官能小説販売サイト 矢切隆之 『姉と弟 禁蜜の薫り』
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矢切隆之    姉と弟 きんみつの薫り

目 次
第一章 少女の紺のブルマー
第二章 人妻のストッキング
第三章 姉弟のシックスナイン
第四章 聖水へのノスタルジア
第五章 赤いハイヒール
第六章 姉弟のハネムーン

(C)Takayuki Yagiri

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 第一章 少女の紺のブルマー

     1

 夢見ケ丘女子高等学校の二年A組。
 教室の武藤理絵子は、ひとりポツンとしていた。
 その日からはじまった、生理のせいである。女の子にとって、月に一度のユーウツな時期である。
 セーラー服のプリーツスカートの下に、いつもとは違う、生理用のパンティをはいていた。それは股間がメッシュになっているもので、ごわごわしている。理絵子はナプキン派だった。
 そこに溢れるものを感じると、理絵子はこの時期が嫌になる。
 いつもは生理でも体育はするのだが、その日は特に量が多いので体育をさぼっていた。教室には、理絵子の他には誰もいない。
 座っていても、しくしくとおなかが痛い。窓から外を見ると、向こうの体育館の方からバレーボールの練習をしている声が聞こえてきた。
 セーラー服の白いカラーが、なんとなく淋しそうに見える。
 理絵子は机の上で、数学の参考書を拡げていた。そこへ、担任の英語教師・岡山要一が入ってきた。
「なんだ、おまえ、体育をさぼったのか」
「はい、あ、あの……」
「仕方のない奴だ。体育のできないやつは、体育館でしっかりと見学をしないといかんのだぞ」
「はい、でも、おなかが痛くて」
「まぁ、いい。いま、お母さんから電話がかかってる」
「え、ママから?」
「そう、職員室だ」
 担任の岡山先生の声を後に、理絵子は教室から外に出た。わざわざ娘の高校まで電話をしてくるなんて、よほどの用事に違いない。
 職員室の電話を取ると、母親の千景の声が聞こえてきた。
「あ、理絵ちゃん、ママよ」
 千景の声がうわずっている。
「なんなの、学校まで電話をしてくるなんて」
「いま、テレビのニュースをつけたら……」
「え、やっぱり、パパが?」
「そうよ、たったいま、逮捕されたの」
 理絵子は頭をどかんと、後ろから殴られた気になった。
 最も恐れていたことが、嵐のようにやってきた。
 大手建設会社・武藤建設の社長をしている父は、政治家が絡んだ談合汚職に巻き込まれていた。ダム工事などを含めたゼネコンの組合に加入している会社が、政治家に賄賂を贈ったとされている事件だ。
 それは連日、テレビニュースなどで、学校中に知られていた。
 父親の武藤兵吉は毎日のように検察庁に呼ばれていたのだが、とうとう、その日に逮捕が決まったようだ。
「で、出てるの、テレビにパパの顔が」
「出てるわ、お昼のニュースは、その話題でもちきりだったわ」
「じゃ、わたし家に帰っていい?」
「何を言ってるの、関係ないでしょ。あんたはしっかり勉強なさい」
 母からの電話はそれで、プツッと切れた。
 送話器をもどしながら、理絵子の頭の中は真っ白になっていく。
 たしかに重大なことだが、こんなふうに、学校で父親逮捕のニュースを知らされたくはなかった。
 教室に戻ると、岡山先生が待っていた。
 岡山は、机に向かってテストの採点をしていたが、理絵子の顔を見るなり言った。
「用事は何だった?」
「ええ……」
 理絵子がぼんやりしていると、岡山の方から言った。
「さっき、昼休みにテレビを観たんだ。おまえの親父がとうとう、逮捕された。そのことか」
「先生、知ってたんですか」
「ふむ」
 岡山が採点の手をやすめ、理絵子を見つめた。
 彼は男にしては、ぽっちゃりした顔をしている。顔つきはどことなく、子豚に似ている。みんなから〈オカ豚〉とか、〈オカ豚ちゃん〉と言われている。
 若い英語教師だが、岡山の人気は芳しくなかった。
 いつか、体育着のブルマーを変えようとしたとき、真っ先に反対したのが、岡山だったと聞いている。
 校長のご機嫌をとる行動が多いし、いつかなんかは、掃除の仕方が悪いと言って、当番全員に雑巾がけをさせたこともあった。
 そのときも理絵子を含め、全員がブルマー姿だった。彼は女子高校生みんなが、よつんばいになって拭き掃除をするのを、後ろで監視していた。その眼が、「スケベーな顔をしていた」というのが女の子の評判になった。
 それから彼は〈スケベー豚〉と呼ばれるようになった。
「武藤、言っておくが、これからニュースが流されると、学校で辛い思いをするかもしれん。だが、あくまでお父さんの問題なんだ。おまえに関係ないんだから、学校を休むようなことはしてはいかんぞ」
「はい……」
「登校拒否はさせんからな」
「はい」
 理絵子は思わず、涙ぐみそうになった。
 こんなふうに優しく言葉をかけてくれる人が、誰か一人は欲しかった。
 彼があまりにも掃除チェックに厳しいので、理絵子たちが彼をからかったことがあった。みんなで相談し、先生の前で思い切りスカートをまくってやった。そのときの、岡山先生の慌てようは忘れられない。
 彼は顔を真っ赤にさせ、教室から退散したのだった。
 プリーツスカートの裾が、椅子からはらりと垂れ下がった。参考書に眼を走らせたが、頭の中が真っ白で何も考えられない。
 理絵子は机に顔をうつ伏した。
 ひとりでに涙が溢れるので、声を殺して泣いた。
「なんだ、武藤、泣いてるのか」
 気がつくと、岡山先生が後ろに立っていた。かなり大柄の体躯で、彼はハンドボール部の顧問をしているせいか手足が大きい。
 彼の逞しい手が、理絵子の肩にさりげなく乗っていた。大きくて、ごつごつした逞しい手だ。
「……く、くく」
 理絵子は何故か泣きたくなったので、泣いた。
「馬鹿、泣くな」
 理絵子が顔を上げると、すぐ間近に岡山先生の顔があった。彼の大きな手が、少女の黒髪を払った。
 あっという間もなく、彼の逞しい手が、後ろから理絵子のセーラー服の胸を掴んだ。ブラジャーの中の乳房が悲鳴をあげる。
「あ、先生」
 理絵子は叫んだ。
 彼の逞しい手が、まるでハンドボールを握るように掴む。ブラジャーの中で、可憐な乳首が痛みを訴えた。
「いや、先生ッ」
「ふふ、ずいぶん大きなおっぱいだな」
 そう囁いた岡山の口が、後ろから少女の口を吸った。
 なんて大胆なのだろうか。
 チュッと音が出ると、彼の舌が理絵子の唇に入り込んだ。
 体育館に全員出ているのをいいことに、彼は教室で女子生徒の乳房を揉みまわしていた。まったく予期しなかったので、理絵子はびっくりした。
「いつか、俺が掃除の注意をすると、おまえたちは、スカートをまくっただろ。え、パンティ丸見えだし、俺、あれからどんなに困ったかしれない。あのときの罰だ」
 キスの後で、またも乳房をグリグリ掴んでから、彼がそう言った。
「……んぐぐ、あ、先生」
 理絵子は顔を左右に振ったので、肩まで垂れた髪が左右に揺れた。
「いいな、今日のことは、誰にも言うな」
 岡山先生はそう言うと、ポケットからメモを出した。それをそっと、理絵子の参考書に挟んだ。
 彼はそのまま無言で、教室から出ていった。
 理絵子は参考書を開いて、メモに書かれた文字を見つめた。
「こんどの日曜日、誰にも知られないようにして、アパートに来い」
 畳まれたメモを拡げると「横浜市夢見区菅田町3‐56‐3 日の出アパート201 岡山要一」と書かれていた。
 その文字を見つめていた理絵子は、すぐにそのメモを鞄の中にこっそりしまった。なんだか、とても悪いことをした後のように、鼓動が高鳴っていた。
 
 
 
 
〜〜『姉と弟 禁蜜の薫り』(矢切隆之)〜〜
 
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