官能小説販売サイト 末廣圭 『秘  炎』
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末廣 圭      えん

目 次
プロローグ
第一章 夕暮れの海
第二章 初めての絶頂
第三章 監禁されていたひと
第四章 頑固者
第五章 だまし合い
第六章 しっの炎
第七章 三枚の写真
第八章 かんまがい
第九章 再 会

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   プロローグ

 東京・練馬にある都立高校に通う一人の少年がいる。
 中学校一年になったころから、雨後のタケノコのように背が伸び始めた。高校二年になった今、正確には百八十センチに一センチ足りない背高ノッポに成長した。
 こんどうつばさ、十六歳……。
 性格は大人しく、背丈の割に高校では目立たない存在の生徒だ。
 学校の成績にはとんちゃくだし、クラブ活動もしていない。だからと言って陰気な性格ではない。物事にあくせくこだわらない少年に成長していると表現したらいいのだろうか。
 それは、近藤翼には将来の目標がきっちり決まっているからだ。
『鍵師』だ。
 父親の近藤ひろしは、東京都内でも二十人ほどしかいない一流の『鍵師』だ。警視庁の捜査官や裁判所の役人と同行し、捜査の手助けをする。犯罪者の家のドアや金庫の鍵を、鍵師の七つ道具を駆使し、またたく間に開錠する神業的技術を備えている。
 俺の跡を継いで鍵師になれ……。父親にそうさとされたのは、翼が中学校一年に進学したときだった。
 父親の使い古した耳かきのような金具を使い、見よう見真似で開錠の訓練を始めたのは、そのときからだった。
 ひまを見ては、なんきんじょうや金庫の鍵穴に金具を差しこみ、訓練に励んだ。四年以上を経過した今、父親に負けないスピードで、ほとんどの鍵を苦もなく開けてしまう技術を身につけた。
 父親譲りの手先の器用さに恵まれ、翼は『鍵師』としての素養を開花させ始めている。
 そうした環境が、物事にこだわらない少年に成長させている要因とも考えられる。大学受験や就職のことも考えない。ただひたすら、将来の目的に向かってまいしんしている。
『鍵師』の訓練は思いがけないところで、翼に人生の発見、男のよろこびを与えたことも見逃せない。
 それはうるわしい女体の謎に迫ることができたことだ。翼の童貞喪失は中学校の三年だった。旅行バッグの鍵を紛失した女性に、童貞を奪われた。旅行バッグの鍵を開けてあげたごほうとして彼女は、翼の前にからだを開いた。
 挿入して数秒もしないで翼は果てた。
 そのことはエッチ週刊誌などのヌード・グラビアでマスターベーションふけった快感の、数倍の快楽を翼に与えた。
 それ以後巡り合った女性たちは、鋭敏に仕上がった翼の指先の愛撫に身悶えし、陶酔の世界に埋没していった。
 セックスとは男が噴射するのと同時に、相手の女性を満足させなければならない行為だと知ったのは、高校に入ってからだった。
 極論すれば『鍵師』の技術がなかったら、これほど多彩な女性と巡り合っていなかっただろうという実感もある。
 母親のさくらは翼が五歳の折、きゅうせいした。
 父親との二人暮らしにもいじけることなく、素直で純粋に育ってきたのは、翼が目の前に次々と現れた女性たちに優しくはぐくまれ、自然のうちに、大人の男に向かって脱皮しかけようとしているからに他ならない。
 翼、十六歳の夏……。
 彼は新しい体験の予感をいだきながら、さらに大きく羽ばたこうとしている。


 
 
 
 
〜〜『秘  炎』(末廣圭)〜〜
 
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