官能小説販売サイト 北山悦史 『義姉 美肉の匂い』
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北山悦史     美肉の匂い

目 次
第一章 蜜肌の淫惑
第二章 義姉の甘指
第三章 生色の肉襞
第四章 相互の喜悦
第五章 密室の口淫
第六章 禁断の悦楽

(C)Etsushi Kitayama

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 第一章 蜜肌の淫惑

     1

 夕方になると急に風もひんやりと感じられるようになった十月、病院を出たときはまだ日も残っていたが、五分も走るととっぷりと暮れ、車はライトをつけている。
 公立中学で英語教師をしている義姉のすみが運転する車だった。女の芳香がほのかに漂ってくるその助手席で、北条真人は掻きむしりたいぐらいに胸を高鳴らせていた。
 兄の研矢が入院している私立総合病院からの帰りだった。池袋にオフィスのある建設機器販売・リース会社に勤めている研矢は昨夜、遅くなった営業から会社に戻る途中で事故にあった。一時停止を怠った車に左から突っ込まれ、同僚が運転していて助手席に乗っていた研矢は左脚を骨折したのだった。
 事故にあったのは府中市から小金井市に入ってすぐのところで、研矢は救急車で小金井のその病院に運び込まれた。夜、美純が病院から家に電話をかけてきて真人たちは事故のことを知ったのだが、脚を骨折しただけであとは大丈夫ということで、見舞いは明日、と父と母は決めた。電話してきた美純も、もう家に帰る、と言っていた。
 真人たちが住んでいる東村山市の家から美純たちの住んでいる西東京市のマンションまで私鉄で五駅離れているが、病院は美純たちのところから車で三十分ちょっとの距離ということだった。車でなら家から一時間ぐらいかと、父と母は話していた。
 真人は国立市にある高校から直接見舞いに来た。真人が来たときすでに、武蔵野市の中学校にマイカー通勤している美純は来ていた。母の紫織は午前中に来て、渋谷の商社で取締役部長というポストにいる父の健介は午後、仕事の合間に顔を見せたと、二人部屋で左脚を吊っている研矢は隣の患者に気兼ねするような口ぶりで話した。
 運転していた同僚は無傷だったということだが、その同僚はむろんのこと、他の同僚たちが一日中、病室を出入りしていたらしい。研矢の枕元には花や果物類がところ狭しと並んでいた。昨夜美純が電話で言っていたとおり研矢は骨折以外別状はないということで、真人の目にもいつものスポーツマンの顔と違いなく見えた。
 研矢が意外と元気だということもあるだろうが、病室にいるときから真人は心浮き立つものを覚えていた。美純は車で来ている。当然、帰りは駅まで送っていくと言うだろう。うまくいけば家まで送っていくと言われるのではないかと、真人は胸を熱くしていたのだった。
(美純さんとドライブ……)
 そう思うだけで、胃のあたりがキューンと絞り込まれるような期待感と興奮に襲われた。美純のマンションで毎週、肩と肩が触れ合う近さで英語の勉強を見てもらっている。時に、甘く切ない息がかかることもある。だが、二人きりで車に乗ったことはなかった。
 真人がわななくほど胸をときめかせていたのは、二人きりで車に乗る、ということだけではなく、病室にいるときに美純が言ったことを具体的に訊いてみたいと思っていたからだった。
 骨折の話をしていたとき、自分も脚を折ったことがあると美純は真人に言ったのだ。そのことは真人が見舞いに行く前にも言っていたらしく、研矢は話に乗ってくるそぶりを見せなかったし、美純もそれ以上のことを言わなかった。
 真人が訊けば美純は具体的なことを答えてくれたかもしれない。だが真人は訊くことができなかった。脚の骨折といってもいろいろある。ずっと股に近いところとか。もしそうだったら美純は美純で答えづらいのではないかと真人は思ったし、自分がいやらしいことを考えていると美純や研矢に勘ぐられてしまうのではないかと思ったからだった。憧れの義姉にふだんやましい思いをいだいているのでなおさら、訊くことはできなかった。
 しかし、車で二人きりということになれば事情は違う。脚を折ったと言っていたがどこを折ったのかと、世間話でもするみたいにしてさりげなく訊くことができるだろう。そんな思いもあって、そろそろ帰ろうかと美純が言うのを、真人は今か今かと待っていたのだった。
 だから研矢が、もうすぐ夕食の時間のはずだと言ったときには真人は心ときめき、美純が、そろそろ帰ろうか、駅まで送っていく、と言ったときには、ヤッタと手を打った。しかし車に乗ってから、特大の喜びが襲いかかってきたのだった。
「せっかくだから今日、勉強していく?」
 日没間近の赤い日を浴びた美貌の義姉はそう言ったのだ。どうせ帰っても、あたし一人だし、と。
 今日、木曜は、勉強を教わる日ではなかった。今週は火曜日に教わった。試験が近づいているときなどは週に二回教わったりもしているが、普通は火曜か水曜に教わっている。
 真人は、とたんにドキドキしはじめた胸を抑え込み、じゃあ、お願いします、と言って頭を下げた。今日は英語の授業はなかったが、真人用のテキストは美純のところに置いてあった。
(うううっ! 美純さんとマンションで二人っきり。兄貴は帰ってこない!)
 昔からよく面倒を見てもらっている研矢に悪い、という気がしなくはなかったが、こんなことでもなければ美純と二人きりで過ごせることもないんだからと、真人は武者震いした。
 真人が美純に英語を見てもらうようになったのは今年、二年に上がってからのことだった。研矢と美純が結婚したのはちょうど一年前だ。結婚する前から研矢は美純を家に連れてきていて、美純が中学の英語教師だということはもちろん知っていたが、そのころも結婚してからも、真人は決して得意ではない英語を美純に見てもらったことはなかった。
 そんなこと、考えもしなかった。研矢と、北海道の大学で低温物理を勉強している次兄の敏樹との三人兄弟の末っ子として育った真人は、美人の義姉を持ったことで十分すぎるくらいだった。真人には、研矢と同じ八つ年上の美純は、熟した大人でもあり天使でもあった。そんな美純がいつでも会えるところに住んでいるということだけで、あとは何も望まないというぐらい満足していたのだ。
 そんな真人に美純が文字どおり密着するようになったのは、母の紫織の言葉がきっかけだった。
 新学期が始まってまもなく、研矢と美純が真人の家に遊びに来ていたときのことだった。美純が学校のことを真人に訊いた。真人は、勉強の内容ががぜん難しくなったと答えた。そばにいた紫織が、もっと近くに住んでいれば、美純に英語を教わることができるのに、と言った。
 美純が、こんなに近いではないか。真人さえよかったらいつでも見てやる、と真人にふくよかな笑顔を向けながら応えた。真人は、憧れの義姉と肩寄せ合って勉強ができるのかと幸せに気が遠くなる思いがし、胸が大きく膨らんだ。
(今日はいつもと違うぞ。兄貴は帰ってこない。美純さんと二人っきり!)
 ちらほらと灯りはじめた街のネオンにメガネを光らせて運転している美純を、真人は熱く横目で見た。
 生まれ育ちが金沢という美純は、どこもかしこも抜けるような色の白さをしている。
 東京の大学に入ったのは一度は東京で暮らしてみたいと思っていたからで、永住するつもりはなく、一人っ子ということもあって、Uターン就職をして金沢に帰るつもりだったという。それが、四年間の学生生活ですっかり東京が好きになり、郷里に戻る気持ちがなくなった。
 教育学部を出た美純は両親の反対を押し切り、東京の教員採用試験を受けた。ところが少子化と教員余りで門は狭く、不合格になった。美純は翌年も試験を受けるつもりでファミレスのバイトなどをして一年間を過ごした。
 度重なる両親からの呼び戻しの話もあり、その一年の間には何度か郷里に戻ろうかとも思った。が、やはり東京の空気が好きでその決断はつかず、結局二年目にまた試験を受けて合格し、採用になったのだった。
 教師になったその年に大学時代の友人を通じて研矢と知り合い、その翌年――去年のことだが――結婚した美純は、しっとりとしたもち肌をした、都会好きではあるのだろうがいかにも北国の情感を漂わせた女だった。
 ぽってりとしたいくぶん面長の顔に近視のメガネをかけている。小さめの玉、シルバーフレームのメガネが、色の白いその顔にとてもよく似合っている。
 体全体が肉厚で、丸っこい肩に軽やかなブラウンに染めたロングシャギーの髪がかかっている。身長は百五十八センチだという。バストは聞いていないが、九十センチはあるだろうと真人は見ている。
 鼻はすっと走り、唇はややすぼまった感じで、上下とも中央部がぷくっとしている。つややかなメゾソプラノで英語を発音をするとき、その唇は身震いするぐらいの色っぽさを見せる。プライベートではけっこうハデめのルージュを引き、光りもの系のピアスをしているが、今は目立たないピンクのルージュを引いていて、ピアスもつけていない。
「そうね。お義母さんに電話しておいたほうがいいわね。ケータイ、持ってるわよね」
 差し込んできたネオンに、メガネと、割れた髪の間にゴールドのピアスを光らせて美純が言った。
 真人は制服のブレザーのポケットからケータイを取り出し、美純のところで勉強していく旨、母に電話した。努めて冷静な声でしゃべった。胸の高鳴りを、母にというより美純に悟られたくなかった。
 途中でマックに寄って二人分のハンバーガーとポテト、それに一人分のコーラを買い、マンションに向かった。


 
 
 
 
〜〜『義姉 美肉の匂い』(北山悦史)〜〜
 
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