北沢拓也 情事の画集
目 次
淫癖夫人
人妻乱れびらき
淑女の秘態
鴇色の発情
悦楽の振り子
貞淑夫人の快楽
牝猫の性愛図
和服のなかの眺め
痴戯と白衣と若妻と
性感ダブル不倫
(C)Takuya Kitazawa
◎ご注意
本作品の全部または一部を無断で複製、転載、改竄、公衆送信すること、および有償無償にかかわらず、本データを第三者に譲渡することを禁じます。
個人利用の目的以外での複製等の違法行為、もしくは第三者へ譲渡をしますと著作権法、その他関連法によって処罰されます。
淫癖夫人
1
「素敵なお部屋。小ざっぱりとしているけど、シックな落ち着きがあるのね」
蜜村が借りたシティホテルの部屋で二人だけになると、水原靖子はバッグを小机の上におきながら、壁ぎわのベッドから視線をそらせて、そんなことを言った。
それから、窓べりに行き、レースのカーテンを小さくめくって、眼下の昏れなずむ西新宿の街並にしばらく見入っている。
蜜村が、水原夫人との情事のために借りたこの28階の客室は、ダブルの部屋だが、広々としていて、殊に窓からの眺望が素晴らしかった。
「ここ、お高いんでしょう?」
赤い明かりが周囲のビルにまたたき始めている窓の外の暮色の彩りから視線をひいて、水原夫人は、クローゼットに脱いだ上衣やワイシャツをしまって戻ってきた蜜村にふと尋ねたりする。
「いやいや、あなたのような美女とベッドをともにできれば、三万円というここの部屋代など安いものでしてね……」
「お上手なのね」
目鼻立ちのくっきりとした端正な美貌をほころばせて、彼女は顔だけを蜜村のほうに向けて、唇許になまめいた笑いをこぼした。
「あなたも脱いでくつろいだら、どうです?」
「そうね」
蜜村は、夫人が細い腕から抜き取った明るいベージュのスーツの上衣をソファ椅子の背にかけておいて、窓べりに寄って行った。水原夫人のすんなりとした身体を背後から自分の裸の胸に包みこむようにして、抱き締めた。
シニョンに結った髪と襟足には、良質の香水の匂いが漂っていた。
夫人はスーツの下は、黒のセーターだった。
前にまわした両手で、そのカシミヤの黒のセーターの上から、彼女の胸の双のふくらみを揉みさする。
「外から見られたら、どうするの?」
水原夫人は、くすぐったそうに笑い、顔を軽く後ろに振り向けて、気恥ずかしそうに彼をなじったが、かといって、カーテンを引いたりはしなかった。
蜜村は、夫人の細く頼りなげなうなじに唇を押しあてながら、彼女の胸のふくらみをにぎりしめるようにして、揉みたてた。
細いうめきが夫人の口から洩れ、おとがいがもちあがり、喉もとが反った。
水原夫人は、銀座で画廊をやっている蜜村明が、つき合いを重ねている仁和多美子からの紹介であった。
仁和多美子と京橋の中華料理店でめしを食ったとき、同窓会の帰りだという多美子につき合わされたのが、水原夫人だった。
「こちら、水原靖子さん、わたしと同じ三十一よ。このひとね、おとなしそうにとり澄ましているけど、けっこう男好きで助平なのよ。蜜村さんなんか、彼女のタイプよ、きっと」
「いやあねえ、初めてお会いするかたに……多美子ったら」
水原夫人は、はにかみ笑いをこぼして、しきりに仁和多美子に向かって、手を挙げている。
「でも無理もないのよ。このひとのご主人、ずっと広島支店でしょう、子供もいないし、浮気ぐらいしないとやってられないわよねえ。蜜村さん、どう? 不倫の相手でもしてあげたら」
「もう多美子ったら。……蜜村さんに失礼よ。わたし、恥ずかしいわ」
水原靖子は、女友だちを睨みながら、ふと、正面の蜜村には媚のある濡れたようなまなざしを送ってきた。
蜜村も、垢抜けた雰囲気の水原夫人には興味をもったが、多美子の手前、露骨に誘うわけにもいかず、そのときは名刺だけを渡して別れた。
その水原靖子から画廊のほうに電話がかかってきたのは、それから数日後だったが、いま蜜村は、水原夫人の弾力のある乳房の感触を、両のたなごころに感じとりながら、多美子がベッドのなかで洩らした言葉を思い出していた。
「彼女、わりと露出性欲があるのよね」
その多美子の言葉を彼は、頭に甦らせて、セーターのなかでたわわに弾む夫人の胸を揉む手に、さらに力を込めた。
「だめよ、こんなところで……」
水原夫人は、蜜村の手に両手を重ねて、拗ねたような言いかたをするのだが、だからといって、彼の双の手を、自分のセーターの胸からふりほどこうとはしなかった。
蜜村は、もしかしたら夫人は、セーターの下にブラジャーなどつけてはいないのかもしれないと思った。
なぜなら、彼の指にはっきりと、夫人の尖り始めた乳首の感触が伝わってくるからである。
「どうです、この場でバックから一発というのは?」
蜜村は、夫人の耳許に囁きかけてみた。
水原夫人のなめらかな喉もとがひくひくとわななくのがわかった。
「いやらしいわ、蜜村さんって」
「外から見られるかもしれないけれど、刺激的だとは思いませんか? ぼくはね、ベッド以外の場所で奥さんのような魅力的なかたとおま×こするのが、わりと好きな男でしてね」
「下品ね」
「下品で、いやらしい中年男なんですよ、ぼくは――」
蜜村は、囁きかけながら、夫人のスカートのたおやかな腰を撫でさすっていた。
「ここで丸裸になって、一発というのはどうです?」
水原夫人のまろみを帯びた腰にさざ波のような震えが走るのがわかった。
「いやよ、そんな。わたし、蜜村さんとおつき合いするんじゃなかったわ」
拗ねるような声に甘さがこもり、蜜村の腕のなかで夫人の細身の身体が不意に柔らかくくねった。
蜜村は、夫人の顔を身体ごと自分のほうに向けさせ、仰向けさせたその顔に自分の顔を被せるようにして、唇を奪った。
彼女は拒まなかった。ルージュの唇を蜜村に吸わせておいて、悩ましく鼻息を吐きながら、ゆっくりとくずおれるように男の足許に踞った。
白い指が、蜜村のベルトをはずし、彼のスラックスをその下のブリーフごと引きおろした。
蜜村は、水原夫人の胸をセーターの上からまさぐったときから、勃起していたが、彼はその隆々と勃起したものを、夫人の指によって、すっかり外気に晒されていた。
|