影村英生 情事の貴賓室
目 次
第一話 全身愛撫
第二話 性具繚乱
第三話 指戯悶絶
第四話 蜜層収縮
第五話 失禁絶頂
第六話 肛門愛姦
第七話 刺青夢幻
(C)Eisei Kagemura
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第一話 全身愛撫
1
「きょう、どうするう、行くの?」
玉利竜介が、隠れ家的なショットバー〃オアシス〃を出ると、二十三歳のOL、田中広子は、甘いカクテルの香りを口もとにただよわせ、恥ずかしそうにささやきかけた。
「行くってどこへさ、どこにいくんだ?」
「決まってるじゃない。ラブホテルよ」
広子は、ウェービーヘアをかきあげながら、目のふちに挑むようなほむらをゆらめかせ、熱っぽく見返してくる。
(彼女と付き合いだしてから、もう三カ月になるなあ)
竜介は、飯田橋に近い東五軒町の大手事務機器メーカー、ミズタ産業本社の総務課主任で、満三十歳をすぎ、いまだ独身である。
同期入社の連中が次々に係長に昇進するなかで、ぽつんと取り残されたのは、出世競争に疎く、会議などでも、ちょっと引いた感じが、上司や役員の心証を好転させなかったからである。
竜介は、女子社員がふりかえるほどハンサムではないが、七三に分けたサラサラヘア、濃い眉と、切れ長の目、ややとがった顎、色あさ黒く、足腰がつよそうな体躯をしている。
着やすそうな焦茶のスーツに、ネクタイを締め、マイペースで働いているが、竜介の高級志向をひそかに見ぬいたのは、経理課の広子だった。
このスーツや、ネクタイはアルマーニ。ワイシャツはバレンチノ。靴もメード・イン・イタリー。それらをさらりと着こなしている。
男性ファッションに疎いお局様や他のOLたちは、竜介を出世コースからはずれた男と無視しているが、広子は身嗜みひとつで、男の美意識を感じ、この人ならきちんと付き合い、ひたむきに尽くしてくれるにちがいないと思った。
ある夜、同じ階の飲み会で、隣り合わせ、広子は、
「玉利主任って、タイプね……」
と誘いかけ、ひそかに落ちあい、バーで酔ったふりをして、ラブホテルで肌を重ねたのである。
からだがなじむにつれて、広子の想像どおり竜介の性戯は、懇ろで変化に富み、持続力抜群。
控え目な外観に似げなく、抜き差しはあけすけで、野性そのものだった。
竜介がフィニッシュにかかると、広子は、
(ああ、だめっ。もうだめっ。いくっ……いっちゃう)
のけぞり、わなわなと顫え、ひくつき、ぐったりと放心したようになってしまう。
広子は、色白で、目が大きく、ぽっちゃりした顔立ちである。
やや下がり気味の眉、ちょっと上向きで丸っこい鼻、下瞼のふくらみと、ぷりっと弾む感じの唇がめだつ。
「ねえ、タクシーに乗るなら、向こう側に渡らなくっちゃあ」
甘く拗ねる広子を焦らすように、竜介は、あかるい街灯の下で、それとなく眺めやった。
プールスタジオのミニワンピース、黒紫のジャケット、黄の輪鎖模様をあしらったシャネルのスカーフ、ローズマダーの革バッグの配色は、しとやかで、おちついた雰囲気をひきたてている。
竜介は、むっちり張りつめた腰高の量感と、ストッキングごしのくるぶしの官能的なかたさをみつめ、ねっとり熱い蜜を吐きながら、なまめかしく収縮する広子の花芯を思いだし、照れくさそうに腕時計をみやった。
「まだ七時半じゃないか。広子ちゃん、一晩じゅう寝かさないからな」
ふたりは寄り添うように中之橋を渡り、すぐにタクシーを呼びとめ、
「湯島の三組坂上まで」
と一緒に乗りこんだ。
ミズタ産業の社員たちは、たいてい、津久戸町か、神楽坂を歩いて、飯田橋駅に向かうのだが、隠れ家的なショットバー〃オアシス〃は、逆方向の大曲ちかくにある。
タクシーで目白通りから外堀通りに出て、順天堂前で左折し、本郷通り、蔵前橋通りを経て、湯島のラブホテル街に着くあいだ、広子は、そっと手を伸ばし、竜介の内腿に触れた。
みるまに股間がそそり勃ってくる。
(よせよ、気づかれるぞ)
竜介は、口の動きだけでたしなめた。
(だいじょうぶ。分かりゃしないわ)
広子も、声を出さずに答えたが、バックミラーに映るふたりの不自然な動きが、運転手に分からぬはずはない。
とはいえ、気をそそられた竜介は、お返しに広子のふくらはぎをつかみ、じわじわ揉みしだきながら、ワンピースの裾をひきはぐる。
とつぜん、もじゃっとする陰毛のむらがりに触れて、
(おっ、穴あきパンストはいてる。しかもノーパン……)
一瞬、たじろいだものの、太腿のはざまをこじ開け、しんなりよじれたびらつきをくつろげると、広子は切なげに喘いだ。
竜介の指先が、あけび状のうるみの割れ口を押し、膣前庭をゆさぶりたてる。
広子は、運転手に気づかれそうなスリルで昂り、見えない尿路がプクッと膨らみ、小水が、ピュッ、と噴きだすのを感じた。
広子のなまなましいにおいを嗅ぎつけた中年運転手は、
「お客さん、もうすぐ清水坂下ですよ。坂上までのぼるんですね」
と声をかける。
「ええ、お願いします」
竜介は、三組坂をのぼりきると、〃ロワール湯島〃のネオンをみとめ、
「あ、ここでとめてください。釣銭はいりませんから」
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