官能小説販売サイト 北山悦史 『乱交病棟〜白衣の昇天使たち〜』
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北山悦史    乱交病棟〜白衣の昇天使たち〜

目 次
白液の注射
湿ったカルテ
陶酔まみれ
怒脹の病室
消灯が〃お待ちかね〃
診察は後背位で
院長の回春剤
アクメは間近
淫らな病院
乱交病棟

(C)Etsushi Kitayama

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   白液の注射

     若い勃起

 ノックを二つして、和佳子は病室のドアを開けた。
「中里さん、気分はどう?」
 後ろ手にドアを閉め、和佳子はやさしく声をかけながらベッドに近づいた。
 返事はない。掛け蒲団が山のように盛り上がり、顔まで隠している。眠っているにしても、やはり正常な人間とはちょっと違う、と思う。
 ここT精神神経科医院は、ベッド数八の、ごくこじんまりした医院だ。入院患者も軽いノイローゼ、心身症がほとんどで、重症の患者や暴力をふるう恐れのあるものはみな、大病院に回してしまう。
 だから精神神経科とはいっても、静かな内科医院のようなもので、看護士もいず、院長と四人の看護婦、あとは薬剤師と栄養師、事務員等で運営していた。
 中里努が入院して来たのは、昨日のことだった。十八歳の予備校生だという。
「言動に、多少、常軌をいっしたところがあるらしい」
 先刻、院長の森本がそういった。
 昨日その場に居あわせなかったから、和佳子はくわしい話は知らない。いずれ勉強のしすぎか何かで、頭の歯車が一時的に狂ったのだろう、ぐらいに捉えていた。
 窓には白いレースのカーテンが引かれている。白い壁、白い天井、白い蒲団。病室は、どこからどこまでも白い。ただ一点、おそらく母親が飾っていったものだろう、枕元の深紅のガーベラが、白い室内に鮮やかな色合いを添えている。
「眠ってるのかしら?」
 半ばささやき、半ばつぶやき、和佳子はさらに一歩、枕元に近づいた。
 どんな様子か見て来るように、院長にいわれたのだった。
「うまいぐあいにおとなしく眠っていれば、そっとしといて、起こさんようにな」
 二時間ばかり前に、精神安定剤を飲ませた。それが効いているはずだった。
 確かに眠ってはいるようだ。だが、こんな恰好で、と思う。まるで赤ん坊が両脚をはね上げて丸まっているあんばいだ。それに顔まで蒲団をかぶって、息苦しかろうとも思う。
 せめて顔は出して、と和佳子が蒲団に手を掛けたときだった。いきなり蒲団がめくれ上がり、熱にうかされたような真っ赤な顔が現れたのだ。
「まっ! びっくりするじゃなァい?」
 看護婦らしく驚きを内に隠し、和佳子はひょうきんな口調を装っていった。
「眠っているのかと思ったわ」
「だって、眠たくないもん。真っ昼間から眠るなんて、そりゃ、病気だよ」
「そうね。あんたは病気っちゅうわけじゃないもんね」
「そうか……ナ」
「そうよ。毎日勉強勉強で、ちょっと疲れてるだけよ」
「ンー。そんなに勉強してるとはいえないナ。だけど、疲れてる。頭よか、体の方が」
「要するに、過労ね」
「……」
 急におしだまり、努は和佳子を見上げた。
 色白の男の子だ。いかにも受験生という感じがする。ほそおもてで、まつげが長い。その色白の顔の、頬と目のふちが、ポッと上気している。ちょうど、ガーベラの赤が映っている色合いだ。
「ホラ、蒲団なんかかぶってるから、そんなうだったみたいな顔になって。熱いでしょ」
「熱いよ。体が熱い」
「なら、なにも無理して蒲団かぶることないじゃない」
「このスタイル、好きなんだ」
「そう……。困ったわね」
 いくら軽度とはいえ、入院患者の中には、やはり異常としか思えない者もいる。常人が考えればべつにどうということもない物事に、なみなみならぬ興味を持ったり、恐れたり、執着したりする。
 この患者は、蒲団にくるまり、生まれたばかりの赤ん坊のように両脚をはね上げて寝るのに、固執し、こりかたまっているのだろう。ひょっとしたら、受験競争という現実から逃避し、幼児回帰をしたいという願望を抱いているのかもしれない。
 いずれにせよ、ここに来る患者たちは、程度の差こそあれ、心に傷を負った人間たちだ。そういう患者たちに、微力ながら尽くし、社会復帰の手だすけをするのが和佳子の仕事であり、和佳子はそのことに大きな誇りを持っている。
「じゃ、そのままでもいいから、ちょっと眠りなさいよ」
「だから、眠くもないし、病気でもないもん」
「ああ、そうだったわネ。でも早く退院して、また勉強に打ち込まなくちゃならないんだから、安静にはしてなくちゃだめよ?」
「安静?……そりゃ無理だよ」
「無理? どうして?」
「だって、体が暴れるんだもん」
「体が? 暴れる?」
「そ。勝手に暴れまくるんだ」
「……」
 和佳子は努を見おろした。
 精神に異常を来たした人間特有のセリフだった。彼らは挙動に責任を持たない。というか、体の動きと自分とは別物だと考えている。むろん、彼らにそう思わせる何かがあるのだろう。そのメカニズムは、常人にはわからない。
「一日中、暴れてるんだから。疲れちゃって、しょうないんだ」
「そう。よくない体ね。どんなふうに暴れるのかしら?」
「こんなふうにさ」
 そういうなり努は、掛け蒲団を蹴とばした。
「アッ!」
 と叫んだなり、和佳子は二の句がつげなかった。
 努は、まるはだかだった。スネ毛の目立ちはじめた脚をなおカギ型に曲げ、右手はしっかりと、初々しくも雄々しい肉棒を握りしめている。
「これなんだよォ、看護婦さん。こいつなんだよォ。こいつが一日いっぱい暴れまくって、オレ、もう、くったくたなんだよォ」
「……」
 看護婦として、和佳子は何かいわなければならないはずだった。だが、声が出ない。舌が動かない。
《イヤ……。イヤだ……》
 頭の中ではそう思っている。しかし、目が離れないのだ。喉をゴクゴクいわせ、五本の指に握られた十八歳の肉棒を、プラスチックを想わせるピンクのグランスを、見おろしている。
「オレ、健康すぎるんかもしれないんだ。元気すぎるんかもしれないと思ってるんだ。だって、いくらやったって、いくら出したって、これでもう終わりってこと、ないんだもんよう」
 そういいながら努は、爪先を下ろしてブリッジをつくり、和佳子の目の前で、いかにも気持ちよさそうにしごきはじめた。
 
 
 
 
〜〜『乱交病棟〜白衣の昇天使たち〜』(北山悦史)〜〜
 
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