官能小説販売サイト 横溝美晶 『現金を抱いた女』
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横溝美晶    ゲンナマを抱いた女

目 次
第1章 ビキニの誘惑
第2章 人妻落とし
第3章 消えた愛人
第4章 元社長を追え
第5章 黒幕の仕掛け
第6章 美女と現金
第7章 淫導師の報酬

(C)Yoshiaki Yokomizo

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   第1章 ビキニの誘惑

     1

 翌日、ゴルフと承知していても、泊まれば宴会になる。
 どうせ前夜の酒で、早起きは無理だと予想していたのだろう。
 社長の崎村は、ちゃんと十時半スタートという遅い組を予約していた。
 どれだけ仕事ができるのかは未知数だが、たしかに遊びに関してだけは、よく気のまわる男だった。
 昨夜、もっとも遅くまでカラオケを熱唱し、今朝、もっとも早く起きだしてきたのも、崎村だった。
 実権を持たない社長という、自分の立場をよく認識しているのか、崎村は、朝からひとりで動きまわっていた。
 八時には二日酔いぎみのほかのメンバーを起こして、ホテルの大浴場で汗を流させ、その後、ダイニング・ルームまで引っ張っていって、きちんと朝粥定食を食べさせるという、旅行会社の添乗員さながらのかいがいしさだった。
「じゃあ、われわれもそろそろ出ましょうか」
 崎村が、腕時計をのぞきこんだ。
 その声で、ようやく顔色もよくなって、コーヒーに口をつけていたほかのメンバーが、ソファから腰をあげた。
 会長の桜沢たつのほかには、取り引き相手の社長の荒井と専務の植田のふたりが、コースをまわることになっている。
 ソファには、ゴルフに行かないふたりが残された。
 自身も専務をしているが、このたびは会長をしている父親につきそってきただけの桜沢はると、社長秘書の人見理緒だった。
 クラブ・ハウスのコーヒー・ラウンジは、すでに閑散としている。
「総代、寝不足なんですから、あまり無理しないでくださいよ」
 桜沢遥海は、コースへむかおうとする父親に声をかけた。
 父親の龍海は酒好きで、血圧が高い。
 会長ではなく総代と呼びかけてしまうのは、会社のほうは副業で、本業が神社の宮司だからだった。
 桜沢龍海が宮司総代をし、長男の遥海も、その父親のもとで宮司をしている。
 龍海、遥海という、すこしばかり風変わりな名前も、海神を御神体にしているという神社に生まれたゆえだった。
「総代、昨日だって、飲みすぎているんですから」
 桜沢遥海は、聞いていないような顔をしている父親に、さらに言う。
「そうガミガミ言わなくても、わしだって子供じゃないんだから、わかっているさ」
 父親がうるさそうに、うなずいた。
「会長のことでしたら、心配いりませんよ。わたしがついていますから」
 すかさず、崎村が横から口をはさんだ。
「そうですよ。われわれだってサポートしますよ」
 取り引き相手のふたりも言う。
「高血圧の父ですので、なにぶん興奮させすぎないように、よろしくおねがいします」
 桜沢遥海は、取り引き相手のふたりに頭をさげた。
「おいおい、おふたりに気を使わせてどうする」
 とたんに、父親が苦々しげに言った。
「だいたい、おまえは心配しすぎなんだ」
「そうは言ってもね。まえにも一度、倒れてるんだから」
 遥海も、息子の口調にもどって言い返す。
「それより、おまえのほうこそ気をつけろよ」
「なにをです?」
「ふたりきりだからといって、理緒さんに不埒な真似などせんようにな」
「なに言ってるんですか」
 桜沢遥海は、美人秘書のほうを気にして、声を荒げた。
「そうですわ」
 理緒も、笑顔で龍海をたしなめた。
「そんな心配、必要ありません。専務はとっても紳士的なかたなんですから」
「それでは、わしがまるで紳士的でないようだ」
 龍海が、笑い声をあげた。
 恰幅のいい体躯をゆすって、豪快な笑い声をあげているさまは、神社の宮司よりも、設立して間がないリゾート企画会社の会長のほうが、むしろ本業であるかのようだ。
「まったく、美人秘書さんの言いかたはひどすぎる」
 などと、取り引き相手のふたりも、笑顔で追従している。
「じゃあ、もうコースのほうへ」
 崎村が、龍海たちをうながして、コーヒー・ラウンジから出ていった。
「まったく、総代ときたら」
 遥海は、とても宮司には見えない、父親のうしろ姿を見送って、ぼやいた。
「でも、あれが会長なりの気の使いかたなんですわ」
 理緒が、言う。
「そんな気の使いかた、されても迷惑なだけですよ」
「そうおっしゃらずに、おすわりになって。コーヒーのおかわりはいかがです?」
「え、ええ」
 桜沢遥海は、低いコーヒー・テーブルをはさんで、理緒とさしむかいになるようにソファに腰を降ろした。
 理緒は、ウェイターを呼びつけて、テーブルの上をかたづけさせ、あらためてコーヒーを注文している。
 
 
 
 
〜〜『現金を抱いた女』(横溝美晶)〜〜
 
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