官能小説販売サイト 末廣圭 『蒼い夢』
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末廣 圭    あおゆめ

目 次
第一章 智美の結婚
第二章 十四歳の目覚め
第三章 昔の恋人
第四章 落 差
第五章 お母さんの友達
第六章 初めて見る裸
第七章 隠されていたパンティ
第八章 歯医者での出来事
第九章 義母のうる

(C)Kei Suehiro

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 第一章 智美の結婚

 淡いクリーム色に統一された浴室のタイルの壁に、幾筋もの水滴が流れていく。その水滴の流れの音が聞こえてきそうなほど静まり返った静寂に、ともはふっとうつろな目を開けた。
 バスタブに伸ばした白い裸身が屈折して見えた。青白い照明がまぶしい。
(いやだわ、眠ってしまったのかしら)
 時間の経過を忘れている。
 一週間に一度の割合で智美は、一人湯を愉しむ時間を与えられていた。いや、与えられているというより、夫の仕事が一週間に一度だけ夜勤があり、のんびりと長湯を決めこんでいると言ったほうが適切かもしれない。
 バスタブのふちに置いてある手鏡を手にした。湯煙で曇っている鏡を指先でぬぐった。顔に近付ける。長湯でった顔を映した。
(まだ若いじゃない……)
 化粧をしている顔より、ほんのり色付いたスッピンのほうが自分に似合っていると思っている。
 目をまばたかせる。
 自分の顔で、たった一つ気にしているところがある。目尻がわずかに吊りあがっているところだ。気位が高そうに見えると言われたこともあった。
 顔を大写しにし、指先で目尻を垂らしてみる。
(しょうがないでしょう、親からもらった顔なんだから……)
 指を離すと、大きなひとみは小生意気そうに吊りあがった。
(これでも、結構もてたこともあったのよ)
 ちょうど三十歳になったところだが、じわもないし、鼻筋も整っている。唇も可愛くまとまっているじゃないの。
 持っていた手鏡を元に戻し智美は、大きく背伸びした。透き通った湯面を波立たせ、乳房がぽっかり浮きあがった。
 自然と乳房のふもとに両手が伸びた。
 裾野から揉んでいた。
 紅色に染まる小粒の乳首が、肉の盛りあがりにあおられ、ぷくっととがった。子供を生んでいない乳輪は、その部分だけ表面張力が働いているように、つやりと膨らんでいる。
 指先で乳首をつまんでみた。こりっとしこっていた。
 軽い吐息をついた。どこか気だるさを感じていたからだに、しびれるような刺激が走り抜けた。
(おかしなヤツ……)
 自分の手でさわって、感じるなんて。
 バストは八十五センチある。自分でも形のいい膨らみをしていると、密かに満足している。ブラジャーを着けるとき、まわりの肉を寄せ集めなくても、ふくよかな谷間を作ってくれるほど、肉のたるみはない。
 自分の手で乳房を揉んでも、それが快感につながることはなかった。しかし弾力のある肉のしなりが今に限って、心地よく指先に伝わってくる。
(あのひと、今ごろ何をしてるのかしら)
 ふっと頭に描き出された拍子に、乳房を揉む指先に力がこもった……。
 智美ががわせいろうと結婚して、間もなく一年になろうとしている。誠二郎は武骨で実直な男性だった。誠二郎との出会いは、渋谷の繁華街から何本か脇道に入ったところでだった。
 その日、智美は友人とショッピングを愉しんだあと、一人で家路につこうとしていた。ネオンの輝きが目につき始めた時刻だった。
 いきなり三人の男に囲まれた。
 彼らの顔を見定める余裕はなかった。
 乱暴をしてくる様子はなかったが、三人の男は智美のまわりを取り囲み、一時間だけ酒に付き合ってくれと言ってきた。身なりからすると二十歳前後の若者らしく、一人の男は安物の香水の匂いをばら撒き、髪を茶色に染めていた。
 三人から逃げ出そうと足早に歩いたが、彼らはしつように絡んできた。
 上はタンク・トップでミニスカートを穿いている自分のファッションを、智美は後悔した。年齢より若く見えてしまったようだった。
 ナンパするんだったら、もっと若いにしなさい……。智美は口にしたかったが、声は出なかった。
 男たちの包囲は執拗だった。
 持っていたバッグを胸に抱きこみ智美は、走り出そうとした。一人の男の手が、き出しになっていた腕に伸びてきた。ぞっとする悪寒が全身を駆け巡った。
 人通りが途絶えていたわけではない。
 しかし行き交う人はむしろ躯を避け、智美の苦難を見過ごしていった。見る側にすれば、仲のいいグループのたわむれに映ったのかもしれない。
 そのとき正面から歩いてきた一人の男が、無言で立ちふさがった。三人の若者とにらみ合った。男は少しくたびれた濃紺のスーツを着ていた。
 中肉中背で喧嘩に強いとも思えなかったのに、三人の若者はひるんだ。弱い女性をいじめちゃいけないな……。男は低い声で、そう言った。
 睨み合いは数秒で終わった。三人の若者は、あっと言う間に姿をくらました。怪我はありませんか……。男はひどく生真面目な顔付きになって聞いてきた。
 礼を言おうとしたのに、震えが止まらなくて、声にならなかった。気をつけてね……。男はそれだけを言い残し、足早に歩いていった。時間にすれば二、三分の出来事だった。


 
 
 
 
〜〜『蒼い夢』(末廣圭)〜〜
 
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