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 末廣 圭    歩くバイアグラ
 
 目 次
 第一章 『セブ島・サラ』
 第二章 『人妻・理恵』
 第三章 『OL・裕子』
 第四章 『ソウル・ナン』
 第五章 『ハワイアン・ショーン』
 第六章 『プロゴルファー・弘美』
 第七章 『人妻・由美子』
 
 (C)Kei Suehiro
 
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 第一章 『セブ島・サラ』
 
 1
 
 野中耕平はサラの手を握りしめ、真っ白な砂浜を歩いていた。夕闇があたりの景色を薄墨のように溶かしていた。潮が干いてパンプー・ボート(遊覧船)が三つ、四つ砂に乗り上げていた。
 蟹の手のように飛び出しているカティグ(波よけ)が、南の島の雰囲気をプーンと匂わせていた――。
 
 耕平がサラと出会ったのは、もう半年前、耕平の仕事仲間でもあり悪友でもある、佐藤雄二に誘われて行った、フィリピン・クラブ『ロサス』だった。
 サラは黒のストッキングが似合う女だった。ミニ・スカートからスラリと艶やかに伸びる脚が、たまらなくセクシーに、その姿態を浮き上がらせていた。こうした店で働く女にしては珍しく、黒髪はショートカットで、襟足のところで小さくカールしている。
 傍らに座ったサラは、その悩ましい太腿を隠すように、小さなハンカチを膝に掛けた。
 (そんなヤボなものはいらないよ)と、腹の中でボヤきたくなるのだが、そんな仕草が逆に色っぽく眼に映っていた。
 生来、初対面の女には滅法優しいのである。
 「フィリピンのどこからきたの?」
 「セブ(島)から……」
 「マニラには何回か行ったけれど、セブはまだ一度も行ったことがない」
 「マニラはダメッ! 汚いし、臭いし、煩いの。今度はセブに遊びにきなさい。優しくガイドして上げますよ」
 「海がきれいだってね」
 「水もきれいけど砂が白いの。日本にはないと思うわよ……」
 サラの大きい眼が、故郷を思い出していた。
 サーモン・ピンクのルージュが唾液に濡れて光った。
 「よしっ セブへ行くっ!」
 「ほんとよっ! アコ(私)待ってるから」
 「俺はレディにはウソはつかないの」
 僅か十数分で、とんでもない約束を取り付けた。女に絡む話なら衝動的に決断してしまう、怖い持病を持っている。
 (透き通るような海が見たい……)のは表向きの言い訳で、頭の中では、さっさとサラを丸裸にしてしまっていたのである――。
 
 ――セブ島に橋一本で繋がるマクタン島のサンセットは荘厳だ。入道雲の合間にゆったり埋め込まれていくオレンジ色の太陽は、驚くほどにばかでかい。
 「きれいだ……」
 耕平は、サラの瞳を見返して呟いた。
 「アコが……」
 サラの返事は屈託がない。
 サラは、きょうデパートで五百ペソ(約千五百円)で買ったばかりの水着を着けていた。真っ黒なツーピースで、シルクのように柔らかいスベスベしている布で仕上がっていた。
 「こんなの恥ずかしいよ……。アコのおなか、バブイ(太っている)から……」
 試着している時、サラは身を捩って尻を向けていた。割れ目に食い込んだパンティが、尻の曲線をきれいに見せて、実に猥褻だった。
 その少しばかり小さめの水着が水に濡れ、褐色に輝くサラの肌理の細かい肉肌に、緩く食い込んで、さらにセクシーに栄えている。
 こぶりだが弾力のある乳房が、ブラジャーの上に零れた。谷間の左に小さなホクロが覗いている。
 V字型に腰骨あたりまで鋭く切れ上がったパンティは、もうちょいとで茂みの数本ぐらいはみ出しそうで危ない。
 こんもり盛り上がる恥骨が、恥ずかしそうに、小さな布にせり出していた。
 その下には細い溝の筋さえうかがえる。
 女には常に“大胆”を自負しているが、水着の妖姿に見とれてしまって、次に移れない。
 あたりに人影はない。
 「キス……したい……」
 唐突にサラが言う。
 言葉の終わらぬうちに、握りしめていた手を解くと、真っ正面からおおい被さってきた。二本の腕が首に巻き付いてきた。やや厚ぼったい唇が、やにわに舌先を突き出してヌメリ込んできた。
 先制攻撃を掛けられて、慌ててしまう。
 外国人女性とのお手合わせは、片手の指で充分なのだが、仕掛けられたままでは、大和男児が泣いてしまう。逆襲に転じて、この場のムードを盛り上げなければならない。
 尻に手を回し、割れ目に指先を落として下から支え上げる。指の腹にハブタエ餅のような、柔らかい肉が水に濡れて吸い付いた。
 ついでに海水パンツの中で、すでに隆々といきり勃つ我が巨砲を、グリグリっと恥骨にすり付けた。
 「アウッ!」
 
 
 
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