官能小説販売サイト 北沢拓也 『人妻電話』
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北沢拓也    人妻電話

目 次
不倫の秘態
名器しぼり
密会の条件
性乱ダブルウェイ
指と若妻
淑女のラブジュース
キッチンの牝猫
発情実験
闇の中の人妻
淫女の証明
人妻肉乱
ささやく和服人形
窓ぎわの色情
未亡人密会秘図
白昼の淫夫人

(C)Takuya Kitazawa

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   不倫の秘態

     1

「わたし、浮気って初めてなの。処女を失うときのようにドキドキしているわ」
 テレクラ「熟女倶楽部」のオーナー、津島きょうは、杉本がニットの服を上から順に脱いでゆくのを、客室のソファ椅子に腰をおろして眺めていた。
「小娘みたいなことを言わないで下さいよ。さきにシャワー、どうです?」
「そうねえ。なら、さきにシャワー使わせてもらおうかしら」
 千絵は、黒いニットのツーピースの下には、淡いベージュのスリップであった。
 津島は、スリムな身体からだつきの千絵が下着姿になって、浴室に入って行くと、煙草をくわえた。
 窓のカーテンは二重におりてはいるが、ホテルの外はまだ明るく陽が高かった。
 杉本千絵は人妻である。ちょう三十になる。小学生の子供もいる。
 千絵がテレホンセックスによるオナニーをおぼえたのは、夫がインポテンツに陥ったからである。
 千絵が昼間、津島にテレホンセックスを頼んできたのは、平成が二年目に入って間もなくであった。
 津島は南新宿でテレクラと喫茶店を経営しているが、彼の愉しみの一つは、自分の趣味もあってこしらえたテレクラの個室にこっそりと入って、店にかかってくる女性からの電話を待つときであった。
 津島はもう四十の半ばに近いので、彼の店を利用する若者たちのように個室でマスターベーションをするなどということはめったにないが、杉本千絵との電話では、彼は自分の年齢も忘れて、ズボンのなかからひき出した硬直を思わずしごきたてていたほどだ。
 それほど杉本千絵の達するときに上げる泣き声まじりの声は悩ましかった。
 千絵との最初のテレホンセックスのときは、個室で行なったが、二度目から津島は自分の社長室の専用電話番号を彼女に教え、
「出来れば昼の一時から二時の間にかけてくれませんかね……」
 時間も指定した。
 一時から二時の間、常務の森滝が昼めしを食いに行くのを知っているからだ。
 金庫番の森滝は、オーナーである津島がときどき店の個室に入って行くのを承知してくれている。だが、まさかマスターベーションをしている姿を、社長室にちょくちょく入ってくる森滝に見せるわけにはいかなかった。
 オーナーとしての体面もある。
 で、杉本千絵から指定の時間に電話がかかってくると、津島は、社長室の入口に鍵をかけ、従業員も入れないようにして、二、三十分、千絵のオナニーにつき合ってやる。
 千絵は、津島との電話によってオルガスムスに達するが、津島は射精することはない。
 受話器を通して伝わってくる彼女の泣きじゃくりの絶頂の気配を見届けると、外気にさらしていたこわばりをしずかにズボンのなかにしまう。
 先日もそうやって、テレホンセックスをおえたあと、津島が硬直したままのものをズボンのなかにしまいながら、
「今度は本物のセックスをしませんか。イメージだけのセックスじゃああなたも物足りないでしょう?」
 水を向けてみると、
「おつき合いして下さるんですか……だったら今度の土曜の昼間、会って下さいますか? その日はわたし、高校のときの同窓会があって、家を出やすいものですから……」
 千絵はそう言い、同窓会を口実に津島と密会することを約束してくれた。
 昼下りの不倫というわけである。
 黒のセパレーツスーツに身を包んだ杉本千絵は、おとなしそうな女性であった。
 たえずうつむき加減に視線を伏せ、津島がきわどい冗談を言ったりすると、くち許に気恥ずかしそうな笑みを浮かべて、彼を甘く睨んだりする。
 細い首に飾られたパールのネックレスが地味な装いにわずかに華やぎを添えている。
 身体つきもスリムで胸も小さそうだ。
 だが、容姿のそこかしこに品と知性さえ窺えるこのおとなしそうな人妻が、性愛には好色であることを津島は知っている。
 これまでのテレホンセックスの積み重ねで、それくらいのことはわかる。
「このさきのシティホテルに部屋をとってあるんですがね……同窓会は何時からですか?」
「六時です」
「それなら五時までゆっくりできますね」
 津島が言うと、千絵は小さく頷き、頷いてから俯いてはにかむような笑いをこぼした。
 
 
 
 
〜〜『人妻電話』(北沢拓也)〜〜
 
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