北山悦史 処女教師 喪失淫戯
目 次
プロローグ
第一章 着せ替えレイプ
第二章 近親凌辱
第三章 同性姦淫
第四章 報復の痴悦
エピローグ
(C)Etsushi Kitayama
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プロローグ
ゴールデンウイークを間近にひかえたうららかな日曜の朝――。
今井早希子はあたふたと外出の準備をしていた。この春、一緒に大学を出、自分と同じ教師という念願の職業に就いた白川果菜と、ドライブをする約束になっている。約束の時間が迫っている。初めは鼻歌まじりで用意をしていたのだったが、お化粧に手間取り、あたふたするはめになってしまった。
ドレッサーの前に立ち、ファッションモデルみたいにしなを作って服装の点検をした。といっても、四年来の親友であり、〃恋人でもありつづけた〃果菜と二人だけのドライブ、装いはいたってラフだ。上は、胸元の広く開いたひまわり色のTシャツに、ピンクと白、ツートーンカラーのスカーフ。下はアイボリーホワイトのミニスカート。ストッキングなしで、真っ白のソックス。
ストッキングをはかないのは、運転しながら、果菜がしなやかに動く指を、そっとスカートの中に入れてくるかもしれないからだ。もし、そういうことになったら、すべすべの肌のままのほうがいい。果菜のアパートまでは、早希子は自分の車で行く。が、果菜のアパートに車を置いて、ドライブは果菜の車だ。運転も、果菜がすることになっている。運転歴そのものは似たようなものだが、テクニックというと、ダンチの差がある。ぽっちゃりタイプの早希子と違って、スリムな体型をしている果菜は、運動神経・反射神経とも、はるかに早希子に勝っている。
むちっとしたヒップを後ろに突き出し、早希子は鏡に顔を近づけた。自分では〃平安美人〃みたいであまり好きになれないが、人には結構評判がいいらしい肉厚の丸顔が、初夏の陽光のように輝いている。「晴れて高校教師になった」という自信と満足、将来への希望が、肌の内側から輝き出しているふうに見える。
(ん、ま、こんなもんか)
大きな二重の目をパチパチさせ、ルージュののりのいい唇を、口づけを受けるようにキュッとすぼめ、早希子はひとり納得した。と、ドキドキ、胸が高鳴った。久しぶりに会う果菜は、運転しながら、唇を奪ってくるかもしれない。果菜にこの前会ったのは、新学期が始まる前。だから、ほぼ一月ぶりだ。大学時代は、一卵性双生児みたいに、何をするのにも一緒だった。
胸の高鳴りのせいか、かすかにブラウンを帯びたロングヘアが、さらさらと胸に流れた。髪を染めてはいけないことになっているが――風紀指導をする上で、生徒たちに説得力がないから、ということらしい。ちょっとばかり禁を犯している『緑の黒髪』という言葉そのもののように、早希子の髪は漆黒だ。印象がきついようで嫌いだ。それで、目立たぬ程度に染めている。髪は、後頭部で一束、白のバレッタでとめている。こういう女っぽいのは、果菜の好みだ。果菜は、大学に入ったときから一貫してショートだったし、中学の教師になった今も、ショートを通している。
早希子は体を起こし、首のスカーフを手直しした。喉の前にあるゆるい結び目を、右にずらした。胸元の肌があらわになった。ピンクとひまわり色に挟まれた、雪のように白い肌だ。鎖骨のすぐ下から、肉が分厚くなっている。大学を出てから二ヵ月たらずで九十センチから九十一センチへボリュームを増した乳房が、薄地のTシャツを山のように盛り上げている。正面向きでも、ブラジャーのカップと、その上にあふれ出ている柔肉の有様が見て取れる。
「早希子、あんたまたおっぱい、おっきくなったわね。いいヒト、出来たんじゃない?」
目を丸くして見つめ、果菜は嫉妬半分に言うかもしれない。
もしそういう話になったら、素直に認める心は出来ている。そういう話にならなくても、今日はそのことを告白することになる可能性、八十パーセント以上だ。それは、大学卒業を目前にしたときからの、二人の約束でもある。早希子は早希子の〃事情〃、果菜は果菜の好みで、この三年間、〃女同士〃の関係をつづけてきた。だが、二人とももう社会人、それもともに教師という職業に就いた。そろそろ普通の人間のコースを歩みはじめてもいいのではないか。卒業を前にして、二人で話し合った。どちらかに親しい男性が出来たら告白すること、というのが、そのときの約束だった。
「高野輝人、っていうの。同じ高校の物理の先生」
鏡に向かい、早希子は果菜に告白するつもりで言った。親しく口をきくようになった、一つ先輩の教師だ。知り合って間がないということもあるが、まだ手も握っていない男だ。純粋培養のようにスマートで頭がいい。ちょっとスマートすぎる感じが、しないでもない。少なくても女と女の関係をつづけてきた早希子にとっては、清潔すぎるようにも思う。が、反面、人を疑う気持ちが少なそうで、都合がいいといえば、いい。
「あーら、いいじゃない? っていうかァ、実はあたしもいいヒト、出来ちゃったの」
あっけらかんと笑って果菜がそう言うことを、早希子は期待した。二人同時にそんなことになれば、あとくされなく関係に終止符を打つことができるし、お互いに祝福することにもなろう。教師としての門出の、最高のはなむけではないか。
(まっ、いけないわっ、急がなくっちゃ!)
腕時計に目をやり、早希子はドレッサーの前から駆けだした。八時四十分。約束の時間は九時。もう間に合わない。唇をとがらせ、ほっぺたをふくらませている果菜の顔が目に浮かぶ。「ほんとにもう、早希子ったら相変わらずのろまなんだからねっ」同じ年なのに年下に言うみたいな果菜の声が耳に突き刺さる。
早希子のアパートは、浦和市の武蔵野線東浦和駅のほど近くにある。果菜のアパートは岩槻市にある。二人の通っていた大学は大宮市にあり、この三月まで果菜も浦和市にアパートを借りていたのだが、勤めることになったのが岩槻の公立中学なので、引っ越したのだ。車で通勤できない距離じゃないのに果菜が引っ越したのは、それが二人の関係解消にプラスすれば、と考えてのことなのだ。果菜ははっきりと早希子に言ったわけではないが、早希子にはわかった。何でもリードしたいタイプの果菜は、やっぱり自分より大人なのね、と早希子は思ったものだ。
早希子のアパートから東北道浦和インターまで十分少し、岩槻インターまで、早希子の運転でも五分弱、そこから果菜のアパートまで、飛ばして十五分。十分以上は、確実に遅れる。これが果菜なら、半分の時間でも余るかもしれない。一般道は七〜八十キロ、高速道路は百六十キロも出す。
(だけど、事故ったりしたらなんにもなんないしね。ドライブどころじゃなくなるもん)
果菜が怒ってたら、手をギューッと握ってあげたり、隙を見てチュッてキスしてあげれば、機嫌、すぐ直してくれるわね、ウフフ、と含み笑いをして、早希子は玄関を飛び出した。赤のミラージュのドアを開け、ジュースとかちょっとしたお弁当とかをリアシートに押し込み、乗った。食べ物も飲み物も、コンビニで買えばいいから、と果菜は言うのだが、どうも不安で、用意せずにはいられない。こういうところが性格なのだ、と思う。
早希子が異常に気づいたのは、アパート前の道路から本通りに出てすぐのことだった。プップップッ! と、後ろの車がクラクションを鳴らした。ルームミラーで見ると、グレーの乗用車だ。運転席と助手席に中年らしい男が乗っている。二人して、こっちに指を差している。笑っているようだ。早希子はスピードメーターを見た。四十五キロ。ノロノロ走るな。男たちがそう言っているのかと思った。怒っているような感じではないが、早希子はとりあえずアクセルを踏み込んだ。ずっと前に白っぽいトラックが走っている。六十キロぐらい出して、トラックとの車間を普通に取ればクラクションを鳴らされないだろうと思った。
が、トラックはもっと速く走っているようで、なかなか車間が縮まらない。が、片側一車線、四十キロ制限の一般道を六十キロで走れば、せかされないですむだろうと、早希子は思った。後ろの車は、三、四メートルあるかどうかという車間で迫っている。プップップッ! プップップーッ! と、相変わらずクラクションを鳴らしている。ミラーで見ると、やはり笑っているようだ。特に助手席の男は、腹をかかえて笑い転げている感じもする。運転席の男が盛んに早希子に向かって指を差している。ピカッピカッ、ピカッピカッピカッと、パッシングした。何か伝えようとしているらしい。トランクが開いているわけでもないが……。
早希子は左にウインカーを出した。左に寄り、ブレーキをかけた。後ろの車が、プップーッ! とクラクションを鳴らしながら、右側を通り過ぎた。助手席の男が、運転席の男がしていたように、早希子に向かって指差し、くいくいと突くしぐさをしていた。やはり何か、うながしているようだった。車を止め、外に出た。後ろに回った。
ガーン! と、脳天を一撃されたようなショックに見舞われた。バンパーの上のリアボディに、『おまんこ』と、黄色いスプレーでいたずら書きをされているのだった。赤のボディに黄色だ。一字が手のひら二つ分ぐらいの大きさ。目の前が、真っ暗になった。どうしよう、どうしよう、と心の中で思っている。思っているだけで、ああしよう、こうしよう、という解決策は、浮かんでこない。
(果菜に電話、しなくちゃ……)
わなわなする思いで電話ボックスを捜した。運の悪いことに、見当たらない。道路の左側を捜しながら行くしかないと思った。車に戻った。ブッブーッ! と、大きなクラクションを鳴らして、普通トラックが右脇を走っていった。発進しようとした早希子に注意をうながしたのではなく、『おまんこ』に向けて鳴らしたふうな、ちょっとふざけた感じのクラクションだった。
(あー、やだ。どうしよー)
早希子は頭の中を大パニックにしながら、発進した。あ、ガムテープ! と思ったが、いかんせん、持っていない。もう九時近い。どこかの雑貨屋さんでも、店を開けてないかしら。ああ、そう! コンビニに行けばあるわ。電話もある。早希子は一気に解決した気分になってアクセルを踏み込んだ。
ブッブッブッブッー! どでかいクラクションが鳴った。ミラーを覗くと、黒っぽいダンプだ。『おまんこ』に大喜びしてでもいそうな鳴らし方だ。「おい、お姉ちゃん、おま×こ、してくれってのかい。え? 一発、はめてやっか?」熊のような男がそう言って笑っているようで頭に血が上った。オトコオトコした男は、大嫌いだ。考えるだけでもいやだ。顔面が充血した。目がうるうるして、視野がぼーっとかすんだ。
ブッブッブッブーッ! とクラクションが大音響となって迫った。ミラーいっぱいに、ワックスか石灰のようなものが塗りたくられた黒い車体が映っている。早希子は左にウインカーを出し、ブレーキをかけた。黒い車体が右にずれた感があった。と同時に、目の前に黒い乗用車があるのが目に入った。道路の左側に止まっている。ダンプは右にいる。ハンドルを右に切ることはできなかった。
(あっ、あっあっ!)
脚を突っ張らせてブレーキを踏み込んだ。タイヤがきしむ音が聞こえた。その直後、どおん、と音がして、体がつんのめった――。
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