吉野純雄 梨花子〜禁断の少女愛〜
目 次
出逢い
夢の中で
秘 密
私だけの天使
ルージュの味
12歳の誕生日
エクスタシー
愛の妖精
変 身
(C)Sumio Yoshino
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出逢い
私はM市に住んでいる。
都心への通勤にはちょっと不便だが、S丘陵がすぐ北側に迫り、野鳥や樹々の多い雰囲気が好きだった。
旧家の土地持ちが税金対策で建てた新築アパートの二階西端が私の部屋だ。
南に面したベランダの下は広い駐車場になっており、陽当たりは絶好だった。部屋は二部屋あり、キッチンも広かったしバスルームも付いていたので、一人で暮らすには充分すぎるほどだった。
毎日の生活リズムは割と単調だった。
毎朝決まった時間に目覚め、トーストと紅茶の朝食を済ますと、バスと電車を乗り継いで会社へ、ほとんど残業がないので夏なら暗くなる前に部屋に帰り着いていた。
風呂に入ってビールを飲み、夕飯を食べるとテレビを見て寝た。
休日はゴロゴロしていた。
毎日毎日がそんな風に過ぎていった。
何となく心が満たされずに憂鬱だったが、それを払拭する方法を知らなかった。
楽しいことがあろうがなかろうが、そんな事には頓着せずに二十四時間が経過すると新しい一日が始まっていた。
夏の初めのある日曜日、空いていた隣室に誰かが引っ越して来た。
物音は聞こえていたが、面倒なので出ても行かなかったし手伝いもしなかった。
何もかもが煩わしかった。
もう夜になっていた。
チャイムの音で扉を開けると、そこには見知らぬ女性が立っていた。
手拭いの包みを差し出しながら隣りに越して来たと挨拶すると、ちょっと首を傾げて扉越しに部屋の中を覗き込む様な眼付きを見せた。
「失礼ですけど、まだお一人ですの?」
他人に私生活を栓索されるのは好きじゃなかった。
私は不快の念を隠さなかったが、その女性は他人の顔色などは気にならないらしかった。
私は生返事をして扉を閉めようとした。
その女性は少しだけ体を横に捌いた。
すると、背後の薄明かりの中から小さなものが浮かび上がった。
白っぽいサマーセーターを着ていた。
肩のあたりに編み込まれた銀ラメがキラリと光って動いた。
丈の短いスカートを穿いていた。
まっすぐな脚がすらりと伸びていた。
俯いているので、ポニーテールの赤いリボンが見えた。
セーターの胸が少しだけ膨んでいる。
手を後ろに組み、上半身が駄々をこねる様に揺れていた。
そこに立っているのは、とても可愛らしい少女だった。
母親に促されても、恥ずかしがって挨拶の言葉も言えなかった。
その代わり、チラッとこちらを見上げると赤い舌先をちょっとだけ出して愛くるしく首をすくめて見せた。
切れ長の眼に瞳が大きかった。
それはほんの一瞬いたずらっぽく輝くと、すぐに伏せられてしまった。
長い睫毛が、キッチンの仄明かりを受けて頬に影を作っていた。
鮮やかに赤い唇が、濡れて光っていた。
粘膜質の終わるあたりから微妙な線を見せる下くちびるが官能的だった。
ひっつめた髪が側頭部でほつれていた。
少女は母親に腕を押されると、自分達の部屋の方へ向きを変えた。
まだ小さいけれど、胸のふくらみはとても形がよかった。
そのまろやかな双丘からは、ほのぼのとした甘い香りが漂い流れて来る様だった。
まっすぐな脚がひかがみで折れると、きれいなふくらみごとに引き締まったくるぶしを最後に見せて少女の姿はかき消えていた。
まさに運命的な邂逅だった。
今まで永い間、それと知らずに探し求めていたものが、この少女の中にこそあった。
健全な肢体の内にも妖艶な美しさを秘めた少女は、大人になると消えてしまう少女特有のあやうさを持って小悪魔的な雰囲気を発散させていた。
私の心は、すでに囚われていた。
胸のまるみが、艶やかな唇の色が、揺れていた細い肩が、そして短いスカートに包まれた悩ましい腰の線が脳裏に焼き付いていた。
向きを変えた時に風を孕んで広がったスカートと、その下で交叉されたまっすぐな大腿とが、うす闇の中に消えては浮かんだ。
少女の美しさはショッキングなまでに完璧だった。
呆然としている私に向かって母親のくだらないおしゃべりは続いていたが、最前とは情況が違っていた。
とても好ましくは思われないタイプの女性だったか、あの少女の母親として取り入っておく必要があった。
「利口そうなお子さんですね」
「いいえ、とんでもない。ご挨拶も出来ずにお恥ずかしいですわ」
「でもおとなしそうだから、楽しみでしょう」
「それがなかなか……。あれでとても気が強いんですよ」
「今、何年生ですか?」
「ここで六年生になったんですが、あまり勉強が好きでないんで困ってるんです」
母親は少しだけ口をつぐんだ。
「どうせいずれ分かるでしょうからお話ししますが、わたしがクラブに勤めてますんで、夜は一人でかわいそうなんですけれど……」
そう言われて見れば、妙にだらしない態度や口振りなどにも合点がいった。
「もしよかったら、私が勉強を見てあげましょうか? これでも一応、学校は出てますから」
母親は警戒する様な顔付きを見せた。
「いいえ、とても家庭教師をしていただくほどの余裕もございませんので……」
「いや、そうじゃなくて。私も夜はひまですから、勉強を見ると言っても遊び相手のようなつもりでいてもらえば……」
母親はいくらか気乗りがして来ているらしかったが、費用の点で心配している様子がありありと見えていた。
「どうせぶらぶらしているんだから、謝礼などはいただかなくても結構なんですよ」
「それは嬉しいご好意なんですけれど、いくらなんでも無料奉仕では悪いですわ」
母親は言葉だけで言い繕っていた。
「いや、いいんですよ。私も退屈しているんですから」
「それなら、あの子と一緒に夕食を上がっていただけばよろしいわ。わたしは夕方出掛けてしまいますから、こちら様が一緒だと安心ですもの」
「然し、私はあの子にあんまり好かれていない風だったけれど……」
ただで娘の勉強を見てもらえるとなると、母親の方が熱心になっていた。
「そんなことはありませんわ。こちらみたいなハンサムをつかまえて」
安っぽいお世辞だったが、これで話が決まった。
「じゃあ明日からでもいらして下さい。お好きな時間に」
「この時間には、いつもお帰りになっているんですの?」
「ええ、大体はね」
「それじゃあ、あの子によく言って聞かせますわ。本当にこちらみたいに優秀な方にお勉強を見てもらえば、少しは成績も上がるんでしょうからね」
思いもかけずに無料で家庭教師を雇うことが出来た母親は、喜んで帰って行った。
私にしても、願ってもないようなチャンスだった。
壁の向こうから聞こえてくる物音が気になってなかなか眠れなかった私は、少女が喜びそうなプレゼントの品をいつまでも考えていた。
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