由紀かほる 女子大生 蜜猟教室
目 次
第一章 女子大生の挑発
第二章 美人助教授の嗚咽
第三章 インストラクターの雫
第四章 癒し系美女の唇
第五章 チア・リーダーの肌
第六章 饗宴のフィナーレ
(C)Kaoru Yuki
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第一章 女子大生の挑発
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黒いスウェードのブーツを履いた二本の脚が、椅子に腰かけて形よく正面を向いている。
ヌード・カラーのごく薄いストッキングは、弾けそうな膝から太腿を包んで、その最も豊かな付根までを露わにしていた。
もちろん、スカートを穿いている。が、膝上二十センチの白い、清楚なはずのタイトなミニは、座ったために深いシワを刻んで下腹の方へ大きくズレ上がっていた。
二本の脚は横を向いているわけでも、組まれているわけでもない。ましてや、ハンカチやバッグ等で付根が隠されているわけでもなかった。
因みに机の上からのぞく上半身は、黒いボリューム感のあるニットを合わせ、胸の高さがイヤでも眼に飛び込んできた。
顎の形のスッキリと美しい顔は、つやのよいふっくらとした頬と、愛くるしい黒眼勝ちの眼が子猫のようにコケットリィだった。
小鼻の張った鼻梁は、やや先が丸く上を向いているが、それが二十歳前の若々しさと重なれば、逆に親しみやすいチャーム・ポイントになった。
大学のキャンパスにある秋期特別講義の教室である。
神戸の六甲にある朋南女子大は長い伝統と、良家の子女が集まる名門校として、全国的に有名だった。
その日、『犯罪心理学――その傾向の変化』と題された短期講座の、第一回の講義には六十人近い女子学生が集まっていた。
講師の元警視庁刑事という肩書きが、学生たちの好奇心を刺激したのかもしれない。
慣れないどころか、生まれてはじめて教壇に立った王子尤之進は、さすがに緊張から言動がぎこちなかった。
何人かの女子学生は、そのアガリっぷりに講義の開始早々からクスクスと笑い出していた。
新調してきたネイビー・ブルーのブレザーにレジメンタル・タイの下で、尤之進はたちまち汗を滴らせていった。
何しろ、十八から二十二、三歳までの女子学生ばかりが六十人も集まって、尤之進一人を見つめているのである。
いずれも裕福な家庭で育ってきたのは、その服装の華やかさを見れば瞭然だった。
ジーンズ姿の学生もいるが、そのジーンズ自体がこれでもかというほど下半身のラインを浮き立たせていた。中にはこれからディスコかクラブにでも遊びに行くのではないかと思うような、きわどい恰好の者もいる。
わざわざ教室内を見わたす必要も実はなかった。教壇に立っただけで、尤之進の嗅覚は化粧と香水と、何よりも若い女の放つ、フェロモンの混じった甘い、濃密な体臭にツーンと打たれて、酔いかけていたのである。
すでに三十五歳になろうとしていたが、何やら全身の細胞が十歳、いや二十歳近く若返っていくような気がした。
その中でも、正面に座る(ありがたいことにすり鉢状の教室は、机の下前部に板がなかった)モノトーン・ファッションの平山優理の姿態は、まぶしいほどのオーラを放っていた。
もう一人、一番上の、窓際に座る褐色の肌をした、ひどく大人びた容貌の女子学生も気になった。
が、やはり座るポジションの差は大きかった。
優理は正面の、それも五段目に座っていた。つまり、教壇に立つ尤之進の眼の高さに、優理のブーツからのぞく膝小僧があった。
くり返して言う。その女子学生の穿いているのは白い、タイトなミニ・スカートである。彼女は脚を組むこともしなければ、ハンカチを置くこともしていないのだった。
何かの間違いではないのか――尤之進は思わず左右をキョロキョロと見まわしかけていた。
が、錯覚でも、夢でもなかった。教壇に立つ尤之進の目線の先に、ブーツからはみ出した二つの、滑らかな膝小僧が並んでいた。
その先で寄り合う左右の太腿は、瑞々しい弾力で白いミニ・スカートを弾くようにたくし上げていた。
見るなという方が無理だった。眼差しは二本のピチッとした内腿の肉付きに誘い込まれるようにして、その一番奥で息づく、真っ白い布片の丸みに達して、しっかりと焦点を合わせていた。
覗く方に、ある種の羞じらいと後ろめたい気持ちが湧くのは何故なのだろう。
が、一つ確かなのは、その思いを上まわる官能の疼きと秘かな勝利の歓びがあるということだった。
尤之進はチラッと優理の顔を見てから、素早く視線を逸した。黒板のスクリーンに映した原稿を示しながら講義を続けた。
が、尤之進の網膜に刻まれた、白い、何ともいえぬまろやかなラインの、ごくわずかなふくらみは簡単には消えるはずもなかった。
いや、それ以上に衝撃的だったのは、優理の覗かせた、美しい歯並びの笑顔だった。
作られた笑みであるのはほぼ間違いなかった。が、それでもその中にあるまぶしいオーラは、一瞬だが、尤之進の心の一端をほとんどトロかせてきた。
実際、スライドを持つ指先が痺れかけていた。
女子学生のスカートの中を覗いてニヤリとしたところを見られてしまったのだ、当の女子学生に。
あの笑みはまさに確信犯のそれではないのか。
たしかめずにいられるはずがなかった。
さり気なさを装ってはみたものの、優理は正面に座ってじっと視線を向けているのである。受講中なのだ。文句は言えない。
思い切って、尤之進は優理の顔を眺めた。と、待っていたかのように、上眼遣いの眸がキラッと光って、淑やかな、うれしそうな笑みが口もとに拡がっていく。
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