官能小説販売サイト 北山悦史 『甘やかな柔肌』
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北山悦史    甘やかな柔肌

目 次
不貞の湯
二穴初夜
新妻の勝ち!
桜色の謝礼
若いのが好き
PTAは蜜の味
ハートのパラソル
お餞別の夜
甘いお仕置き
淫肉の謝礼

(C)Etsushi Kitayama

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   不貞の湯

     1

 観光バスは東北自動車道を那須に向かっている。もうだいぶ前から栃木県に入っていて、緑滴る山々が遠くに眺められる。
 町内会の土日一泊の旅行会だった。総勢百四十人が三台のバスに分乗して東京下町を出発した。
 旅行日程を土日としたのは子供たちも一緒に参加できるように、ということでだった。どのバスも半分ぐらいは子供たちが占めているはずだ。首都高から東北道を走りはじめたころは子供たちもうるさかったが、車窓の普段見慣れない田舎の景色に見とれ、そのうち静かになった。
 またふとは通路左側のシートに座っていた。左隣には妻が座っている。高校生の娘と中学生の息子は、このごろでは親と行動をともにするのを嫌がり、留守番をしているほうがいいといって参加しなかった。
 バスに乗る前から、より正確にいうと昨夜からだが、太志は子供のように胸をときめかせていた。さらに正確にいうと一週間も前からだった。今日のこの旅行は自分のために計画されたのではないかとすら思っている。
 心臓は胸の真ん中から左側にある。しかし今、心臓は左に大きくずれてしまったかと思えるほど左脇腹をとどろかせていた。太志がさっきから左腕でわきをガードするようにしているのは、その鼓動を妻に悟られまいとしてだ。
 良妻賢母を絵に描いたような妻は、今の太志には怖い存在だった。妻は結婚以来、逆上するなどということをただの一度も見せたことはないが、それは太志がそうならないように細心の注意を払っているからであって、いったんキレたら手におえなくなるのは恋人時代にえらい目にあってわかっている。
 後頭部にズキズキとする痺れ感が、また、きた。チャーターした三台のバスの二番目に太志たちは乗っている。何台かの乗用車やトラックの後ろに三台目が走っているはずだ。太志たちが座っているシートは後ろから三列目。振り向いてちょっと首を伸ばせばそのバスは見えるだろう。だが、隣の妻が怖くてそれはできない。
 そのバスに、憧れの人妻、かわいいかわいいとうが乗っている。後頭部にくるズキズキは、その結芽子からの愛のメッセージなのだ。別のバスに乗っていてもこうなのだから、同じバスだったらメッセージが直球すぎて失神の恐れもあったかもしれない。
(だけど、ほんとにいいことができるのかな。ダンナとコブつきなんだしな)
 胸の鼓動と後頭部のズキズキを妻に悟られないようにと祈りながら、太志は思った。

 一週間前、バス旅行の最終の打ち合わせがあった。娘の用事があるから代わりに出てくれと妻に言われ、あまり気分も乗らなかったが太志は集会所に行った。
 町内会の役員の一人に太志は名を連ねているが、ふだんは妻に任せきりで集まりに出たことはなかった。ところが出てみて驚いた。前々から気になっている美貌の人妻、佐藤結芽子が来ていたのだった。
 役員名に佐藤という名前があったのを太志は思い出した。もちろん男名で出ていた。佐藤などという苗字はどこにでもある。それまでまさか意中の美女の夫だとは思いもせず、見てすぐに忘れてしまった。
 自分のうちと同じく結芽子の家でも役員の夫は名前ばかりで、実際の活動は妻任せということなのだろう。それがわかっていれば最初から参加していたのに……と半分は悔み、半分はドキドキしながら、太志は、多俣の夫のほうですとみんなに挨拶した。
 出席者はちょうど十名だった。太志が顔を出したときはまだ七名で、座卓を二つくっつけて歯の抜けたような座り方をしていた。知っている顔が、結芽子を含めて三人だった。男が二人、並んで座っていた。太志もそっちのほうに座ろうと思ったが、場所が狭いようだった。
 
 
 
 
〜〜『甘やかな柔肌』(北山悦史)〜〜
 
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