官能小説販売サイト 牧場由美 『倒錯変態・紫のSEX〜セックスドキュメント〜』
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牧場由美    倒錯変態・紫のSEX〜セックスドキュメント〜

目 次
第一章 シーメール ―悲しき両性具有―
第二章 性の趣味は暴走する
第三章 男と女の役割が大混乱!
第四章 現実のゲイ事情を明かす
第五章 女も欲望を押さえられない
解 説 ティッシュ堀内(性風俗評論家)

(C)Yumi Makiba

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   第一章 シーメール ―悲しき両性具有―

     シーメールの性 その1

     1

 シーメールというのは男女の両性を具有した性のことだ。
『シー』は彼女、『メール』は性、つまり『彼女の性』というわけだ。なんだかわからない言い方だが、アメリカポルノに『シーメールもの』というジャンルがある。こういう人たちを別名『フィメール』とか『クイーン』とも言うが、これはトランスセクシュアルな状態のこと……。
 ホルモンで乳房を膨らませた元男がシーメールである。
 こういう人種を日本ではニューハーフとかミスターレディなどという。昔はこういう人種をシスターボーイなどというが、これは女っぽい男という意味で、シスターボーイの元祖は日本では三輪明宏(丸山明宏)である。
 フランスのモンマルトルに『ル・カルーセル』というレストランバーがあって、そこのダンサーたちは全員が男でありながら乳房を膨らませている。この『ル・カルーセル』のダンサーたちが来日して赤坂にある『コルドンブルー』でショーを開いた。これを見た文化人の一人が彼女たちのあまりの美しさに「ブルー!」という絶賛の声をあげたことから、性転換してホルモン注射などで女の体を作ったダンサーたちを『ブルーボーイ』と呼ぶようになった。
 日本のブルーたちの中で一番有名になったのがカルーセル麻紀である。
 ニューハーフの元祖は角川映画の『蔵の中』に主演して話題を呼んだ松原留美子である。シーメールという言い方はしばらく定着しなかったが、日本でもフェチズムブームの影響下でニューハーフものとかシーメールものと言われるポルノの出版が始まって、ある程度の部数を出している。
 その中では三和出版が出している『ニューハーフ倶楽部』が一番売れている。

     2

 一方では、おかまバーとかニューハーフパブが女性たちに人気を呼んで、男よりも女性たちに人気がある。
『黒鳥の湖』とか『金魚』とかは『はとバスコース』にも組み入れられているが、客はほとんどが女性だ。
 こういうブームが沸騰するようになったのは、性の転換が医学的に可能になったからだが、日本では最近まで性転換手術が認められていなかった。性転換手術を阻止していたのは優生保護法で、つまり健康な男子、または女子を子供ができない状態に改造してしまう性転換手術が違法なものであると判断されていたのである。
 ただし、すでに完璧に近い肉体に改造しかかったニューハーフなどの男性器を削除するのは違法ではないという解釈が裁判所によって示された。完璧な男性のペニスを削除手術するのはいけないが、乳房も生活も完璧に女性としか思えないもののペニスや睾丸を抜き取るのはいいということになったのである。
 ただしその当時はまだ、脳に男性脳と女性脳のあることが解明されていなかった。
 モロッコに性転換手術の腕のいい医師がいて、その医師が死ぬまでモロッコに悩みの相談にいく男性たちが絶えなかった。
 アメリカのジョン・ホプキンス病院では早くからジェンダー(社会的な性)とセックス(生物学的な性)の不一致の問題の解明に努力を続けていたが、ついにある種の人たちには性転換が必要という決断をするにいたり、事故によってペニスと睾丸を失った男子児童に性転換手術をしてホルモンによって女性に改造する治療を開始した。
 だが、ジョン・ホプキンス病院の自信ありげな主張にもかかわらず、この治療は失敗した。
 この児童は外見が女であるにもかかわらず、思春期になると女性を愛し、女性に対して性衝動を示すようになったのである。その後、人間の脳の中に性衝動の鍵があることが発見された。男性の場合は、視床下部にINAHという神経細胞の集合体があり、これが女性に対する性衝動の源であることが発見された。試みにラットの脳を切り開いて視床下部に電動メスを入れて神経細胞を破壊すると、雄ラットが雄に対してロードシスという雌特有の性衝動を示すようになった。
 これが発見された瞬間に『同性愛行為は後天的な成長過程に起こるコンプレックスによる』というジークムント・フロイトのコンプレックス学説は否定された。
 フロイトは男脳と女脳があることを否定してコンプレックス学説を組み立てたが、それは仮説であるに過ぎなかった。
 人間の脳というのはすべて母体の中で発生し、成長する。子宮の中というのは女性ホルモンが濃密に漂う海である。その中で成長していくから、脳というのは男性の脳であろうが女性の脳であろうが、女性ホルモンの強い影響を受けるのである。このことからわかるのは生物の基本や脳の基本はすべて雌形だということだ。
 雌が一時的に変形して雄という形をとっているに過ぎないのである。

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 ことに脳の雄化は大変に遅い時期に起こる。母体の中に発生した胎児はまず睾丸か子宮を発生させるが、男子の場合、睾丸から男性ホルモンが微量に分泌される。この男性ホルモンが脳のレセプターに作用してINAHを作る。
 大容量の脳全体に対して、顕微鏡でやって見えるか見えないかの小さな細胞集合体が女性への性衝動を担当しているわけである。
 人間などではINAHは誕生直前のある時期に一瞬にしてできあがるが、ラットなどでは誕生後にも脳が男性脳になるか女性脳になるか定まっていない。雄の脳も雌の脳も、雌形の脳として誕生してくるのである。誕生後2、3日のうちに雄の睾丸から分泌される男性ホルモンが作用してINAHが発生して雄脳ができあがる。
 だから誕生間もない雄のラットの睾丸を削除すると、雄の脳は雌化することができなくなる。
 こういう手術をされた雄はすべて雌脳になって雄に対して性的衝動を示すようになる。
 こうして性に対する過去の医学は間違っていることがわかってきた。性医学は新たな局面を向かえたのである。
 脳の性別を決定するのはホルモンだが、一度、脳が雄化してしまえばいくら女性ホルモンを注入しても脳の性別を変えることはできない。
 ジョン・ホプキンス病院が行った年少児童に対する性転換手術が失敗したのはこういうわけであった。
 いかに事故によって男性器を失おうと、この少年の脳は年頃になれば女性に性衝動を示すようにプログラミングされており、注入された女性ホルモンと性転換手術も、彼の心に苦悩をもたらすだけの作用しかなかったのである。
 
 
 
 
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