官能小説販売サイト 一条きらら 『密室の診察台』
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一条きらら   密室の診察台

目 次
第一篇 新妻過剰サービス
第二篇 不感症治療レッスン
第三篇 痴漢願望
第四篇 オナニー狂い
第五篇 バイブ大好き
第六篇 強姦願望の女
第七篇 夜遊び娘
第八篇 浮気公認夫婦

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   第一篇 新妻過剰サービス

     1

 連日続いていた雨がようやくんだ。
 天気予報が梅雨明け宣言をした日から一週間後の、七月中旬である。
 夏の午後の強い陽射しがビルや道路を照りつけている。
 ここは西新宿六丁目。ビルにはさまれたマンションの二階二〇一号室のドアに、
『朝比奈SEXクリニック』
 と看板が掲げられている。
 室内では午後の診察が始まったばかりだった。
 玄関を入ったばかりの部屋に受付の窓口と待合室。その奥の十畳ほどの部屋の応接セットに、カウンセラーの朝比奈玲子と、その日、クリニックを訪れたばかりの青年が向かい合っていた。
 紺のスーツに身を包んだ青年は、色白で引き締まった顔立ち、すらりとした長身で、やや気弱な、お坊ちゃん風の雰囲気を漂わせている。
 白衣姿の朝比奈玲子は、青年にあらかじめ記入させておいたカードを軽く眺めていた。
 そのカードには、名前、住所、年齢、学歴、職業、既婚未婚の別、結婚年数などが書かれていた。
 カードによると――。
 青年の名は沖山隆史、二十八歳、会社員、既婚である。
「まだ、新婚さんですのね」
 と、カードから顔を上げて、玲子は微笑した。
 結婚年数のところに、三カ月、とある。
「ええ、そうです」
 沖山は、はにかんだ表情で答え、玲子の次の質問を待つ顔つきになった。
「それでは、うかがいますわ、あなたの悩みというのを」
 玲子はカードをテーブルに置くと、沖山の顔を見つめた。
(同級生みたいなものだわ)
 と、胸の中でつぶやく。玲子も今年、二十八歳だった。
「実は、妻と行為をする時、どうしても不可能になってしまうのです」
「あなたの方が?」
「はい、いろいろ努力してみるんですが、一時間ぐらいねばっても、不可能なんです」
 沖山はそう言い、
「先生、こんなことってあるでしょうか。僕はまだ二十八です。この年齢でインポだなんて、しかも周囲からは毎晩ハッスルしていると思われてる新婚なんです」
 と、訴えるようなまなざしを玲子に向けた。
 玲子はやさしく微笑んだ。
「新婚さんのインポって意外と多いんですのよ。緊張のあまり、または奥さんが極度に不安がって受け入れず、萎縮してしまうとか、あるいは自分の激しい欲望を知られるのが恥ずかしいとか」
「とんでもない。僕はむしろ、彼女を愛している証拠をどんなに見せたいかわからない。十代の若者じゃないんです。性欲を恥ずかしいことなんて思ったことはありません。それに……」
 沖山はちょっとうつむいて、瞬きすると、
「妻はセックスという行為に不安どころか、かなり積極的なんです。僕を何とか奮い立たせようと、わいせつなポーズを取ったり、僕の性器を、手や口で……」
「愛撫してくれるのね」
「はい、そうです、全くいじらしいくらいです」
「それでも全然……?」
「全くだめなんです。今まで、こんなことってありませんでした」
「奥さんを、愛していらっしゃいますか?」
「もちろんです。同じ会社に勤めて、長年僕は片想いしていて、結婚したいという夢がようやくかなったんです。妻との結婚生活は幸福そのものです。それなのに、夜になると……」
「仕事のストレスは?」
「鉄鋼関係に勤めていますが、従業員二百人足らずの中小企業で、僕はまだ重要なポストについていないし、ライバルがいるわけでもなく、仕事の内容も僕にとって張り合いのあるものです」
「そう……」
 仕事のストレスでも妻との不和でもなく、若年性インポにかかってしまった沖山に、玲子は同情した。
 二十八歳で、肉体的にインポであるわけがない。精神的な原因があるのだ。
 男の性とは、女が想像する以上にはるかにメンタルなものである――性医学書で読んだ一節が、玲子の記憶によみがえる。
「それでは」
 と玲子は椅子から立ち上がり、
「こちらにいらして、ベッドに横になって下さい」
 と隣室に通じるドアを開けた。
「えっ、あ、あの……」
 沖山は白い頬に血をのぼらせている。
 玲子は毅然とした口調で言った。
「テストします。肉体的にあなたがどの程度、不可能なのか。多分、心因性のものと思われますが、それを解明するためにも、こちらでテストを行ないますから」
 ドアを開けたまま、玲子は窓ぎわのデスクに行って、二つある電話機の一つに手を伸ばした。内線電話である。
 
 
 
 
〜〜『密室の診察台』(一条きらら)〜〜
 
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