官能小説販売サイト 由紀かほる 『黒鹿の祝祭(後編)〜失われた原罪〜』
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由紀かほる   黒鹿ルシファーの祝祭(後編)〜失われた原罪〜

目次
10th stage
11th stage
12th stage
13th stage
14th stage
15th stage
16th stage
17th stage
18th stage
19th stage
エピローグ

(C)Kaoru Yuki

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   10th stage

     1

 一度で済むとは自身思ってはいなかったが、実際の性交の前に、二度も果てるとはさすがに想像していなかった。
 今、全裸で立つみずのバストを揉みながら、三度目のうねりが湧き起ころうとしていた。
「ウッ……ンッ……フウッ……ンンッ――」
 尾身のてのひらが乳房を揉みまわす音に混って、瑞樹の息づかいだけが部屋に洩れていた。
 腋の下から伸ばした両手で、尾身は徹底したじゅうりんを二つのふくらみに加えていた。
 餅をこねるように掌で押し包むと、全体を下から上へ揉み上げ、胸板に押しつけるようにして揉みまわしていくのだ。
 ゆったりとしたペースから次第にピッチを上げていく。
「ムムッ」
 瑞樹は苦悩をたたえたように、優美な眉をひそめていた。
 おぞましさと不快感は、時間がたつにつれ深くなってきていた。かつて、誰も行ったことのないほどの粘っこさとイヤラしさで、尾身は乳房を玩弄し続けていた。それがただ悪寒を呼び覚ますだけではなく、ある種の不安までを呼び起こそうとしていた。
 すでに裸になって一時間以上がたっている。その間、裸身は立ったまま、休むことなく尾身の愛撫を浴び続けていた。
 むろん、問題外の男ではあった。たしかに愛撫には技巧がはいた。が、だからと言って快感が反応するというものではなかった。
 十代の小娘ならいざ知らず、人妻としての豊かな経験が良識というもののいしずえとなって確立されていた。そして、何よりも自分に対する自信が、しっかりと根づいていた。
 にもかかわらず、不安の黒い雲は瑞樹の胸を覆いはじめていた。
 美しいピンクの乳首は、尾身の掌の中で大きく翻弄されながら、いつにない緊張感に見舞われはじめていた。
「何度イッても抱きたくなる身体だよ、奥さんのこの身体」
 うなじの脇で、尾身は熱い息づかいとともにつぶやいてくる。
 その言葉に全てが集約されているとも言えた。しかも、異様なのは、前戯と言いながら、尾身の愛撫が一カ所に固執し続けてくる点だった。
 すでに太腿と花唇が徹底的な玩弄を浴びていた。そこで感じたのはむろん、一方的な欲望に対する嫌悪感だった。
 今も、それに変りはなかった。何がどうあろうと、この尾身の掌に対してそれ以外の感覚を覚えるなど考えられなかった。
 が、悪寒と背中合わせの形で、もう一つの感覚が目を覚まそうとしていたのだ。
 まくれ加減の上唇を、瑞樹はしきりに舌先で舐めた。汗が頭皮をはじめとして、腋の下から、爪先の足指からジワジワッと滲み出していくのがわかった。
 何度となく、波が瑞樹を呑み込んでいた。
 やめて――その言葉が、つい口から洩れかけていた。
 嫌いな男に、身体を与えることが、これほど不快で耐え難い苦痛を持つものとは、さすがに予想できなかった。
「たまらない胸だよ、奥さん。こんなに揉みがいのある胸ははじめてだ、本当に、たまらない」
 心底惚れ込んだように、尾身は玩弄を続けてくる。そこには、微塵の妥協もなかった。自分が好きで好きでたまらないと言った思いが、たっぷりと込められていた。
 握力も、揉みまわすピッチも、勢いも、そして情熱も、深くなることはあっても、絶対に稀薄になるということがなかった。
 それが、知らぬ間に瑞樹を追いつめていた。
 最近はただ眼を閉じ、無視していければいいのだと思っていた。が、無視を続けるにもエネルギーが必要だということを、このときはじめて思い知らされていた。
 逃げてはいられなかった。今もし、少しでも気を緩めたら、一気に尾身につけ込まれてしまうような気がした。
 噴き出す汗と体温の上昇が、何よりの証拠と言えた。
「こうしているだけで、奥さん。またイッてしまいそうだよ」
 尾身は耳もとに息を吐きかけ、握りしめたバストをさらにこね上げ、擦り潰さんばかりにしぼりまわしてくる。
「あっ、うンッ――」
 瑞樹は思わず身慄いしていた。きっとそうなのだ。尾身はバストを揉みながら、意識の中では性交を行っていたのだ。つまり、バストの玩弄が、イコール性交なのだった。
 圧倒されそうになりながら、瑞樹は頭を振って、自分を奮い立たせた。
「はじめてもいいかい?」
「えっ?」
 瑞樹はバストから神経をそらして、肩越しにふり返った。
「オ×ンコだよ」
「――」
「オ×ンコをはじめたいんだよ」
 瑞樹は小さくおののいていた。そうだった。これから本当の性交がはじまるのだった。
「す、好きになさればいいでしょう」
「ああ、そうするよ。いよいよだ。やっと、奥さんと結ばれるときがきたんだ。うれしいよ」
 尾身はようやく右手をバストから離して、下腹へと這わした。指をヘアの奥の花唇へとすべり込ませてくる。
「あうっ」
 一瞬、瑞樹は全身をすくませていた。バストへの玩弄があまりにも長かったために、下腹のガードがつい無防備になっていた。
 しかも、すでに舌による徹底したが行われた後だけに、指に対する拒絶感が驚くほどなくなってしまっていた。
「どうしたんだね、奥さん」
「えっ――?」
「変じゃないか」
 
 
 
 
〜〜『黒鹿の祝祭(後編)〜失われた原罪〜』(由紀かほる)〜〜
 
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