官能小説販売サイト 末廣圭 『陽 炎』
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末廣 圭    かげ ろひ

目 次
プロローグ
第一章 裏切り
第二章 多毛な女
第三章 再 会
第四章 誘 惑
第五章 姉 妹
第六章 きょう えん
第七章 こい がたき
第八章 かげろひ

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   プロローグ

 髪を伸ばすだけで男の人相は変わっていくものだと、こんどうつばさは鏡に映った自分の姿をじっと見つめる。
 中学生時代は丸坊主に近かった。十五歳の誕生日を終え、都立高校に通うようになって、髪を伸ばしはじめた。
 前髪が額に垂れるほどになった。ヘア・クリームを塗ると、髪がべたべたして気持ち悪いから、ほったらかしにしてある。真っ黒な髪がざんばらになったままだ。
 しかしそのほうがせいかんな顔付きだと、自己満足している。げじげじの太い一本眉毛と愛嬌のある団子っ鼻、それに女形おやまにしても似合いそうな小型の唇が、はなれ小僧から大人に脱皮しかけた少年を、微妙に変化させている。
 父親の近藤ひろしは都内でも二十人ほどしかいない『鍵師』だ。正業は鍋やフライパン、包丁、合鍵などを売る『近藤金物店』を経営しているが、しばしば店を留守にする。
 それはマルサのせんぺいとして、警視庁の捜査官や裁判所の役人に同行して、犯罪者の家宅捜査に協力しているからだ。厳重なドアの鍵や秘密金庫を開錠してしまう並外れたわざを持っている。
 父親の夢は一人息子の翼を、自分に負けない『鍵師』にすることだった。学校なんかは義務教育だけで充分だ。鍵師の訓練のために、優秀なわざがいる外国で修業してこい。そのためにかかる費用は全部出してやると、晩酌の酔いがまわってくると、しつこいほど同じ言葉を繰りかえした。
 父親の仕事をけいの目で眺め、尊敬し、一流の鍵師になってやろうと心に決めたのは、中学校の一年生のときだった。以来三年間余、翼は耳かきや針がねのような金具で、ドアや簡単な金庫の鍵はたちまちのうちに開錠してしまう技術を習得していた。
 母親のさくらは、翼が五歳のとききゅうせいした。
 父一人、子一人で育ってきた環境にしては、翼はたくましく成長してきた。身長はあと一センチで百八十センチになる。体重は六十五キロ。
 こうした外見上の変化だけではなく、翼を心身共に成長させているもう一つの要因に、女性体験があった。
 童貞喪失は中学校三年、十四歳の夏だった。同級生のやましろの姉、おりの肉体によって、「奪われた」。喪失の時間は三十秒とかからなかった。
 香織のなかに挿入した瞬間、チンポコの根元に激しい噴射感を覚えた。ふぐりから幹の根元にかけて、びくっとうずいた。幹の中央にしびれを伴った流れが突きぬけ、筒先からやわやわの肉に向かって、得体の知れない濁流が砕け飛んだ。
 その後わずか半年間の間に、翼は七人の女性と交じりあった。中学時代の音楽担当の先生、図書館で働いている女性事務員、人妻、はたまた英語塾で知りあったフィリピーナ……。
 童貞を喪失するまで、女体の神秘を想像させたのは、エッチ週刊誌などのヌード・グラビアだった。黒々と生い茂る陰毛の下側は、いったいどんな構造になっているのだろうかと。
 他人の目をかすめてエッチ本を盗み見していると、意識もなくチンポコが膨張した。跳ねあがった自分の肉の幹を覗きこみ、「こんなに膨れてしまったものが入ってしまうほど、女の人の黒い毛の下には、でっかい空洞があるのだろうか」と、一人考えあぐねた。
 女性は昂奮すると、複雑な肉がよじれ合う膣の奥底から、オイルのようなねばねばの粘液が噴きもれてきて、男の肉を迎える態勢を作るのだと知ったのは、童貞喪失の、そのときだった。
 山城香織のその穴に、翼の張りつめた肉の幹は苦もなくぬめり込んでいったからだ。
 ぬれぬれの膣と鋼鉄のように張りつめた肉の幹が摩擦しあい、眩暈めまいするような快感が走りぬけ、そうして激しく噴射した。
 それが性行為だった。
 不思議だったのは、女性たちは翼の手を握りしめるだけで、頬を赤らめ、からだを震わせ、冷静さを失い、身悶えすることだった。七人の女性たちは翼の前で次々と衣服を脱いでいき、そして粘液にまみれた赤い性器を、恥じらいもなくさらした。
 自分の手のひらや指先から女性の官能神経を昂ぶらせる、ある種の電気が発せられていることを知ったのは、数人の女性と交じりあってからだった。
 人間の躯には電気が貯蔵されている。
 乾燥しているとき、車のドアなどをさわると、ピリッとする静電気が走る。そんな電気が知らない間に放電されていて、女体を昂ぶらせていくのだろうかと、恥じらいと昂奮の中で全裸になっていく女性たちの恥態を、不思議を見るように眺めていた。
 むずかしい鍵を開錠するのと同じように、女性の神秘の扉を開いていくごとに、翼は自分自身が大人に成長していくことに気付いた。
 扉の奥は、それぞれの女性によって小さな変化があった。色、形、匂い、うねり……。肉の幹を埋めこむと、筒先を締めつけてくるもの、根元に強く巻きついてくるもの、はたまた全体にうねうねと粘りついてくるもの……、それは七人七様だった。
(もっとむずかしい秘密の扉もあるはずだ)
 翼はそう考えはじめていた。
 同じ金庫でもダイヤル式の鍵はまだ手に負えない。父親の作業を見様見真似でやってみるが、一度も開錠したことがない。神秘の扉もダイヤル式のように頑丈で、むずかしい鍵を掛けている女性もいるはずだ。
 挑戦して結果が出たとき、さらなる満足感を得られるはずだ。
 都立高校に無事進学して、翼は新たな野望に燃えていることに気付いた…。


 
 
 
 
〜〜『陽 炎』(末廣圭)〜〜
 
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