花森えりか 欲しい女たち
目 次
淫らな玩具で犯して
凌辱された人妻
初めて知ったエクスタシー
男の執拗な舌
秘戯を教えて
医師の悪戯
義父のペニス
卑猥な男が好き
(C)Erika Hanamori
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淫らな玩具で犯して
1
小学校のPTAの会合が終わって、教室を出ようとしていた奈々子は、背後から声をかけられた。
振り向くと、宮内早百合が軽く手を挙げ、足取りを速めて近づいて来た。
「井原さん、この後、お時間あるかしら?」
宮内早百合が言った。
「ええ」
「ちょっと相談したいことがあるんだけど……」
「いいわよ」
「良かった。じゃ、行きましょう」
二人は肩を並べて教室を出た。
(相談て、何かしら……)
宮内早百合とは、近くのマンションに住んでいるため、偶然、出会うこともあったし、親しい主婦だった。奈々子と同じ、一児の母親である。
長女同士が同じクラスになってから、授業参観やPTAの会合では、いつも一緒になる。
同年代のはずだが、宮内早百合はいつも鮮やかなメイクにファッショナブルな装いで、表情もいきいきしていて若々しかった。
一児の母と思えないほど、女の魅力にあふれている。三十代半ばなのに、まだ子供が幼い〈ヤン・ママ〉みたいな若々しさを、奈々子はうらやましいと思っていた。
いつか、偶然、ホームセンターの駐車場で会った時、車を降りて店の中へと歩いて行きながら、
「宮内さんて、エステなんかも行ってるの? いつ見ても若くてきれいで、うらやましいわ」
そう言ったことがある。
すると宮内早百合は、
「あたし、恋をしてるから」
ちょっと謎めいた微笑を浮かべながら、そう答えた。
女は恋をすると、きれいになるとは、奈々子も知っているが、
(人妻で、母親なのに……)
と、驚かされた。結婚したらもう、恋とは縁がなくなるもの――奈々子はそう思っていたのだ。
現在の自分は、ただの平凡な主婦。平凡な妻で、平凡な母親だった。
長女の友達から、『おばさん』と呼ばれるのにも慣れているし、四十を過ぎた夫がすっかり『おじさん』になってしまったように、自分も女というより『おばさん』なのだと諦めていた。
ところが、同年代で、はるかに若々しく魅力的な宮内早百合が、
「あたし、恋をしてるから」
すらっとそう答えたのだから、驚くのも無理はなかった。
けれど、すぐに納得した。エステやメイクやファッションだけでなく、女を魅力的にするのは、やはり恋である。
(でも、ご主人に恋をしているってわけじゃないでしょうね。すると、不倫……!)
そう思い至った奈々子は、今日も宮内早百合の姿を眼にして、
(彼女はご主人を裏切って、ほかの男性と、ラブホテルなんかへ行って、甘美な時間を過ごすんだわ……)
と、空想をかきたてられそうになった。
今日も宮内早百合は、純白のパンツ・ルックに若々しいアクセサリーをつけ、ポシェットふうのショルダー・バッグ、栗色にカラーリングしたロング・ウェーブ・ヘアも、女優のようにバッチリ決まっている。
今日のPTAの会合に出席していた母親たちの中で、最も華やかで、若々しく、洗練されていて、目立つ存在だった。
そんな彼女が、相談したいことって何かしらと、奈々子には予想もつかなかった。
学校を出て少し歩くと、オープン・カフェ式の広々とした明るい喫茶店があり、二人はそこに入った。
テーブルをはさんで座り、ボーイに飲み物の注文を告げると、宮内早百合はさっそく切り出した。
「実はね、今の彼って年下なんだけど、このごろ、ちょっと困っちゃってるの」
「どうしたの?」
『今の彼』ということは、過去にも別の彼と彼女は不倫していたのだ――と、あらためて宮内早百合を、すごい奥さんだと奈々子は驚かずにいられなかった。
「ベッドでね……」
と、宮内早百合が顔を寄せるようにして、声を低めた。
「変態的な行為を、挑んでくるのよ」
そう言って彼女は、秘密めいた微笑を浮かべた。
「まあ……どんな……」
変態的な行為と言われても、具体的には想像できないが、奈々子は思わず眉をひそめた。そんな男と付き合っているなんて――と彼女への小さな軽蔑が湧く。
「たとえば、縛るとか……」
「ええッ……!」
「バイブを使って責められたり……」
「まあ……」
と、呟いたきり絶句し、奈々子は顔が熱くなるのを感じた。
初夏のまぶしい陽射し。明るく晴れた昼下がりのオープン・カフェ式の喫茶店で、名称だけは知っているバイブレーターのことを、略して『バイブ』などと言う早百合に、言葉を失ってしまうほど驚愕させられる。
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