鳳 春紀 人妻 梓
目 次
第一章 遭遇 下着のなかに湧く性熱
第二章 変貌 女を牝に化身させる男の指
第三章 溶解 恥裂の奥に潜む赤い真珠
第四章 嫉妬 女体が覚えた陰の愉悦
第五章 淫血 果てしなき快楽の結界
(C)Haruki Ohtori
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第一章 遭遇 下着のなかに湧く性熱
1
夫を見送り出してマンションのドアを閉めると、梓はパジャマ代わりに着ている大きめのTシャツの裾をめくって、自分の股間に指を添えた。
張り切った腰にまとわりついている薄紫の絹のパンティはすでに湿っている。
夫にその火照りを鎮めてもらいたかったのだが、とうとう言い出せなかった。
夫の清二は朝から疲れた顔で起き出して、トーストと牛乳を飲み下してそそくさと出かけて行った。もう一カ月ばかりもこうなのだ。
夜の生活も以前よりぐっと減っている。二週間に一度もあればいいほうだった。たまらなくなった梓が身をよじってねだる頃には夫は寝息を立てている。あるいは、梓の上に乗ったまま力なく寝入ってしまうのだ。
官庁勤めがひどく疲れるものだとはわかるが、夫への職業的理解だけで女の性熱がおさまるものではなかった。
マンションの鉄製のドアに背をもたせかけたまま、梓はパンティの上を指でなぞった。
前の部分は陰毛のふくらみでこんもりとしている。その中央をゆっくり押していくと、女の溝が指先にもわかるようになる。
その溝に沿って中指をおろしていき、途中で梓は小さく息を呑んだ。敏感な部分に指が到着したのである。敏感な芽は小さな器官だが、その性的存在感は圧倒的なものがある。女だけの渦巻くような快感の発信地だ。
梓は自然と首を後ろへそらし、ぷりぷりと固くなった芽をそっとつまむように揉んだ。
「あん……」
独りながらも、声が洩れる。
自分の声を自分の耳が聞いて、頬が熱くなり、股間にいっそう熱がこもる。女の淫芽が男のペニスのように勃起している。
梓はパンティの上から指をあてがいながら、いつのまにか電車の中で痴漢されていることを想像していた。
(いやらしいおじさんが、あたしのミニスカートをめくって太い指をあそこにあてている……)
淫芽の扱いは女自身でも難しい。刺激が強すぎれば痛みになるし、ためらってばかりでは炎がにぶる。隔靴掻痒に似た刺激だけが隠れていた欲望をそっと掘り起こしてくる。
「ねえ……もっと、上手に」
梓は想像の中の痴漢おじさんに言うが、動かしている指はしょせん自分のものだ。本物の男の指のように、乱暴そうでいながら妙にコツをおさえてくるようには動かない。
「欲しい……」
梓はパンティの中に右手を入れて、左手で乳房を揉みしだいた。
乳首はさっきからTシャツを押し上げるほどに固くなっている。その先端を手の平におさめて、全体を丸く揉む。そうすると、自分がいやらしい女であるということがはっきりとわかる。
「あん、いい!……もっと、もっとよ。して、して。はめて!」
梓はたまらなくなって、声を立てた。
同時に陰毛をかきわけて溝の奥へとぬめり込ませた中指で濡れた粘膜を攪拌する。あそこはもう、糸を引くほどべたべただった。前庭をこすり、淫唇をつまみ上げる。そのときに親指の付け根が淫芽をこするようにする。
想像の中の痴漢おじさんはいつのまにか消えて、今は誰のものとも知れぬ男の勃起した性器が梓の瞼に映っていた。それが、ぶるんぶるんと上下に震えている。
「ああん、大きいおちんちん」
梓は舌先で上唇を舐めつつ、指の運動を早めた。
「早く、早く、それ、ちょうだいっ」
そのとき、ドアが音を立てた。
誰かが軽くぶつかったような感じだった。梓はとっさに息を呑んで、体を固くした。
耳を澄ます。遠ざかる軽快な足音が聞こえた。
誰かに聞かれていたのだろうか。だが、あの足音は逃げるような感じではなく、いかにも事務的なふうだった。
梓はパンティから指を抜き、背中をドアからそっと離した。驚いたせいで、一挙に熱が引いてしまった。
梓はドアに耳をつけ、外をうかがった。何の気配もない。
「邪魔しないでよ。いいとこだったのにぃ」
思わずそう言って視線を下に落として、謎が解けた。郵便の配達だったのだ。郵便受けから茶色い封筒が舌を出したように半分のぞいている。
どうせ夫宛てだろうと思って抜き取ると、緑川梓様と書いてあった。知らない字だ。
その場で封を開け、梓は合点がいった。パート募集に応募したコンビニエンスストアからの通知である。ワープロ文字をそそくさと斜め読みする。
採用通知だった。仕事は明後日からだという。
自分で応募しておきながら即座にはうれしい気持ちになれないまま、梓はパンティを引き上げて、ダイニングテーブルでもう一度その通知書を読み直した。
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