官能小説販売サイト 子母澤類 『金沢名門夫人の悦涙』
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子母澤 類   金沢名門夫人の悦涙

目 次
第一章 快楽への序曲
第二章 名門夫人の喘ぎ
第三章 淫楽の秘室
第四章 倒錯、悶え妻
第五章 覗かれた恥態
第六章 至福の痴戯

(C)Rui Shimozawa

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   第一章 快楽への序曲

     1

 さわさわと水の音が聞こえてくる。せせらぎの音はふいに、の乾いた身体の中に、流れ込んできたようだった。
 女の身体が、みだらにざわめいてくる。頬が染まった。ふと、秘奥にむずがゆさが走った。
 偶然に見つけた、夫の写真を見てからだった。
 美夜子は夫の背広の内ポケットからみつけた写真を、もういちど見つめた。
 写真には、裸の若い女を組みしいて、片足をかかえ挿入している夫が写っていた。女の花びらはめくれあがり、ぬらぬらと光っていて、そこには確かに、硬くなっている肉棒が見えている。
 硬そうだ、と思う。
 これはたぶん、盗み撮りでもなんでもなく、夫が好んで撮ったものだろう。
 花冷えのする夜半過ぎ。美夜子はふとんの中で、けだるく寝返りをうった。
 今宵はなぜか、せせらぎのかすかな音が耳について眠れない。
 水音は、広い屋敷のぐるりを囲む厚い土塀に沿って流れている、おおしょう用水のせせらぎだった。
 春先の、なまめいた夜気のせいだろうか。
 夕方に、桜の花びらを乗せた用水の、友禅模様のようなあでやかな流れを見たせいかもしれなかった。
 ふとんの中はしめっぽい甘さがあって、今夜もれはぐれた、女の身体がうずいたままだ。
 乳首が甘がゆく、起きあがってくる。腿のあいだの秘めやかなあわいが、あやしく昂ぶってくる。
 美夜子はうつぶせのまま、となりの床をちらりと見やり、唇を咬んだ。
 今夜も夫の床は冷えたままで、平べったく並んでいるだけだった。
 美夜子の身体が忘れられて、もうずいぶんになる。
 気まぐれにまかせ、夫の指がたまに這った女の身体が、ちりちりとげているような気がする。閉じているはずの桃色の秘苑が、こんなにみだらにうずくのだから……。
 夫のまつざきいちろうは、今夜も金沢の町を遊び歩いている。
 今宵はどちらの川沿いにいるのだろうか、と美夜子はふと思った。
 金沢には、城下町をかたち造ったふたつの流れがある。さいがわと、浅野川、夫はそのいずれかのほとりにいるはずであった。
 男川とも呼ばれる犀川の、犀川大橋から広がる、繁華街の片町か、または女川と呼ばれる浅野川の、左岸にある東のくるわで、芸者をあげての茶屋あそびか、だいたいそのどちらかであった。
 俺は水商売の女たちにもてるんだ、といばってはいるが、そんなことはあたりまえだと、美夜子は思う。夫が、金沢に本店を持つ雪国銀行の、頭取の息子だからである。
 
 
 
 
〜〜『金沢名門夫人の悦涙』(子母澤類)〜〜
 
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