藤 まち子   不倫のしずく 
 
目 次 
第一話 娼婦になりたい 
第二話 新妻のスカート 
第三話 肉色の旅路 
第四話 交換不倫 
第五話 愛汁テレフォン 
第六話 他人の女房 
第七話 海辺の浮気妻 
第八話 変態ごっこ 
第九話 よがり美人妻 
第十話 日替わりペニス 
第十一話 雨の夜の密会 
 
(C)Machiko Fuji 
 
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   第一話 娼婦になりたい 
 
     1 いけない人妻 
 
「待ってる。いいの、遅くなっても。きて……」 
 舞衣子は、電話の白いコードをくりくりと指に絡めながら、囁いていた。 
「待ってるのって、好き。その間に、あなたへの想いが、どんどんふくらむんですもの」 
 仕事中である相手は、 
「はッ、かしこまりました」 
 などと、まわりの目を気にして、よそゆきの声を出している。 
「もう一人の方は、ご在宅ですか?」 
「亭主? ウウン、いないわ。出張よ。名古屋にいってるの、明日の夜まで、帰らない」 
 きっと、相手は、ひたいの汗をぬぐっているのだろう。 
「それでは、お約束の日に、おうかがいいたします」 
 裏返った声で、電話を切った。 
 ゆっくりと、送話器をもどした舞衣子は、 
〃フフフフフ……あの、あわてよう〃 
 含み歩きながら、ベランダにいって、干しておいた洗濯物を、室内に取りこみ始める。タオルに手を当ててみると、冷たかった。 
〃もっと早く、取りこめばよかったかしら〃 
 町には、夜に替わる前の、微妙な紫色の翳が、流れている。 
 この紫色の翳が、だんだん濃くなって、夜になる。 
 そうしたら……。 
 舞衣子は、待つのが好きだった。 
 男を待つうちに、どんどん想像が広がって発酵し、淫らな女に変身するのだ。 
 夜気を遮断するために、カーテンを引く。 
 深夜、男を待ちながら、マニュキュアをぬる舞衣子は、 
〃こちらの方から、フェラチオをしかけて、驚かしてやろうかしら……〃 
〃悲鳴をあげるまで、しゃぶりぬいてやりたいわ〃 
〃女体を見せる体位でセックスすると、男は目に刺激を受けて早く到達するっていうけど、本当かしら……〃 
 様々な妄想に、胸を焦がしていた。 
 時計の音だけが響く部屋――。 
 舞衣子にとって、待つことは、一種のペッティングになっているのかも、知れない。 
〃ああ、もう十一時だわ。彼は、くるのかしら、こないのかしら……〃 
 考えているうちに、不安に苛まれ、鼓動が高なってくる。 
 スリルが、舞衣子を鋭敏で、興奮しやすい女にしあげている。 
 乳首の先が勝手に屹立して、ツーンと痛くなる。 
 パンティのよじれが当たって、クリトリスが充血する。 
〃私って、いけない、女……〃 
 すっかり舞衣子は、ヒロイン気分だ。 
 夫の出張中に、他の男を引き入れる。 
 スリルに酔い昂ぶって、男が訪れる前に、オナニーしてしまうことも、たびたびだった。 
 深夜の十二時半――。 
 待ちかねる舞衣子の耳に、ドアのノブがまわる音がした。 
〃せっかちね。女一人いる部屋なのよ。鍵が掛かってないわけ、ないじゃない〃 
 ついで、あたりをはばかるように小さく、 
 トン、トン。 
 とノックする音。 
「どなた?」 
 意地悪く、舞衣子は訊ねた。 
「どなたもないもんだろう、自分で呼んどいて」 
 と、男の声。 
「念のために」 
「中川哲夫。三十七歳。これでいいか?」 
「いいわよ」 
 笑いながら舞衣子は、扉をあける。 
「スゲエ格好だなア」 
 中川は、息を飲んだ。 
 舞衣子は、スケスケの長いネグリジェを着て、ノーブラ。 
 スパンコールでししゅうした蘭の花が股間に妖しく輝いた真紅のパンティ。 
 ――という装いなのだ。 
 おそらく、中川の妻がそんな姿で寝室に入ってきたとしたら、 
「おいおい、かんべんしてくれよ」 
 舌打ちして、目をそむけたかも、知れない。 
 だが、舞衣子は、他人の女房。 
 しかも、大学時代は、サークルのマドンナ的存在で、中川も熱くせつない片思いに、身をもんだ一人なのだ。 
 同じサークルにいた男と結婚し、今は外国資本の会社の、エリートサラリーマン課長の妻として、高層マンションで生活している。 
「まったく驚いたよ。あのおとなしい君が、こういう女になるとは」 
「それ、皮肉なの?」 
「いや、ほめてるんだ。学生時代より、ずっとセクシーになった」 
 中川も、いっ時の遊びだと思うから、甘い言葉をおしまない。 
「だけど、どうして俺なんかを、相手に選んだのだ」 
 心底不思議そうに、彼はいった。 
 中川と偶然再会したのは、繁華街のティールームである。高校時代には、ラグビーマンだった彼は、人妻の舞衣子の目に、男っぽく映った。 
 ホテルに行き、セックスしてみると、なかなか強い。 
 長時間、射精をこらえることができる。 
「あなた、タフなんですもの……」 
 妖艶な瞳で、すくい上げるように、中川を見つめた舞衣子は、 
「ねえ、私、待っている間に、たまんなくなって、一人でオナニーしちゃった」 
 ネグリジェをまくり上げて、スンナリとした下肢を見せ、ついで、真紅のパンティを引き下げた。 
 パイナップルのような匂いが、芳醇に漂う。 
 舞衣子の淫唇は、肥大していた。 
 なかの、紫色にふくれた小淫唇が、濃い茶色の性具を、飲みこんでいる。 
 二センチあまりの幹が、しっかり除いていた。 
「これ、ここに挟んで、あなたの顔とかキスとか思い浮かべながら乳首をもんでたら、もう三回ほど、イッちゃったの。フフフ」 
 舞衣子は、腰をくねらせる。 
 性具の幹には、白っぽいノリ状の蜜が、伝い流れていた。 
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