗客への飲みものや機内食のサービスも終わり、飛行機は照明を暗くして、すでに夜間飛行の態勢にはいっている。
その便の、ファーストラウンジの乗客は、少なかった。ほとんど、まばらにしかいない上、乗客はもうあらかた眠りについているので、時折、女性の啜り泣くような、呻くような声がきれぎれに、深いシートの陰から洩れていることに、誰も気づきはしなかった。
「……ああ、久高さん、いけません。そんなこと、なさっては」
スチュワーデスの眼も届かない死角のシートで、ラベンダー色のスーツを着た若くて美しい日本人女性が、眉間に苦悶の表情を浮かべて、白い首をなやましくのけぞらせている。
それもそのはず、その女性のスカートは、腰まで大きくたくしあげられ、双の太腿が大胆に開かれていて、男が一人、その白い、どきっとするほど露わにむき出しにされた太腿の間に入って、顔を股間に埋めているからであった。
夜間飛行とはいえ、場所柄も恐れず、そのような優雅でふしだらな振舞いに耽っている男は、日本を代表する一流企業のひとつである中堅ゼネコン・飛鳥建設の社長御曹司、有馬久高である。
有馬は、飛鳥建設がバブル崩壊後、社運を賭けて切り拓きつつある新しい戦略開発部門、ホテル建設・経営領域の責任者として総指揮をとるため、日本の名門大学を卒業して本社勤務したあと、三年間、世界一のホテル大学といわれる米国コネチカット州のコーネル大学に留学していたが、父急死の知らせを受けて、あと一年間の留学生活を切りあげて今、日本に帰国する途上にある。
女は、伏見優子といった。飛鳥建設の社長室の筆頭秘書であり、女ながら、有馬久高のお傍役兼後見人といわれて、アメリカまで久高を迎えに行った二十九歳のスレンダーな美人である。
有馬にとって、日本の女の匂いは、きわめて懐かしい。米国留学の身であったとはいえ、彼はもう二十八歳である。女なしにはいられない。伏見優子とは、彼がアメリカに留学する前から、肉体関係があったので、いまや何のためらいもなく、帰国便のファーストラウンジで二人はけものの道に堕ちようとしている。
「ああ、だめよう、だめよう、久高さん……ああ、何てことなさるの」
伏見優子は、心持ち、抗うように白い双の手を男の肩や頭に押しあてようとしているが、それはもうほとんど、押し戻す力がはいっているわけではなく、ただなやましく、虚空を掻きむしっているにすぎない。
有馬久高の目の前に今、はじき割れた柘榴の実のような美人秘書の女陰が、外側にはみだした二枚の内陰唇をのぞかせながら、わずかな収縮の息づきをみせて、ひらいていた。
内股は白い。ミルクを塗ったように白いその内股の中心部に、もっさりと繁った密毛は、ハイレグをはくとはみ出さないよう、両側を僅かにトリミングされて固詰まりに中心部にむかって縮れをみせて、やや盛りあがりながら秘丘に繁茂していて、エアコンの風に微かにそよいでいるようだ。
有馬の手によって、その毛むらが掻きあげられると、ぬっちゃりと赤黒い大ぶりの秘唇がよじれて口をあけ、有馬の顔のすぐ傍で、ねたつくような光を放って、微かに震える。
前のシートの深い背凭れの下に入りこんでいる有馬は、身をかがめたまま膝をすすめ、美人秘書の肉びらに、物狂おしい口唇愛を見舞いはじめている。
吐蜜する女の中心部は、かすかに麝香を思わせるような、刺激的な香気に包まれている。密生した恥毛の毛根から発するアポクリン腺液の匂いは香ばしいが、肉びらのあわいからは、それとは違った牝の興奮の、微かな臭気が放たれている。
けれども有馬は、もうそれをものともせずに、顔面を美人秘書の女陰すれすれに近づけ、口から長く舌をのばして、むさぼり喰らう。
「いやああっ……感じますっ……およしになって」
両の手で男の頭をはさんだ伏見優子の声は、しかし、
「……はあ」
やがて、深い吐息に変わったりする。
二十九歳の、社長御曹司お目付役の伏見優子は、わずかに腰を引いたりするが、すぐにまたゆったりとしたシートに据えた尻を、座席の下の有馬久高のほうにむかって、大股に広げながら、なやましくせりだしてしまう。
有馬は、久しぶりに嗅ぐ日本女性の秘所の匂いを、懐かしそうに鼻孔に確かめ、くるったように浴びながら、舌の先をこまかく肉びらのあわいに、動かすことに専念した。
秘裂のはざまが、舌のそよぎに誘いだされてなまあたたかいうるおいを湧出させ、心暗い下べりの膣口を、ぬらぬらと濡らして、しずくをしたたらせる。
有馬久高は、伏見優子の秘密のたたずまいの、貝の身のような二枚のまくれ返りを、肉紐のように舌でのばして口に吸いこんで貪り、傍ら下べりの小暗い膣口に、その貴族的な細くて白い指を差し入れて、抽送したりした。
「ああ……お許し下さい……そこ、弱いっ」
いまや才色兼備の企業エリートになりつつある未婚の美貌秘書は、白い股間をますます八の字にひらきながら、震えるような声で、そう訴えた。
けれども、片脚の足首に丸まってたくされたパンティの淫らさのまま、彼女の双の腿は、シートの下で身を丸めた有馬の舌の戯れにつれて、いまや扇をひらくように精一杯、ひらかれ、時折、腰をぴくん、ぴくんと震わせて突きだし、もはや次の決定打を待つことでしか、その場の情況は収まりがつかないという様相を見せはじめている。
「伏見君、ぼくはもうたまらない。許してくれ」
有馬久高は身を起こすと、ズボンのファスナーをちりっと引きおろし、赤黒く怒脹した男性自身を掴みだし、それを美人秘書の顔の前に晒した。
願わくば、優子に口受けさせたいという気配のようであったが、
「ああ……それを……わたしに見せないで下さいっ」
気絶するような声を、伏見優子があげて、両手で顔を覆った時、有馬は不逞の輩のようなイラマチオの強要は諦め、それよりも次の瞬間、シートに対してある不思議な操作を加えた。
飛行機はシートベルト着用などにうるさいため、座席は厳重に固定されているようだが、実はそうではない。隣が空いてさえいれば、仕切りを取り払って寝ることができる。列車のグリーン席よりも実に便利に広い空間が確保できるのである。
有馬の席は、三人シートなので、双つの仕切りをはねあげて畳んでしまえば、たちまち広い二人の褥ができる。
有馬は、手早くそうした。
彼は、優子との愛の完成を急いでいた。
両肩を抱かれて静かに、その夜間飛行の褥に横たえられたとき、伏見優子は信じられない、という愕きの表情を浮かべた。けれども、ハイヒールをはいた片脚を床につけ、もう一方のハイヒールの脚を背凭れのほうに押しつけて、しどけなく身体を開き、白い下腹部にもっさりと闇のたむろするような、毛むらを晒したその姿態の、何と危うい誘惑と刺激とに充ちていることであろうか。
有馬は覆い被さり、荒くて熱い呼吸を吐きながら、あせったように自らのいきり立ちを掴んで、濡れうるむ女芯に埋ずめた。
「うっ……」
と、呻き声があがり、つづいて、
「ああ……きついっ」
感きわまったような声を噴いて、優子の両手がひしと男の頭を掴みとる。
日本でのバブル経済の崩壊以来、企業はどこもリストラをやっていて、万事経費節減の傾向にある。そういう風潮が敏感に反映するのが、このような国際線のファーストラウンジである。いつもなら、企業の上層部や幹部商社マンたちで、結構、埋まるファーストクラスのシートは、しかし、この便はほとんどがらがらで、高い背凭れの陰に隠れてしまえば、一組の男と女がどのような振舞いに堕ちても、誰も注意する者はいないし、気づく者もいないのである。
有馬と優子は、もはや、完全一体の愛の切り結びをおこなっていた。
有馬久高は、体動を重ねた。
優子はもはや、幸福の絶頂で膣をわななかせ、男を深く受け入れ、髪を左右に打ち振ってむせぶように喘ぎと啜り泣きの声をあげている。
とはいえ、放恣な歓びの表現にも、限度というものがある。
有馬が、その長い禁欲生活の反動のすべてを叩きつけるように、脈動する猛々しい聳え立ちを優子の熱い火口に深々と埋ずめ込んだあと、ますます激しく体動を加えはじめた時、彼は、鳥が叫ぶような甲高い声を噴きあげそうになった美しい秘書の口を、あわてて必死で、蓋をするように片手でふさがなければならなかった。
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