北山悦史 淫気功 美女昇天師
目 次
淫気功 美女昇天師
第一話 憑依妻絶頂昇天
第二話 自慰妻指南
第三話 不能者絶倫
第四話 淫霊昇天
桃源の果蜜
白い淫魔
痴悦の淫気功
淫気功の達人
幽界通い妻
禁悦の癒戯
淫能の惑乱
陰陽濡れ指南
(C)Etsushi Kitayama
◎ご注意
本作品の全部または一部を無断で複製、転載、改竄、公衆送信すること、および有償無償にかかわらず、本データを第三者に譲渡することを禁じます。
個人利用の目的以外での複製等の違法行為、もしくは第三者へ譲渡をしますと著作権法、その他関連法によって処罰されます。
淫気功 美女昇天師
第一話 憑依妻絶頂昇天
1
胸の中心部に、ズシリと衝撃が来た。肉体的な重さというよりも、一種の重圧感だ。
(気持ちのほうを患ってるのか)
すでに白衣に着替えている深山天泉は、休憩室としても使っている自室から診察室に移った。
もうじき九時になる。今日一人目のクライアントが、五分後ぐらいにはここに来る。そのくらいの近さにまで来ているということだ。今受けた胸の衝撃は、そのクライアントからの〃念波〃だ。
若杉紗和子という三十三歳の女で、普通の主婦だという。一昨日、電話で予約をしてきた。会ったことはない。
電話に出たのは天泉自身だったが、そのときは何も感じなかった。電話でいろいろと感じるクライアントもいる。病気・疾患の違いにもよるし、クライアントと天泉との「気」の質にもより、良伝導体のように感じが強いクライアントもいれば、それほどでもないクライアントもいる。
ここ、千葉市の南部、緑深い住宅街の一角に「深山気功院」の看板を掲げたのは二年前のことだった。四十四歳で気功を習いはじめ、三年間修行し、それまでの会社勤めを辞めて第二の人生に入った。一応それらしく「天泉」という名前も作り、看板に書いてある。
自宅の敷地に三部屋の平屋を建て、そこで開業したのだったが、長患いをしている人や、医者にかかってもいい結果が出なくて悩んでいる人を快癒させたのが口コミで広がり、今では東京、埼玉あたりからもクライアントが訪ねてくる。
今日一番で来る若杉紗和子は、東京北区に住んでいるらしい。友達の知り合いから、天泉のことを聞いたといった。
「首と肩のこりがひどいんです。もうずっとつづいていて。病院とか整体とかいろいろ行ったんですけど、よくならなくて。先生のところに行けば、一回で治ると聞きました」
一昨日の電話で、紗和子はすがるような口調で言った。
「ああ、はいはい。わかりました」
さっと答えて、天泉は予約に入れた。
一回で治るかどうかは、実際にやってみなければわからない。クライアントが言ってくることを否定することはしないが、過剰な期待もいだかせない。よくない評判が立つおそれがある。口コミはありがたいことだが、いいことばかりでもない。
天泉は診察室の机に向かい、予約のノートを見た。医者のようにカルテを作っているわけではない。ヒーリングの性質上、ほとんどアドリブ的な治療をしている。
気功治療は療術行為といって、いわゆる医療行為とは違うので、料金も〃礼〃的なものとして、内容のいかんにかかわらず一時間五千円ときめている。
たったの五千円で、難病・長患いから解放されたクライアントは、この二年で百人にも上る。その九割は、今年に入ってからのものだ。開業した去年は、口コミを広げるための時間、といってもよかった。
『若杉紗和子』という名前を天泉はジィッと見た。胸に受けた重苦しさが膨張した。鉛のような重さも感じた。
首と肩のこり、と紗和子は言っているが、原因はこの胸の重さだろう。これを放っておいて首や肩に何かをしても駄目だ。こういうところがわからない医者に行って治るわけがない。
チャイムが鳴った。天泉は机の上のインターホンで入るよう言い、自分も玄関に向かった。
「予約してあります若杉ですけど……」
清楚なラベンダー色のブラウス、濃紺のミニスカート姿の紗和子は、抜けるような白さの顔をしていた。化粧のせいではない。化粧に目くらましされない目を、天泉は持っている。
胸が騒いだ。五分前に受けた紗和子の念波が動きだしたのだ。それと連動したものといってもいいが、別の〃ざわめき〃を天泉は自覚した。一週間に一人ぐらいは、こういうクライアントが来る。最近は多くなってきたようだ。
天泉は紗和子を診察室に案内した。玄関から入ってすぐが待合室、その隣が診察室、その奥が天泉の自室になっている。天泉自身と当該クライアントしか知らないことだが、奥の部屋が『診察室』になることも、まま、ある。
待合室もソファとクズ籠しかないが、この診察室も実に殺風景だ。六畳の洋間に、机と椅子が二脚、あと、白いカバーをかけた簡易ベッドと壁の時計があるだけだ。
窓は常にブラインドを下ろしている。ベッドの手前に衝立代わりのカーテンの用意はしてあるが、使ったことはない。次の予約客が待合室にいることはあっても、診察室は密室といっていいからだ。
「首と肩のこり、ですか。いつごろからですか」
紗和子と向かい合って椅子に腰を下ろし、天泉は訊いた。
「二年ぐらい前からです。重い感じは、その一年ぐらい前からありましたけど」
切れ長の澄んだ瞳をまっすぐ天泉に向け、紗和子はすらすらと答えた。しゃべる内容を何回も反芻してきたのだろう。
実にきれいな形の鼻をしている。蛍光灯の明かりを反射して、鼻の先が光っている。暗めのワインレッドのルージュを引いているぷっくりとした唇は、上と下が同じ幅をしていて、上唇の山形は富士山のような輪郭だ。
紗和子は、ブラウンのストッキングをはいた膝をぴたりと合わせ、腿の上に両手を乗せている。が、スカートの丈が短いことと、お尻に布地が取られていることとで、手を離せば恥ずかしいところが見えてしまうのは歴然としていた。
ちょっと診てみましょう、と言って天泉は椅子を起ち、紗和子の後ろに回った。
首と肩の治療をしてもらうから、ということでだろうか、紗和子は艶やかな長い髪を後ろでまとめ、白いドット模様の入ったブルーの大ぶりな髪留めで、ザックリと留めている。
天泉は清らかな布地のブラウスの肩に、そっと手を乗せた。
「あ……」
かすかに肩をすくめ、紗和子が吐息のような声を漏らした。
「どうしました?」
「あの、先生の手、すごく熱くて」
「ワハハ。冷たい手をしてちゃあ、こういう仕事はできませんよ。手の力、抜いてください。下に垂らして」
ほどよい肉づきの肩をむにょ、むにょと揉みながら天泉は言った。紗和子は腿の上の手を垂らした。天泉は肩から白いうなじに手を這わせ、数秒して自分の椅子に戻った。
「すぐよくなるでしょう。おおもとの患部がわかりました」
「カンブ?」
キョトンとした顔で紗和子は天泉を見た。悪いところです、と天泉は紗和子の目を見つめて答えた。
紗和子は腕を垂らしたままだ。天泉の視線には、濃紺のスカートとブラウンのパンストの奥が入っていた。ふっくらと膨らんだ、大きめのブルーの三角形だった。
ムラムラときた。クライアントに対する淫情は、天泉にとってはかけがえのないエネルギーでもある。ほんの数秒でおおもとの原因がわかったという天泉を、紗和子は信頼に満ちた目で見ている。三十三歳、美貌のクライアントを、天泉はベッドに促した。
|