由布木皓人 女教師・淫魔の教室
目 次
第一章 襲われる女教師
第二章 強姦の後遺症
第三章 少女の果肉、熟女の花肉
第四章 性臭が漂う地下倉庫
第五章 音楽室の剃毛儀式
第六章 女教師・白い恥丘
第七章 謎めいた肉の契り
第八章 女教師とプリマ・ドンナ
第九章 秘唇を慄わす屈辱体験
第十章 女教師と少年・一夜の淫行
(C)Kohjin Yuki
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第一章 襲われる女教師
名取奈緒美は、二十六歳のうら若い高校の音楽教師。学校は東京の山の手にある私立の男子高校である。比較的おとなしい生徒が多く、奈緒美が赴任して三年と四カ月の間に、事件らしい事件など一度も起きたことがなかった。
夏休みも残り三日という日になって、奈緒美にこの夏二度目の日直当番がまわってきていた。日直当番は、朝の八時二十分から午後四時まで、職員室に詰めているというのが仕事である。午前と午後に一度ずつ校内の見まわりをして、あとは外部からかかってくる電話の番をする。要するに休み中の学校内に誰かひとりの留守番役が必要なわけで、生徒が事件でも起こさない限り、それはきわめて手持ち無沙汰な仕事であった。
この日の日直は奈緒美ひとりきりだった。しかも大型の台風が接近していてクラブ活動は中止。学校には来訪者はおろか、電話一本かかってこない。職員室は、まるで乗組員の消えてしまった幽霊船のなかみたいだった。
外はすでに強風が吹き荒れ、午後には横なぐりの激しい雨がふりはじめていた。吹きすさぶ風の音ばかりが寂しげな、静かで退屈な午後だった。
奈緒美は四時に日直の仕事を終えると、職員室を出て音楽室へと向かった。ちょっとだけピアノをひいてから帰宅しようと思いたったのである。
一カ月ぶりに音楽室をのぞいてみると、案の定、黒いグランドピアノが埃で白いピアノに変身していた。音楽室は四階建校舎の一番隅の一階にある。そのうえ、北側と南側に窓があるので、密封性の高いサッシ窓でも、長い休みのあとはいつもこの有様なのである。
北側の窓からは、都会では珍しい櫟や楢などの落葉高木の雑木林の小山が見え、その一角はいつの日も、春夏秋冬の四季の変化を感じさせてくれた。春と夏には見事な緑を膨らませていた小山が、秋には寂しげな黄土色に染め変え、冬には枯れ木立の梢に雪をのせて、冷たい風が斜面を雪煙りをあげて吹きおりてくる。奈緒美は、そんな四季折々の景色を眺めながらピアノをひくのが好きだった。
ピアノの埃を綺麗に拭き終えると、北側の窓のカーテンをひとつだけ開けて、台風の様子をうかがってみた。
空には乱雲が飛び交い、風が灰色のうめき声をあげて、雑木林の小山に襲いかかっていた。木々が幹ごと大きく揺れて、ざわざわと枝葉を立ち騒がせている。雨も風も、濡れた鞭をふるうように激しさを増していた。
奈緒美は迫りくる嵐の光景を見つめながら、ピアノの前に腰をおろした。
小柄ではあるが均整のとれた肢体を、タイトなオレンジ色のワンピースがぴったりと包みこんでいた。くっきりとした二重瞼の目に、潤みがちの濡れた瞳がきらきらと輝いている。鼻筋の通った鼻は低くもなく高すぎもせず、柔らかな唇にはかすかな笑みが浮かんでいる。名取奈緒美は、誰の目にも教師にしておくのはもったいないと思わせるほどの、キュートで可憐な、見るからにやさしさのあふれた美人であった。
奈緒美はウエーブのかかった長い黒髪を耳もとからサラリと背にはらうと、白いしなやかな指を鍵盤の上で踊らせてゆく。連打された鍵盤の音が、うねるように教室のなかを駆け巡った。
音楽室は、正面玄関の廊下を左に折れた突き当たりにある。
玄関前の池から逃げだしてきた亀が、のたのたと廊下の端を這っていた。亀は大きな石亀で、床に水あとを残しながら音楽室へと向かっていた。
やっと亀が音楽室の手前まで這ってきた時、亀はそこに人の気配を感じて進むのをやめた。首を長く伸ばし、目を閉じ、また開いてあたりを見まわす。
音楽室の隣りにある準備室のドアの前で、ひとりの男がかがみこんで、なかの様子をうかがっていた。音楽室は隣りの準備室と入口は別だが、なかにドアがあって、そこからも出入りができるようになっている。男は準備室のドアの前で息をひそめて、ピアノの音が鳴りだすのを待っていたのだった。
男は亀に気づくと、そっと手を伸ばし、亀の甲羅を掴んで向きを変えた。亀は尻尾を隠して足を縮め、首を甲羅のなかに埋めて、しばらく石のようにしていた。
廊下は廃墟のなかのように静まりかえり、外の吹きすさぶ風の音だけを漂わせている。亀がまた首を出し、足を出す。そしてのたのたと玄関のほうに歩きはじめた時、静寂をうちはらうダイナミックなピアノの音が教室のなかから流れはじめた。
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