官能小説販売サイト 由紀かほる 『餓狼の生贄[美人キャスター暴行]』
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由紀かほる   餓狼の生贄[美人キャスター暴行]

目 次
プロローグ
第一章 襲 撃
第二章 潜 伏
第三章 露 出
第四章 誘 拐
第五章 逆 襲
第六章 競 艶
第七章 性 宴
第八章 令 嬢
第九章 制 裁

(C)Kaoru Yuki

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   プロローグ

     1

 白と黒に塗られた車が横浜のとうに並んで停まっていた。屋根の上では赤いランプが、遅くもなく早くもない間隔で回転している。
 恐怖と不安、好奇心と昂奮を呼び起こす色だなと、まさは思った。
 だが、俺には懐かしい色のはずだとも。
 五月の暖かい風を浴びて、雅比古は巡査とともに現場へと近づいていった。
「警部、被害者の身内と思われる方をお連れしました」
 呼ばれた中年の刑事は、振り返って長身の雅比古を見やった。
「元気かね」
 雅比古は軽く肩を持ち上げた。
「調子は」
「まあまあですね」
「それはいい」
 どこか皮肉っぽい口調で言って、雅比古を促した。
 いぶかしげに見つめる若い巡査を残して、二人は埠頭の先まで歩いていった。
 二年ぶりに会うやまおき警部の顔色は相変わらず悪い。腎臓のしっかんはまだ治りきっていないらしい。
 現場に着くと、
「君の妹さんじゃないといいんだがね」
 山沖は堅い口調になって、引き上げられた車の方へ近づいていった。
 山沖の話では、その車が海底から見つかったのは、ほとんど偶然からだった。
 着港しようとした船があやまって埠頭の一角を傷つけたために、コンクリートのブロックが海に沈んだ。それを引き上げる作業の最中に、潜水夫が海底の泥に半分ほど埋まった車を見つけたのだ。
「いいか。だいぶ形が変わっているからな」
 かつての同僚への気づかいからか、山沖は雅比古の肩に声をかけた。
 俺はしろうとじゃない――そう胸の中で呟いて、雅比古は車の中の死体をのぞき込んだ。警部の忠告は正しかった。
 死体は原形のほとんど倍の大きさにふくれ上がり、白い肌こそ保たれてはいたが、眼孔は魚にでもつつかれたのか、ただの暗い空洞となって宙へ向けられていた。これで、妹を確認しろと言われても無理だった。
 が、着ている白いサマーコートにはたしかに見覚えがあった。
「妹さんはゆびのようなものは、していなかったかね」
 山沖に言われ、雅比古は妹がよくしていた、黒い太いひもに吊るしたカメオのブローチを思い出した。コートのえりの内側を探ると、それはそこにあった。
「外していいですか」
「うん。だいぶ柔らかくなってるから、気をつけてくれ」
 雅比古は死体となった妹の頭からゆっくりと外していった。紐が顔面を擦ったせいで、表面の皮がペロリと剥げて、貌がこちら側に倒れかかった。胃の辺りから酸っぱいものが込み上げてきて、雅比古はブローチを持ったまま、かおを外に出して、しゃぶつをコンクリートの上にぶちまけた。
「どうだね」
 背をさする山沖に、
「ええ、そうらしい」
 雅比古は大きくうなずいて見せた。
「署まで来てくれるだろう」
 雅比古は頷いて、差し出されたタバコを断った。
「そうだった、吸わないんだったっけな」
 山沖は思い出して、自分だけタバコをくわえた。
 タバコを吸わない雅比古が、かつて同じ署に入って来たとき、いかにもキャリアらしいお坊っちゃんだと、他の同僚と噂したことがあったのだ。もっとも、その評価は雅比古が空手の全国大会で、三位になったと知れ、また実際の捜査活動でのタフネスさが知れるにつれ、大きく変わっていった。
 だから二年前に、突然辞職し、ある大物代議士の秘書となったときは、同僚たちは驚き、上司からは惜しまれさえした。
「代議士センセイのお守りの仕事は板についたようじゃないか」
 山沖はイタリア製の鮮やかなレジメンタル・タイを見て、眼を細めた。
「ま、刑事をやってるよりはね」
「俺にはどうもわからねえ。花のキャリア組で、昇進は約束されてるってえのに、何で辞職なんかしたのか。亜木の実力なら警視長か、警視監は堅いと思ってたがな」
 山沖はヤニ臭い口を近づけると、急に声を落とした。
「おい、今なら本当のワケを話せるだろう」
 雅比古は口臭を避けるようにかおらせると、
「簡単さ。警視総監になれるまで待ち切れないからですよ」
 山沖は黙って、探るような眼で雅比古の貌を見やった。冗談なのか本気なのか、一瞬戸惑っていたが、すぐに笑い出し、
「よせよ、警視総監だと? フフフ、馬鹿を言うな」
「四十までに総監になれるなら考えてもいいが、五十、六十じゃ遅すぎるよ、いくら何でもね」
 雅比古は平然と言い足した。
 
 
 
 
〜〜『餓狼の生贄[美人キャスター暴行]』(由紀かほる)〜〜
 
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