官能小説販売サイト 秋夕子 『美緒の恋物語』
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秋 夕子    美緒の恋物語

目 次
レッスン1 ニューヨーク
レッスン2 ソルティー・ドッグ
レッスン3 シンガポール・スリリング
レッスン4 マルガリータ
レッスン5 シャンパン・カクテル
レッスン6 ブルー・ハワイ
レッスン7 ホーセス・ネック
レッスン8 テキーラ・サンライズ
レッスン9 スクリュー・ドライバー
レッスン10 キール
レッスン11 マタドール
レッスン12 ノック・アウト
レッスン13 ハンター
レッスン14 アラウンド・ザ・ワールド
レッスン15 ホール・イン・ワン
レッスン16 パパゲーナ
レッスン17 オリンピック
レッスン18 アドニス
レッスン19 オレンジ・ブロッサム
ラストレッスン X・Y・Z

(C)Yuko Aki

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   レッスン1 ニューヨーク

「久しぶりだね美緒ちゃん、覚えている?」
 声の主に振り向いた牧原美緒はハッと息をのんだ。パッチリした美緒の二重の瞳は驚きでさらに大きくなり、うれしさのあまり頬は紅潮している。
「どうして? だってニューヨーク……えっー、何で、やだー、ここニューヨーク?」
 気が動転した美緒は、頭を抱えたり、口元を押さえたりしながら意味不明の言葉を吐き出していた。美緒の態度を見た岩城俊介がクスクスと笑いだした。
「おっちょこちょいだな、ここがニューヨークのはずないだろ。用があって日本に一時帰国したんだ」
 岩城は笑いながら軽く美緒のおでこを小突くと、メイク室に向かって歩き出した。
 ふわりと岩城の香りが匂い立ち、美緒の鼻をくすぐっていく。その香りは一年前岩城にされたキスを思い出させ、甘い予感が美緒を包み始めていた。指先が触れた場所がりだし、美緒はおでこをそっと押さえた。

 仕事が終わり、メイク室には美緒と岩城だけしかいなかった。美緒は岩城のキスを受けながら頭の中で一年前のことを思い出していた。
 岩城との出会いは、美緒が初めてモデルの仕事をしたときだ。モデルになったばかりの美緒はまだ十八歳で、笑うと出来るエクボが幼さを残していた。岩城のような大人の男に接するのは初めてだった。
 真剣な目をして鏡の中のモデルを見つめると、アッという間に筆を動かしメイクを仕上げてしまう。細くて長い指がしなやかに動くと髪形がセットされ、どんなモデルもたちまちに光り輝きだしていく。岩城の腕はまるで魔法を使っているようだった。年齢よりも若く見え、モデルに会わせて話題も変える岩城は、何度か仕事をするうちに美緒のあこがれになっていた。
 一年前のある日、メイク室に岩城と二人だけになった。目を閉じてメイクを受ける美緒の唇に、突然柔らかいものが触れてきた。
「美緒ちゃんの唇可愛くて、見ていたらキスしたくなった」
 目を開けた美緒の前にニッコリ笑った岩城の顔があった。ほんの一瞬の軽いキスだったが、美緒にとっては衝撃的だった。その後、仕事も上の空だった美緒に比べ、岩城は何事もなかったような態度で帰っていってしまった。そして、それからすぐに岩城はメイクの勉強をするために、ニューヨークに旅立ってしまったのだ。
 あれから一年が過ぎ、美緒もあの頃に比べると少しは大人になった。いくつかの恋も経験しバージンも失っている。
 岩城の柔らかい唇はあの時と同じだった。違うのは軽いキスではなく、濃厚なキスを受けていることだ。
 岩城の舌先が美緒の舌先に絡みつき、美緒の体中に甘いしびれが走り抜ける。美緒が飢えた体を満たすように岩城の体にしがみつくと、岩城は優しく美緒を抱きしめた。そしてそのまま美緒の体は床に横たえられた。ヒヤリとした床の感触が背中に当たり気持ちいい。
「アッン」
 岩城の唇が美緒の首筋を這っていくと、白い喉をのけ反らせ美緒の唇から鼻にかかった甘い吐息がもれた。
「綺麗になった、大人になったかな?」
 岩城は美緒の髪をかき上げながら耳元でささやいた。ハスキーな声が耳元で響き、美緒は体を震わせた。岩城の指先が巧みに動き、美緒のTシャツを胸元までたくし上げる。アッという間にブラジャーのフロントホックが外され、豊かな胸がこぼれ落ちた。やせ形の美緒だが、胸だけは大きい。
 岩城は堅くなったサクランボのような乳首を指先で愛撫し始めた。美緒は体の芯がうずきだし身をよじった。その隙をぬって、美緒の足の間に岩城は自分の足を滑り込ませる。美緒は反射的に足を閉じようとしたが、体中が痺れて力が入らなかった。
「んっ」
 美緒は再び唇をふさがれ声にならないうめき声を上げた。岩城がミニスカートの中に手を入れパンティーの上から秘所をなぞり始めたのだ。岩城は美緒の唇を離すと、そっと乳首を口に含み舌先でころがした。
 美緒は堪えきれずに、艶を帯びた声を出し眉をひそめた。閉じられた目元に長いまつが影をさす。床に広がったストレートのロングヘアーが、美緒の動きに合わせて生き物のようにあやしく動いていた。
「……あっ、ダメ、人が…来ます……」
 岩城の手がパンティーの中に滑り込むと、美緒は失いつつある理性を働かせ切ない声を出した。だが岩城は手の動きを止めなかった。口に含んでいた乳首を離すと、今度は美緒の顔中に優しく口づけを始めた。
「大丈夫、みんな帰ってしまったから」
 そして、スカートとパンティーをサッとぎ取った。美緒は下半身をむき出しにされ顔を赤らめた。
「イヤッ」
 手で隠そうとしたが、岩城は両手首をつかむと美緒の頭の上まで持ち上げ片手で押さえ付けた。手の自由を失い足をよじったが岩城の足が邪魔をして、反対に足を広げる形になってしまった。スラリと伸びた長い足が押し広げられていく。
「こんなにビショビショに濡れているよ」
 岩城は指先で花弁を撫で上げると、美緒の目の前に突き出した。指先が美緒の愛液で濡れ光っている。美緒は目をつぶると小さく首を横に振りつぶやいた。
「意地悪……アン、アッアー」
 だがその声はすぐに小さなあえぎ声に代わってしまった。濡れそぼった濃い茂みをかき分けて、岩城の指がつぼみを刺激し始めたのだ。蕾が堅くなると、その下の花弁を押し広げて指を進入させた。
 美緒の口から甘い吐息がもれると、岩城はゆっくりと指を動かし始めた。内壁が刺激され、美緒の中心部から頭の先に電流が流れたような衝撃が走る。愛液があふれ出し、指を動かすたびにクチャクチャと音が響いた。
 十分に濡れていることを確認した岩城は指を抜くと、自分の硬く尖ったものを取りだし花弁に押し当ててきた。そしてゆっくりと挿入させた。
「うっんー」
 岩城のペニスが動き出し美緒は体をのけ反らせた。唇を噛みしめ、押し寄せる快感の波に体を震わせていた。突き上げられる中心部が熱くなり、内壁がペニスを包み込むようにヒクヒクとけいれんしだしている。岩城の動きがいっそう早くなると、美緒はつかまれた両手を振りほどき岩城にしがみついた。頭の中に閃光が走り真っ白になると、包み込んでいたペニスを締め付け美緒は果てた。そして、岩城も同時に果てていた。

 久しぶりに美緒は、マンションの一階にある町子の店に夕食を食べに出かけようと思った。町子に岩城のことを話したかったのだ。
 町子の店は軽食も出すが、本来はお酒を飲ませる店だ。気まぐれな町子はその日によって出すお酒も食べ物も違う。年齢不詳、名前も町子だけしか知らないし、お店以外の町子は謎に包まれていた。ショートカットの似合う彫りの深い美人で、キリリとした目つきは男っぽいが流れるような仕草に色気を感じさせる。口数は少なく、決して自分のことは話さなかった。どういう訳か美緒と気が合い、美緒も姉のように慕っていた。
 岩城と結ばれてから三日が過ぎていた。連絡すると言ったきり、岩城からは何の連絡もない。
「牧原美緒さん?」
 美緒が出かけようと部屋にカギをかけていると、後ろから声をかけられた。振り向くと、にこやかな顔で美緒を見ている。センスのいい服を身に着けた小柄な可愛らしい女だった。女は愛想笑いをやめると、表情を一転させ美緒をにらみ付けながら身分を明かした。
「私、岩城マリ子。俊……、岩城の妻です。岩城からあなたのことを聞きました。岩城が日本に一時帰国したのは、結婚式を挙げるためだったんです」
 岩城の妻だと名乗った女は左手を美緒の前に差し出した。薬指にはまだ新しい指輪がキラキラと輝いている。それを見た美緒は目の前が真っ暗になり、女が早口でまくし立てているのを遠い出来事のように感じていた。

「飲みなさい」
 ぼんやりしている美緒の前に町子がスッとグラスを差し出した。町子はマニキュアの塗られた美しい指でチェリーをつまむとグラスにポトリと落とした。そしてカクテルグラスにオレンジがかった茶褐色の液体を注いだ。
「ニューヨーク。夜景の色を見立てているらしいけどね。一気に飲んで忘れなさい、男なんていくらでもいるものよ」
 美緒は目の前に置かれた美しい色を見つめ、女の言ってたことを思い出していた。
 つき合いは五年になること、ニューヨークで同棲してたこと、女癖を直し正式に結婚すること、美緒とは一回限りの遊びだったこと、そして、妊娠していること……。
 忘れよう。
 美緒は決心したようにグラスを持ち上げると一気に飲み干した。喉がヒリヒリと焼け付くように熱く、ほろ苦さが口の中に残った。
 グラスを置き、大きく息を吐き出すと美緒は町子を見て口元に笑みを浮かべた。幼かった美緒の顔は、少し大人の女の顔に変わっていた。


 
 
 
 
〜〜『美緒の恋物語』(秋夕子)〜〜
 
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