北沢拓也 人妻ですもの
目 次
第一章 人妻社員
第二章 密室のデート夫人
第三章 人妻あそび
第四章 美夫人くずし
第五章 女狐暗躍
第六章 しなやかな標的
第七章 人妻の指
第八章 魔性の淫火
第九章 熟女たちの唇
第十章 後ろにください
(C)Takuya Kitazawa 1997
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第一章 人妻社員
1
枕許の上のナイトライトの灯りが、ベッドの上に素っ裸で仰臥している織部太一の、天井を向いてみなぎり勃った肉根の鰓のまわりを鉛色に光らせていた。
西新宿の、ビジネス街からは少しはずれた場所に建つシティ・ホテルの一室であった。
浴室から藤野智世の使うシャワーの音が、俄雨のように聞こえていた。
シティ・ホテルといっても、ラブホテルの部屋とそう大差のないコンパクトな客室であった。
藤野智世は、織部が宣伝課の課長を務める精和電器の総務課に席をおく人妻であった。
年齢は二十八で、織部よりも三つほど若いが、結婚しているせいか、いつも大人の女の雰囲気を、中背のほっそりとした肢体に漂わせていた。
目鼻立ちの爽やかな、引き締まった頬にりりしい美しさがあるが、愛嬌のある眼の光やぽってりとした唇許に見え隠れするなまめかしい色香が、男の誘いを待っていた。
社内で織部とすれちがうとき、藤野智世は好色そうな流し眼を悪戯っぽくそそいで、微笑って織部に挨拶する。
織部は以前から触れなば落ちんといった藤野智世の態度に気づいていたが、そ知らぬふうを装っていた。
そのころ、織部には彼が勤める精和電器の和久井社長の二女である美香との縁談が進んでいたからだ。
だが、美香と結婚し、半年余りたったいまは、事情がまったく異なっていた。
美香が浮気をしたからだ。
妻の美香が浮気をしているらしいと疑いはじめたのは、織部の良人としての勘であった。
今年二十五歳になる妻が、夜の寝床で良人である織部を拒みはじめたからだ。
「だめよ、今夜は疲れているの」
けんもほろろに言い、美香はくるりと背を向けて、寝入ってしまう。
結婚してまだ一年と経たぬうちから、妻の美香は織部を拒む夜のほうが多くなった。
よほど妻の父である和久井社長に苦情を言おうかと、織部は考えたが、傲慢でワンマンな和久井社長のことだ、「夫婦のことなど、儂は知らん。自分で解決しろ」と一喝されるにきまっていた。
妻の美香には男がいるのではないかと、織部は思いはじめ、妻に対する疑心暗鬼を晴らすためにも、彼は探偵社に頼んで、美香の素行調査をやってもらった。
調査の結果は――、やはり織部が疑ったとおりであった。
探偵社の調査員の報告によれば、美香の不倫の相手は元アダルトビデオの男優で、梶井という男であるとわかった。
調査員は、美香と梶井が昼日中からラブホテルにしけこみ、ベッドで痴戯の限りを尽くしている二人の会話や妻のあられもない声まで、録音テープにおさめていた。
織部には信じられなかった。
あの虫も殺さぬおとなしい面立ちの美しい妻が、織部も聞いたことのないような泣き声を上げ、しかも禁忌の卑猥語までさかんに口にしている……。
妻の美香の淫蕩な本性を知ったとき、織部がまっさきに考えたことは、離婚であった。
だが、美香の父で社長である和久井に妻の浮気の証拠を突きつけてみたところで、娘に甘い和久井社長のことだ、「亭主のお前がだらしないからだ。良人として美香を満足させてやっているのか?」と厳しい言葉がはね返ってくるのがオチであった。
さらに、社長の和久井はこうも言うにきまっている。
「儂が胃潰瘍で血を吐いたとき、まっさきに飛んできてくれたきみには感謝している。じゃが儂も三流大学出のきみを課長にしてやった。おまけにきみが希むから、美香もくれてやった。美香と別れたいというのならそれでもいいが、儂を裏切って出世を棒に振るとしたら、お前は莫迦だ」
和久井の出方は目に見えていた。けれども、このまま美香の浮気に目をつむって、コキュのような夫婦生活を送ることも、織部には耐えられなかった。織部にもプライドというものがあるからだ。
自分も妻の美香に負けずに浮気を愉しめば、少しは気がまぎれるのではないかと、織部は考えはじめた。
目には目を、であった。
藤野智世のような遊び好きの人妻と浮気をするぶんには、妻にも社長の和久井にもばれることはあるまい、とも考えた。
相手が人妻であれば、男と女の関係が生じても、秘密は守れる。相手にも家庭というものがあり、良人に知られては困るという事情があるからだ。
離婚が許されぬかぎり、コキュのような美香との夫婦生活に甘んじて生きるか、それとも自分も周囲にわからぬように人妻との情事を愉しむか……、考えあぐねた挙句、織部は後者の道を選んだのであった。
(……もし俺の女遊びが社長に知れて、出世を棒に振るようなことになっても、それはそれでかまわない。美香に虚仮にされているより、ましだものな……)
ベッドの上で煙草を喫いながら、思案しているとき、藤野智世が素肌にバスタオルを巻いて、ベッドルームに戻ってきた。
シャワーの湯水に濡れた豊かなセミロングの髪の端を、手にしたタオルで拭いながら、織部の棍棒でも立てたようにみなぎり勃った赤黒い肉根に粘りつくような視線をちらと絡ませておいて、くすんと可笑しそうに微笑った。
「でもどういう風の吹きまわしなの? いまになってわたしを誘うなんて……、わたしはうれしいけど」
ダブルのベッドの左側に回ってきて、人妻の智世は悪戯っぽい眼で、織部の表情を探った。
「……妻の美香が元アダルトビデオの男優と遊びまわっているんだ。俺も愉しまなきゃ損だと思ってさ」
織部は喫っていた煙草をナイトテーブルの上の灰皿に裸の腕をのばして揉み消しながら、言った。
「社長令嬢の奥さんに浮気されたんで、わたしを誘ったのは、目には目をってわけ?」
可笑しそうに言いながら、智世はバスタオルをはらいとって、肉の締まった細身の裸身を、織部の前に隈なく晒した。
括れた曲線に富んだ、絖白い肢体が織部の欲情をそそる。
いや、このホテルの客室に落ち着いて、唇をむさぼり合い、智世の涼しげな目鼻立ちの貌からは想像のできぬ太い舌を吸い、その太い舌が口のなかにぬるりと滑りこんできたときから、織部は熾烈な肉の欲望に駈りたてられていた。
接吻一つとっても、智世の舌のうねりは大胆で、若い娘にはない粘りつくような技巧があった。
織部は、自身の舌の裏を滑るぬめらかな軟体動物のような智世の舌を千切れるほど強く吸いたてながら、接吻だけで股間のものをズボンに痛いほど勃起させていた。
「……妻の浮気の腹いせにきみを誘ったと言ったら、怒るか?」
白磁の陶器の器肌のようになめらかに光る智世の素肌の眺めに、眩しささえ覚えながら、織部は訊いた。
「そんなこともないわよ。課長とは前からエッチしてもいいと思っていたし、さいきんはうちのひととおま×こしても、刺激がなくなっているし……」
藤野智世は引き締まった白い頬を桜色に美しく上気させて、笑って呟きかけながら、肢からベッドに上がってくる。
社内では慎ましやかにふるまっている智世だが、裸になると、口調そのものも愕くほど露骨になった。
ベッドに上がってくるとき、ほっそりとした肢体には不釣り合いなほど豊かな肉の張りを見せる双つの乳房が重たげな揺らぎを打った。
智世はベッドに上がってくると、織部の腰のわきに横座りになり、仰向けになった男の野太くそそり勃った肉の柱に右手をのばし、赤黒い表皮の部分を白い指でひそやかにさすった。
「……こんな巨きなものをもっていて、どうして奥さまに浮気されるのかしら? 根もとのほうなんかごつごつしてて、口のなかに唾がたまってくるわ」
実際、智世はとろめいた眼の色で織部をさすりたてながら、唾を呑むような音を口のなかでたてていた。
うっすらと脂肪の乗りはじめた絖白い双の大腿部のあわいからはみ出している黒々とした性毛のかさばりが淫靡であった。
妻の美香の性毛は煙のように薄いが、智世の下腹の繁みは、箒を逆さに見せられるように濃密に繁茂していた。しかも、そのふっさりと繁った毛のむらがりには漆のような艶光りがあり、中心が曲毛をたててそよいでいた。
妻の下腹の眺めはエロティックだが、智世の黒い繁みには男の性欲を吸いこむような貪婪な猛々しさがあった。
「……きみのご亭主だって、大きいくせに」
織部は左の手をのばし、智世の白い腿からはみ出している黒い毛のむらがりを指で弄いながら、言った。
智世は白い上半身をくねらせて、
「おちんこが?」
笑い顔で訊く。
織部が頷くと、「課長ほど大きくはないわ。硬さだって、課長には負けるんじゃないかしら……」と微笑って呟きかけるように言い、不意に昂奮しきった表情をつくると、しなやかな白磁色の上半身を前屈みに、織部の腹の上に沈めてきた。
鰓をきわ立たせた亀頭部に人妻のぽってりとした朱い唇がなすりつけられ、ついで織部は智世にすっぽりと含みこまれていた。
ぶッ、ぶぐッ……と下品な頬張りの音が藤野智世の唇のなかからこぼれ、女の唇許が上下に反復の動きをくり返す。
深く降りた智世の唇許が織部を頬張りながらしりぞけられてゆくとき、織部太一の太い幹のような肉根の表皮の部分が女の唾液に磨かれ、ねたねたと赤黒く光った。
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