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高 竜也    淑女の愛花

目 次
第一章 復  讐
第二章 もだえる柔肉
第三章 欲求不満の秘書
第四章 処女体験
第五章 愛  咬
第六章 慰めの快楽
第七章 夜宴の滴り
第八章 凌辱契約
第九章 堕ちた熟れ肌

(C)Tatsuya Kou

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   第一章 復  讐

 遠いさしの面影がところどころに残っているしろがねだいの一角に、近所の人たちがまつみや御殿と呼んでいる松宮ゆきの邸宅がある。
 この近辺に住む人たちの大半は、戦前からの資産家が多いが、松宮家は十数年前に以前の持主から買い取って住むようになったのであり、いってみれば新参者であった。
 だから『松宮御殿』という名称には、羨望よりもむしろ成り上がり者に対する保守派の住民たちの皮肉が多分に込められていた。
 松宮雪雄はファッション界の一方の雄として知られ、今でこそその頂点に君臨しているが、いわゆる商売上手で上流階級の人たちや有名芸能人に取り入ることがうまく、それを宣伝媒体として『松宮ブランド』の名を確立したのだった。
 彼の経歴はパリの服飾専門学校を出たということになっているが定かではない。
 古くからのファッション業界の人の噂によると、前妻まさにファッションセンスがあって雪雄を支えてきたことで、現在の松宮ブランドが確立したのだとか。
 だがその功労者である雅美は数年前に一方的に離縁され、その直後に一人で住むマンションのベランダから誤って落ち、すでにこの世にいなかった。彼女をよく知る周囲の人の中には〈事故死〉ではなく、〈自殺〉だと断言する人もいた。
 松宮家には、雅美との間にできたせいという十七歳の高校生と、雪雄のもっとも古い愛人の子供であるしょうという二十一歳になる女子大生がいた。
 そして現在の雪雄の妻は、数多くいる愛人の一人であったという女で、雪雄よりも二回りも若い三十四歳であった。
 家庭環境が複雑であったから、翔子は遊び好きの我がまま娘で、女子大生とは名ばかりのプレイガールであった。
 雪雄は相変わらず家庭をかえりみず、若い愛人たちの間を巡り歩き、真世は真世でそれに対抗するかのように、ホストクラブの男や若い芸能人と遊び呆ける始末だった。
 まともなのは征吾だけだった。
 あざにある有名私立高校の生徒である彼は、常に成績は五番以内をキープしていたが、決してガリ勉タイプではなく、高校生らしい遊びにも付き合いのよい方であった。
 雪雄は松宮ブランドの将来を征吾に託していた。父親としては失格者のらくいんされても文句の言えない男であったが、征吾をできあいしていたし、彼の自慢のタネでもあった。
 翔子がどんなに無茶なことをしてもあまり文句を言わなかったのは、いずれ他家へ嫁ぐ人間であったし、松宮ブランドとは無縁になるからと思っていたからだった。しかし征吾は父親の期待を、いつか裏切るつもりでいた。直接手を下さないにしても、大好きだった母を追い出し、死に至らしめた雪雄に何らかの形で復讐することで、母の無念を晴らそうと心に決めていた。
 母が死んだのは二月五日だった。その日に何か行動を起こすことがもっともふさわしいように思えた。父も義母も五日の夜は不在だった。翔子がベロベロに酔って帰宅した時、征吾は突然義姉に対し、言いようのない欲望を感じた。だらしなく玄関ホールで倒れ込んでいる翔子をベッドルームに運ぶと、いきなり裸にいた。あろうことか翔子は彼を見て誘い込むように白い歯を見せて笑った。
 征吾の内部で、怒りと屈辱感が渦巻いた。
 もし翔子が「許して」と哀願したならば、別の感情が湧いていたかもしれない。
(あんたに何ができるのよ)
 そんな表情をしながら、これ見よがしに両脚の付け根を、少しずつ開いた。盛り上がったふくらみと逆巻くような濃い陰毛は、いかにも多淫多情を思わせた。
 赤い亀裂の上に、しらうおのような指が滑った。
 多くの男たちによって荒された筈なのに、実に美しいピンク色の肉片が、まるでコーティングされたように光っていた。
 征吾はされる自分を感じた。
 
 
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