勝目 梓 狂悦の絆
目 次
第一章 閉ざされた欲望
第二章 秘悦の誘い
第三章 絶頂ピーピング
第四章 覗かれた情事
第五章 痴女と少年
第六章 果てしなき狂乱
第七章 痴漢ゲーム
第八章 買われた獣性
第九章 爛れた部屋
第十章 歓喜の擬似セックス
第十一章 快楽スワッピング
第十二章 窮極の和合
(C)Azusa Katsume 1994
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第一章 閉ざされた欲望
1
一九八七年一月二十八日――。
私の地獄が始まった日だ。
その日の午後九時二十分に事故は起きた。私は仕事を終えて、車で家に向かっていた。車は私のベンツで、ハンドルは私に十一年仕えていた運転手の鈴木昌二がにぎっていた。
私の自宅は杉並区の高井戸にある。車は首都高速四号線の下り車線を走っていた。事故は初台ランプを過ぎてすぐのところで発生した。
私はベンツのバックシートでまどろんでいた。銀座のクラブで客を接待しての帰りで、酒が入っていたのだ。眠っている最中の事故なので、私自身は詳しいようすはわからない。私は鈴木昌二の運転技能に全幅の信頼をおいていた。
事故は鈴木のせいではなかった。ベテランドライバーの鈴木の腕をもってしても、その事故は防げなかったのだ。
鈴木は左車線を制限速度で走っていた。その直前をフェアレディが右車線から割り込んできた。フェアレディは私のベンツの鼻先をかすめた。それも急角度の割り込みだった。鈴木は急ブレーキをかけた。それ以外の処置はなかった。
フェアレディの前に大型トラックが割り込んだのと、鈴木が急ブレーキをかけたのと、ほとんど同時だった。フェアレディはブレーキを踏むひまさえなかった。フェアレディがトラックの横腹に激突し、はね返され、そこに私のベンツが突っ込んだ。
衝撃でトラックが炎上した。ガソリンタンクに引火したのだ。そこまでは事故の目撃者の証言と、警察の現場検証ではっきりした。トラックとフェアレディは、三宅坂のトンネルあたりから、たがいに危険な進路妨害をつづけながら走っていたというのである。どうしてそんなことをつづけていたかについては、トラックとフェアレディ双方の運転手が死亡してしまったのでわからない。
事故で死亡したのは、二人の運転手だけではなかった。鈴木昌二も頭の骨を打って、一週間後に死亡した。
私は鈴木の踏んだ急ブレーキで、バックシートからころげ落ちそうになって目覚めた。目覚めた一瞬に、私の地獄は始まったのだ。咄嗟に私は何かをつかもうとした。そして衝撃が襲ってきた。信じられないことだが、私の躯はバックシートからとばされて、フロントガラスを突き破り、そのまま宙をとび、フェアレディを越えてトラックの運転台の背中に激突し、さらにバウンドして路上に叩きつけられた。
腕と大腿部の骨折が合計五カ所。視神経の切断。脊髄障害。知覚麻痺――しかし私は一命をとりとめた。脳の機能に障害は起きなかったのは奇跡だとされた。入院は六カ月にわたった。
一命をとりとめたことは、神と現代医学の進歩に感謝すべきである。しかし同時に私はその二つのものを呪いたい気持ちも棄てきれない。命をとりとめたこと、とりわけ脳に機能障害を来たさなかったことが、私を地獄に導いたのだから。
生命が救われたが、私の性的機能はその事故で根こそぎ奪われた。私は治癒する見込みのない完全なインポテンツとなったのだ。原因は重度の脊髄の障害であった。
六カ月間の入院の間もその後も、私は現代で考えられる最高の治療とアフターケアを受けた。そのおかげで私の身体機能は、性的な面を除いては、知覚運動、刺激の伝達、反射機能ともすべて事故以前と変わらない状態に戻った。中枢神経の中の性的な回路だけが途絶えたまま、元に戻ることがなくなった。
事故のとき、私は三十九歳だった。妻と娘が二人いた。二十四歳のときに私は自分で小さな電子工業関係の会社を創立していた。会社の創立のきっかけとなったのは、IC製造過程で原料に特殊な薬品処理を加えるシステムを私が開発し、その特許を取得したことにあった。
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