子母澤 類 美母・濡れ襞の調教
目 次
第一話 美母・濡れ襞の調教
第二話 女教師・蜜の玩弄
第三話 女子高生・赤い誘い
第四話 産婦人科医・聖女淫歴
(C)Rui Shimozawa
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第一話 美母・濡れ襞の調教
1
寝苦しさに妙子は目を覚ました。いつの間にか眠ってしまったらしい。ぼんやりした妙子の視界を、ちぢこまったペニスが横切っていく。
「あら……」
赤ちゃんの肌のようなやさしいピンク色のペニスが、廊下の電気に照らされながらぶらぶらと移動していくのだ。
黒く細いおがくずみたいな繊毛の中に、ペニスはふんわりと置かれている。まるで今から箱詰めされて白いリボンで包まれていくプレゼントのようだ。
その下に、しわを刻んだ袋がゆらゆらと揺れていた。水滴のせいだろうか、光の加減できらめいてとても綺麗だ。
妙子はうっとりとそれを眺めた。
なつかしくて可愛いかたち。まだ夢の続きかもしれない。そう、夢なんだわ。
妙子は微笑んだ。夢のはずよ。ほら、まだ小さくなってうずくまっている。
「あなた?」
そっと声をかけてみた。怪訝な顔で振り向いたその顔は、夫の貴之ではなかった。息子の貴志が風呂上がりにフリチンで歩いていく後姿だった。
「風呂、空いたよ」
肩に羽織ったバスタオルの端で顔を拭きながら、階段を上がっていくのだ。
夫のものだなんて何を勘違いしたものだろう。意識がはっきりするにつれて、妙子は自分にあきれてしまった。
心のどこかであれに焦がれていたからかしら? そう思ったとたんに赤くなった。
空閨が長いせいかもしれない。真夏の夜の夢は欲望があからさまに出て、恥ずかしくなる。
「あの子ったら、いつまでたっても、ちっともかまわないんだから……」
妙子は言い訳のようにつぶやいた。
おかしなところが似たものだ。夫も、風呂上がりはいつもあんなふうにぶらぶらさせて「どうだ、立派だろう」などと腰を突き出し、威張っていたものだ。
そういえば、あれほどいとおしんだペニスというものを、久しぶりに見たのだった。
そして興奮してしまったらしい。
肌が汗ばんで、薄い夏物のワンピースがぴっちりと張りついている。
起きあがって窓を開けた。胸をはだけて風を入れようとしたが、空気はなま暖かくよどんでいて、そよぎもしなかった。
こんな夜は、やるせなかった。
夫の貴之が逝って六年が経っていた。
蒸し暑い夜は、なぜだか決まって体の奥でむずむずした疼きを感じてしまう。疼きに耐えかねては、寝ている夫のペニスを勝手に取り出し、むしゃぶりついたものだった。
「ねえ、したい」
まだ柔らかいそれは、汗が混じってしょっぱい味がした。指で根元を撫でると、夫はいつも眠そうにたしなめた。
「おい、たのむよ。明日にしてくれ。眠い」
「だめ。我慢できない。ほら、あなたのここ、もうすっかり起き上がってる」
唇ではさんで音をたてて吸い上げると、貴之はううっとうめく。
ほうら、きた! と妙子は内心舌を出す。いつものことだ。この可愛い妙子の専用おもちゃがどういうふうにすれば動いてくれるか、妙子はよく知っていた。
結局いつも夫はおねだりを受け入れてくれた。
身体を重ねれば、見る間に汗がつたわりあう。汗にまみれると、妙子は沼に住む水中動物になったみたいな気分になった。ぬめぬめした皮膚の感触は妙にいやらしくて、気持ちよくて、妙子のやりたい気持ちをますますそそったものだ。
「ああ、どうかしてる……」
妙子は久しぶりに思い出した熱い感触に苦笑した。
今夜に限ってなまなましい思いにとらわれるのはなぜだろう。
「貴志のせいよ」
うちわで胸に風を送りながら、妙子は言い訳のようにつぶやいた。ふつふつと汗の玉が盛り上がって、乳房の谷間につつっと流れる。
妙子には心配ごとがひとつあった。
一人息子の貴志のことだった。
真面目だった貴之の血を受け継いだ貴志は、よく勉強をする子だった。遊ぶことには目もくれず、憑かれたように勉強だけに熱中した。夜中まで机にへばりついているのも、妙子の目にはほとんど楽しんでさえ見えた。おかげで一流大学へ難なく入り、一流企業へもすんなり就職することができた。
企業の研究室に入った彼は、今でも帰宅してから遅くまで机に向かっていることが多い。二年後にはドイツの研究所へ派遣されることも内定していた。いわば、挫折を知らないエリート街道を走ってきているわけである。妙子にとって、なおさら可愛くてならない自慢の息子だった。
その貴志が、もうすぐ結婚する。そのことであった。
見合いは三度目だった。もちろんお膳立ては浮き世の義理である。
面倒がるのをむりやり連れていった前の二度とも、貴志はいやだと一言、にべもなかった。だから今度もそんなものだろうとたかをくくっていた。
ところが美紀というその娘を一目見るなり、貴志はぼうっとなった。
彼女は理知的なまなざしと、ふっくらとした官能的な唇を持っていた。切れ長の目がすっと動いて貴志を見つめると、貴志はポッと顔を赤らめた。
それを見てはっとした。息子が女性に興味を持ったのを見るのは、はじめてのことだったのだ。
なにしろ母親の前でも平気で裸で歩くような男である。パンツを脱ぎ脱ぎ居間の廊下を通り風呂に向かうのを見ると、母親の妙子でさえつい恥ずかしくて目をそらせる。
興味があっても、成長した息子のものをじっくりと見ることなど、母親としてはばかられた。それに、大人になった貴志を見たくないような気持ちも、本当はあったのだった。
だが貴志はそんな母の願いなどまるで無頓着だった。
妙子はため息を吐くだけだ。貴志の研究への情熱は、若いときの性の激情までも、しおれさせてしまうものなのだろうか。
見合いの日、美紀は紺色のサテンで縁どりされた白いスーツを着ていた。お嬢様風の装いは、彼女にとても似合っていた。花が咲いたように、巻き髪が肩の上で揺れた。
「この子、相当なものだわ」
妙子は美紀を見てそう思った。
彼女は相当、男を知っている。これは女の直感である。
相当、というのは男の数か、それともセックスの回数なのか、そこまではなんとも妙子にはわからない。
だが、発散しているのだ。白い、清楚なスーツで巧みに隠してはいるけれども、彼女の醸しだすエロティックな雰囲気は隠しようがなかった。そのアンバランスさは計算されたものだろうか、などと疑ってしまうほど、ミスマッチしていた。
そんな風に気をつけて見れば、ていねいに塗ったナチュラルピンクの唇はほんのすこし開きぎみで、いかにもやわらかそうな質感があった。つい触れてみたいと思わせるほのかな色気に満ちていた。それが、彼女の魅力にもなっているのだ。
きっと貴志は美紀のそういう女の部分に惹かれたのだろう。
二十五歳にしてやってきた遅いめざめに、とまどっているだけの貴志はなすすべも持たない。ただ口をあんぐりと開けたまま、目をぱちくりさせているだけなのだ。てんでだらしがなかった。
値踏みするような妙子に気づいてか、美紀は伏せた目をゆっくり上げて妙子を見た。目があったとたんにっこりした。微笑んだ顔は明るかった。だが、つい妙子までどきっとしたのである。
いい娘らしい、というのはわかる。彼女が貴志の相手なら、いいかもしれない。
美紀が男を知っていようがいまいが、妙子にとってはどうでもよかった。嫁の処女性などこだわるつもりはさらさらない妙子ではあった。
だが、である。
貴志は童貞なのである。頭痛の種はそれだった。
場数を踏んだ花嫁に初夜をすべてまかせるのは心配だった。世間知らずで、挫折知らずの童貞を最初から花嫁に仕切らせるのは先が思いやられる。
まして貴志は女の扱い方など知らないに違いない。
そう考えると、いても立ってもいられなかった。
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