花森えりか 淫夢に濡れて
目 次
淫夢に濡れて
女教師の欲望
同性の甘い肌
あなたに捧げたい
背徳の快楽
株とセックスに溺れて
快楽をむさぼる女
(C)Erika Hanamori
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淫夢に濡れて
1
庭の木々や花壇に、水やりをしていた早百合は、
「ああ、もう、やーめた」
そう呟くと、さっさと家の中に入り、リビングのソファへ身を投げかけるように、横になった。
「もう、やーめた」
と言ったのは、木々や花に水をやることをだが、心の底で、
――この結婚生活を、もう、やーめた――
そう言いたい気持ちも、あるのだった。
結婚して一年半。
早百合は今年三十二歳だが、初婚である。
夫は、ひと回り年上の四十四歳で、再婚。
妻子がいた夫と、俗にいう〈略奪結婚〉をしたのである。
最初の一年間は、幸福だった。
妻より自分を選んでくれた夫を、大事にしようと思った。
ところが、最近は、恋愛感情もさめてしまった。
性生活も満たされていない。
結婚前の時のような、ドライブだのコンサートだのディナー・ショーに、夫は連れて行ってくれない。
楽しみも張り合いもない毎日――。
夫は、スタッフが三人ほどの事務所を持つ税理士である。
妻と離婚し、早百合と結婚して、都下にある建て売り住宅を購入した。
夫は、マイホーム亭主だった。
家庭を大事にし、家事を手伝ってくれるのは、妻にとってラクでいいけれど……。
(単なるオジサン、こんなに男としての魅力に欠ける男だなんて思わなかったわ)
略奪愛、略奪結婚、という言葉に、舞い上がっていただけかもしれない。
二十代も終わろうとしていた早百合にとって、シングル女として燃えられる最後の恋愛、――そんな焦りも、あったのかもしれない。
(こんなはずじゃなかった)
(ああ、もうもう、こんな暮らしはイヤ)
(あんな冴えない中年男より、もっと若いイケメンの夫のほうが良かった)
(ダブルベッドに並んで寝て、味気ないセックスのあとに、あの高イビキ……!)
何より、友人の一人に冷やかされた言葉が、早百合の頭から離れない――。
『じゃ、介護の生活が待ってるのね。あと十年かそこらで、早百合はご主人の介護を覚悟しなくちゃいけないのね』
お気の毒……と言わんばかりの口調だった。
(あと十年てことはないでしょ、十年後の夫は五十半ばじゃない)
そう思ったが、夫は年々、頭髪が減少してきて、そのため額が広くなっていき、十歳ぐらい老けて見えるから仕方ないともいえるのだった。
買い物に出かけたりして、夫婦らしいカップルの姿を見ると、
(イケメンじゃなくてもいいから、あんなふうに一緒に歩けるような夫が良かった……)
しみじみと、そう思うのである。
(だからといって、夫に食べさせてもらえるこのラク〜な生活を、捨てちゃう勇気もないしね……)
と、それもまた、本音である。
早百合はチラッと壁の時計に眼をやった。
今夜は夕食をすませて帰ると夫から携帯メールがきたから、自分の分だけ作ればよかった。
(スーパーへ買い物に行くのは、明日にしようっと)
ソファに横たわったまま、テーブルに手を伸ばして、リモコンでテレビをつける。
頭の後ろにクッションの一つを置き、もう一つのハート形クッションを胸にかかえ込んでテレビへ眼をやっていたが、いつの間にかウトウト眠り込んでしまった。
ふと目を覚ました時、かかえ込んでいたクッションはカーペットに落ちていて、軽く両膝を立てた太腿の間に、右手を挟みつけているのに気づいた。
そして左手は、左のブラウスの胸のふくらみに置かれている。
(イヤだわ、あたしったら……眠りながら、性の欲望を感じてたみたい)
右手と左手をそのままにしていると、身体の奥にモヤモヤとした熱っぽさが湧き起こってくる。
(ああ、したい……したい……欲しい……したい……!)
セックスしたいのかオナニーしたいのか、自分でもわからないままに悩ましいため息をつき、早百合はブラウスの上から乳房をギュッと握り締めた。
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