山口 香 密室遊戯〜誘惑の未亡人〜
目 次
第一話 未亡人の蜜液
第二話 牝犬の叫び
第三話 初心狩り
第四話 天使の淫舞
第五話 野性の天使
第六話 泣き狂う姫具
第七話 菊花わななく
第八話 蜜狂いの夜
第九話 潮吹き聖女
第十話 花芯の芽ばえ
(C)Kaoru Yamaguchi
◎ご注意
本作品の全部または一部を無断で複製、転載、改竄、公衆送信すること、および有償無償にかかわらず、本データを第三者に譲渡することを禁じます。
個人利用の目的以外での複製等の違法行為、もしくは第三者へ譲渡をしますと著作権法、その他関連法によって処罰されます。
第一話 未亡人の蜜液
1
「失礼ですが、おひとりですか?」
スーツをピッタリと着こなした四十二、三の男が近づいてきた。
先程からチラチラと視線を投げかけてきていた男である。
赤坂のホテルの地下にある高級クラブ。店内には背もたれの高いボックス席がいくつもあり、客の姿はわきを通らなければ見ることが出来ない。
壁ぎわには二十席程の楕円形のカウンターが造られ、二人のウエイターが客の注文を聞いていた。
あきほがそのカウンターに腰を下ろした時には、スツール一つ置いたところに、重役風の男と秘書風の女が水割りを飲みながら、ヒソヒソと話していた。
その二人向こう側に二人の男がいた。その一人はあきほが席に着いて十分あまりして店を出て行った。
わきの男女もまもなく抱き合うようにしていなくなった。
男が横に立った。あきほを見つめて、カウンターに片手を乗せた。
「ええ、なにか?……」
あきほも男を見た。身長は一メートル八十センチ前後だろうか、鼻筋の通った、やや頬高の、精悍な感じの男だった。年齢は三十五、六と見えた。
キリリッとネクタイを締め、ワイシャツの胸は盛り上がり、弛みやしわはなかった。
「話し相手にさせていただいてよろしいですか?」
「あたしでよろしいんですか?」
「いや、こちらから話し相手になってくださいませんか、と頼む方ですよ」
「どうぞ……」
あきほは少しだけスツールを移動した。腰を下ろしたままだったので、タイトスカート型のワンピースのすそがずれ、肉付きのよい太腿が覗いた。
男の視線が這った。しかしすぐにカウンターの中のウエイターに、
「あっ、そこのウイスキーこっちへ持ってきてっ」
と声を掛けて、あきほの隣りに腰を下ろした。
あきほは下腹部の奥深いところに、ムズムズとするものをおぼえた。
ワンピースのすそを引っぱり、軽く腰を揺すると、両肢の付け根にジーンとしびれが走った。
カウンターに置かれたキーボトルには与野木、と白マジックインキで書かれていた。
「与野木さんっておっしゃるのですか?」
「ええ、都議会議員の秘書をやっています」
男は名刺を出した。民自党の議員名の肩書きがあり、秘書、与野木亮と印刷されていた。
「あたしは堂前あきほ、といいます。よろしく……」
あきほは結婚前の姓を名のった。
「よろしければぼくのウイスキーで」
「ありがとうございます。それじゃあ、お言葉に甘えてごちそうになります」
男はウエイターにグラスを頼み、自分で水割りを作り、あきほにすすめた。
二人はグラスを合わせた。いままで飲んでいたものとちがい、とろりとした甘さが口の中に広がっていく。
「秘書ってお仕事、大変でしょうね」
「まあ、女房役みたいなものですよ。裏で議員を盛り立ててやるんですけど。さっきも他の議員の秘書と、グチをこぼし合っていたんですよ。お互いの議員をコキ下ろす感じで」
与野木は目許に笑みを浮かべ、冗談交じりの口調で言った。
「議員さんが聞いたらびっくりするようなことですか?」
「そう……女性の話しなんかもあって」
「内緒の話しですのね」
あきほも笑みを浮かべた。グラスを取り上げ、少しだけ口に含んだ。指輪そっくりのリング状のイヤリングが揺れ、頬を軽く打ってくる。
「堂前さんは、どこかのお帰りの途中なのですか?」
「あたし、ええ、先程までこの近くのお店で学生時代の友人と会ってしゃべっていましたの。でも別れた後、ちょっとこのホテルに入って地下を歩いていたら、ここに入ってみたくなって」
あきほは視線をカウンターに伏せた。与野木の好奇心に満ちてきた視線が横顔に突き刺さってきた。
与野木は水割りを一気に飲み干した。誘いの手を差しのべるべきかどうかと迷っているのがあきほにはわかった。
あきほは肢を組んだ。ワンピースのすそが少し持ち上がった。しかしあきほは気づかないふりをよそおった。
学生時代の友人と会ったというのはでまかせである。与野木の問いに、反射的に答えただけだった。
本当は今夜のベッドパートナーを探していたの。与野木さん合格だわ。
そう言ってやりたかった。しかし女の口からは誘えない。
酔いもまわってきた。下腹部でわき起こっているムズムズとした疼きは、ワギナに直接おそってきそうだった。
両肢を組みなおした瞬間、ワギナの括約筋が収縮し、太腿の付け根に電気がピリピリッ、と走った。
声が漏れそうだった。あきほはあわてて水割りを口に含んだ。
与野木は腕時計を見た。
「まだ時間ありますか?」
「ええ、別に用事はありませんわ」
「よろしければ、小一時間、お付き合いいただけませんか。さしつかえなければ、車でお送りしますけど……」
与野木はあくまでも紳士的である。議員秘書という手前、それは仕方のないことかもしれないが、彼の仮面をはがし、スケベな男そのものに戻してみたい、とあきほは思った。
「でも、よろしいんですの」
一応、ためらいの言葉と、表情を作ってみせた。
「ぼくは大感激ですよ。じゃあ、行きましょうか?」
与野木はそれまでの落ちついた感じから、突然はしゃいだ感じになった。
「あたし、ちょっとお化粧を直してきますわ」
あきほはスツールを降りた。ハンドバッグを抱え、入口わきの洗面所に入った。
鏡に映った自分の顔を見つめた。胸がキューッとしめつけられ、熱い思いがこみ上がってきた。笑みが浮かんだ。真紅の口紅から白い歯が覗き、キラリと光った。ワンピースも丸くえり許の開いた真紅に細い線の入ったものだった。
個室に入った。ショーツはしめっていた。割れ目にそって線状の染みになっていた。
与野木の顔が脳裏に浮かんできた。
「与野木さんっ……」
つぶやくと、割れ目の奥からジワリッ、としたものが漏れてきた。
あきほは女陰をつかむようにして、指先を割れ目にあて、腰を揺すった。
早く戻らなければ、与野木は不審に思うだろう。そうは思ったが、軽くオナニーしたい衝動にかられていた。
男に抱かれる前、オナニーをしておくと、後の燃え方が倍になる。あきほはこれまでの経験でそう思っていた。
指先で割れ目を開き、クリトリスをえぐり出し、三角錐の頂点をこすった。
「うっ……」
背筋に鈍い衝撃が突き上がっていった時、目の前の壁がポッーと霞がかかった。
|