山口 香 白衣の謝肉祭
目 次
白衣の天使
熟女の蜜液
秘書のしずく
狂乱未亡人
モデルの欲情
女医の下半身
美少女の果肉
個室の密事
美人歌手のマル秘
女ざかりの肉交
巨乳の愛欲
鶯の谷渡り
(C)Kaoru Yamaguchi
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白衣の天使
1
天馬総合病院の一階受付フロアは、午前中は外来患者でごった返している。
事務局長の山中夏彦をはじめとする、総勢十六名の事務局員は休むひまもないありさまだった。
午前十一時。受付締め切り時間をすぎると患者の波も少しずつ引いてくる。
救急車がサイレンとともに玄関口に横付けされると、待ちかまえていたように看護婦たちが救急車に走り寄った。
待合フロアのソファに腰を下ろしていた老若男女が、立ち上がるようにして玄関口に視線を投げかけた。好奇心と不安感の入り交じった目でガラスドアの外を見つめた。
患者が担架に乗せられて運ばれてくる。交通事故による負傷患者であった。すでに十分ほど前に連絡が入り、手術の用意がなされていた。
事務局員たちも、いっせいに担架に横たわっている男性を見た。
一階受付フロアに緊張が走る。話し合っていた待合フロアの患者たちも口を閉じた。空気が凍りついたようにピーンと張りつめた。
事務局長の山中は椅子から立ち上がると受付カウンターを出た。
負傷患者はサラリーマンで、歩行中に大学生の運転する乗用車に撥ねられたということだった。
生命に別状はないが、外傷による出血が激しくて、骨折の疑いもあるらしかった。
負傷患者はエレベーターに乗せられて、二階の外科手術室に運ばれていった。
フロアの緊張が解けた。患者たちのヒソヒソ話がどこからともなくわき起こった。山中は救急隊員に、
「ご苦労さまです。生命に別状なくてよかったですね」
と言って書類を受け取り、受付窓口の女性事務員に手渡した。
「ええ、でも出血がひどくてね、脚を骨折していまして……」
「撥ねたのは大学生とか?」
「免許を取りたての女子大生とかいうことです。かわいそうにオロオロしていましたよ。いま警察が調べていますから。それじゃあ、わたしたちはこれで」
判を押した書類を受け取ると、救急隊員は救急車に戻って行った。
「ちょっとひと息入れてくるから」
山中は受付窓口の女性事務員に声をかけると、フロアを横切って裏庭に出た。
裏庭には樹木が植えられて、その間に遊歩道が造られていた。その遊歩道のところどころにベンチが配置してあった。散歩を楽しんでいる患者とその家族、看護婦に付き添われて杖を突きながら歩いている老人男性患者などが行き交っていた。
山中は白亜の館を見上げながら、両手を高々とバンザイのかっこうに持ち上げて、大きなあくびをもらした。
十階建ての総合病院である。二カ月前に外壁を塗り替えたので、真っ白であった。その白壁に初春の陽射しがあたって、キラキラと輝いていた。
一階が受付関係のフロア、二階、三階が各診察室になっており、四階以上が病棟になっていた。
病棟の窓がズラリと並んでいる。陽気があたたかいせいか窓を開いている部屋もあった。
山中はベンチに腰を下ろした。後頭部から首、肩にかけて重苦しい感じである。手刀で首の後ろをたたいてから指先でグイグイと押した。
看護婦が小走りに近づいてきた。
「山中さん……またさぼっているの?」
戸田奈保子である。二年前に他の病院からこの天馬総合病院に移ってきた。二十四歳になる看護婦であった。
「おいおい奈保子ちゃん、さぼっているはないだろう」
山中と奈保子は愛人同士である。もちろん病院内部の人間には秘密である。山中には妻と二人の子供がある。つまり奈保子との関係は不倫だった。
奈保子は産婦人科の看護婦で、現代的な明るい娘であった。
『赤ちゃんってあたし大好き。結婚したらどんどん赤ちゃん産んじゃうわ』
転院したてのころ、奈保子はそう言ってニッコリと笑った。その笑顔が山中の欲情をくすぐった。
彼女をあそび相手にしたい。なんとか彼女の肉体を手に入れたいという下心がわいた。
山中は奮い立った。山中は俗にいうところの下半身に人格なし、のスケベ男である。酒と女には、だらしのない性格の持ち主であった。
しかし、けっこうモテた。女をものにするにはまめにアタックした。攻めの一手である。仕事の手は抜いても女には手を抜かないのである。もちろん百発百中ではない。数打ちゃそのうち一つにはあたる。そんな面も十二分すぎるほどあった。
ちょうど一年近く前のことであった。
『仕事が終わったらめしでも食いに行こう』
下心を押し隠して誘うと、
『本当!? じゃあ、しっかりはたらいておなかペコペコにしておこう』
と彼女はいともあっさりと乗ってきた。
鮨屋でにぎりをつまみに日本酒。そして高層ホテルの最上階にある会員制のナイトパブ。アルコールと東京のネオンを散りばめた夜景に酔った奈保子を、その下の階のホテルのダブルの部屋に連れこんだのだった。
『ちゃんとしたホテルに連れこむなんて、山中事務局長さんは女殺しね。見なおしちゃったわ……ただのスケベ事務局長さんとばかり思っていたけど、表の顔と裏の顔はまったくちがっているわ』
奈保子はそう言うと積極的に山中に身をゆだねた。
彼女はすでに何人かの男を知っていた。そのために山中の愛戯にもそれなりに反応して、身をくねらせた。
それ以来、二人の関係は病院内はもちろん、山中の妻にも気づかれていなかった。
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