官能小説販売サイト 鳳春紀 『美人秘書・絵梨子と少年』
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鳳 春紀    美人秘書・絵梨子と少年

目 次
第一章 窃視――美人秘書の太腿
第二章 視姦――牝臭漂う更衣室
第三章 姦淫――鮮烈な口唇吸引
第四章 淫慾――挑発下着の魔楽
第五章 慾情――奴隷秘書の誕生
第六章 情艶――恥辱奉仕の代償

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   第一章 窃視――美人秘書の太腿

     1

 クーラーをきかせても三十度以下にはならない調理場のオーブンで焼き上がったピザをデリバリー用の保温ケースに注意深く入れて、宮崎礼治はバイクにまたがった。
 午後十時過ぎに、プレーンチーズにアンチョビとアンティチョークだけをトッピングした特製ピザを注文してきたのは、興和商事の重役秘書である広中絵梨子だった。
 しかし、配達先がいつもの社屋別館にある小会議室ではなかった。
 麻布の大使館裏の駐車場に停めてある車まで運んでくれ、というのである。
 そこはデリバリー区域から外れる場所だったが、得意先の興和商事の注文とあれば、店長も断ることができなかった。
 そして、十時半にはアルバイトをあがるはずだった礼治が配達を買って出た。
 時給には換算されないが、他の配達員には広中絵梨子を見せたくなかった。
 礼治はずっと彼女からの注文を待っていたのだった。だから、二週間ぶりのこの注文のチャンスを逃す手はなかった。
 礼治はバイクを走らせながら、ヘルメットのバンドを片手で結んだ。胸が高鳴っていた。
 見馴れたはずの街灯や信号機の灯がやけにきれいに見えた。満月はバイクとともに動き、巨大な口紅にも似た東京タワーはビルの間に見え隠れしている。
 広中絵梨子に会えるといっても、ピザを渡し、代金を受け取るだけのほんの短い間だけである。
 その数秒間だけでも、礼治は彼女から蒸れるように立ち昇る匂いを嗅いでみたかった。
 甘く誘うようなあの匂いが、香水なのかどうかもはっきりしない。
 街ですれちがう女や少女から同じような香りを嗅いだことは、これまで一度だってなかった。
 もちろん、絵梨子の体から発散する独特の匂いだけに魅かれているわけではなかった。
 あまりに女らしいあの顔、女豹が女に変身したかのようなあまりにしなやかな体つき、絹製の服をまとっていてもヌードグラビアモデルよりも格段に美しくも卑猥に流れる体の稜線を再び目に焼きつけておきたかった。
 たぶん二十四歳か二十五歳頃だと推定される絵梨子は、礼治にとって、ずっと夢想してきた「女」そのものだった。ただ、男に見られるために存在しているような女だった。鑑賞されて、男が固唾を呑み、呆然として吐いた溜息の多さによって美しくなるような女だった。
 彼女の容貌と肢体はどんな美術作品をもりょうしている。そのくせ、男が理想の女として丁寧に描いた黄金律のボディを持った女より、はるかに生々しい雰囲気を全身にまとっているのだった。
 礼治はこれまで何度か自分のそういう憧れを疑ったことがあった。
 ピザを手渡すときの数秒を手掛かりに、自分は勝手な絵梨子の像を描いてしまっているのではないかと思ったこともあった。
 しかし、まるで礼治の誤解を解く機会を与えるかのような不意をつく注文があって、配達のそのたびに、絵梨子はたんに夢想のなかに存在するのではなく、現実に目の前にいて、彼の夢想などはるかに超えた女だということを思い知らせてくるのだった。
 だから、今、指定された場所へと夜の道路をバイクで走りながら、礼治の体は熱くなっていた。それは性的な興奮とはちがうものだった。
 数秒のぎょうこうにまみえる興奮、あるいは、ウスバキチョウに出会える興奮にも似ていた。
 現実には、ウスバキチョウも、広中絵梨子も、決して自分の手に入らないということは重々わかっている。
 手に入れようと望んではいけないことすら知っている。
 あれほどの大企業の美しい重役秘書が、ピザの配達アルバイトをしている高校生に鼻もかけるはずもない。それはよくわかっている。
 だからこそ、彼女を再び見たいという欲望と、屈辱的な気分が混じり合って、礼治の体を熱くしているのだった。
 そんな礼治を乗せたバイクは急き立てるように夜のアスファルトの上を走り、大通りから麻布の坂道に入る。もうじき大使館裏にたどりつく。
 街灯の青い光のなかを羽虫や蛾が舞っている。
 駐車場には十数台の車が停められていたが、一台の大型ベンツだけが中途半端な向きで入口近くに停まっていて、それが絵梨子の指定した車だとすぐにわかった。
 そのとたん、礼治の胸中に悪い予感が走った。彼女の代わりに、運転手だけがいるのではないかという予感だった。以前も一度だけだが、そんなことがあったのだ。
 礼治はいつも通りに路肩にバイクを停め、脱いだヘルメットをシートの上に置き、保温ケースからピザのL箱を取り出した。
 ベンツに車内灯がついている。
 運転席に人影はない。後部座席に誰か乗っている。
 近づくと、後部ドアが半分ほど開いているのがわかった。
「あのう、お待ちど……」
 ドアの前で言いかけて、礼治の喉から声が出なくなった。
 見間違いかと思った。絵梨子がたった一人、広い後部座席にしどけない姿で居眠りしている姿が目に入ったのだった。
 礼治は膝を硬直させて、その場に立ち尽くした。
 コバルトブルーの薄地のワンピースに肢体を包んだ絵梨子は、長い脚を伸ばし、後部座席を斜めに占領するような姿勢で眠っている。
 死んでいるのではないかとは寸分も思わなかった。
 かすかにだが寝息が聞こえ、ワンピースの胸の盛り上がりが上下していた。
「あの……」
 もう一度声をかけようとして、やめた。
 
 
 
 
〜〜『美人秘書・絵梨子と少年』(鳳春紀)〜〜
 
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