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川口青樹    在宅飼育

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在宅飼育
スペシャルMペット

(C)Seijyu Kawaguchi

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 在宅飼育


 中山が帰宅すると、郵便受けにチラシが入っていた。
 【可愛い子、若い娘がそろっています。自宅出張致します。TEL〇九〇‐……】
(またこれか。……一度くらい呼んでみたいが、どんな娘が来るかわからないし、それに……)
 それに中山には夢があった。
(ホテルでプレイをするのではなく、自宅で可愛い奴隷M女を飼いたいな。以前、SMの専門雑誌の体験投稿で見たように。でも無理だろうな)
 SMプレイを覚えてから早、もう十年。
 今年四十になるが未だ独身の中山はそんな夢をいつしか思い描いていた。
(…ま、明日はパチンコでもするか)
 そう思いながら眠りについた金曜日の夜だった。

(ほう、今日はついているな。一時間で、しかも千円で三万円とは。久々に血のしたたるようなステーキにするか)
 どちらかと言えば負けが多いのだが、たまに勝つことがあると気分がいい。
(宝くじか。そうだな、こういういい時に買うと当たるっていうからな。三億円へ向けて、行けー)
 しかし宝くじを買ったことはすっかり忘れていて、また週末のパチンコ通いの時に宝くじ売り場前で思い出した。
「おっ、お客さん、おめでとうございます。これ、百万円が当たっていますよ。すみませんがここではお支払いできないので、銀行窓口へ行って頂けますか」
「……」
「お客さん、大丈夫ですか」
「あっ、ええ、大丈夫。で、どうすればお金になるんだって」

 中山は、をどう歩いたのかわからなかったが気がついた時は、家のベッドで横になっていた。
(本当に夢ではないんだろうな。三億円には程遠いが、百万円なんて。とにかく落ち着いてだな。……でもこれくらいじゃ家を買うには足りないし、……海外旅行、そんな休暇が簡単に取れる訳はないし、……そうか、あれはどうかな)
 中山が結論に達したのは、例のM女のことだった。
(でも、どうすればいいんだ。まさかチラシの娘って言う訳にはいかないだろうし……)
 いざ金ができても実現するとなると、そう簡単には思いつかなかった。
(ふん、まずは久々にSMクラブへでも行ってみるかな。ひょっとすると何かわかるかもしれないし。…そうだ。『F』のミドリにしようかな)
「もしもし、『F』ですか。ミドリさんは明日OKですか。……そうですか。じゃあ明日二時にお願いします。……中山です、よろしく」
 翌日中山は、久しぶりに池袋へ出た。
 SMクラブも久々だ。
 SMクラブはプレイの夢を叶えてくれると言うことではいいのだが、料金がばかにならないし、それに慣れてくるとどうも今一つ刺激が足りなくなってしまい、何回か通うと気乗りがしなくなってしまった。
 もちろん相方の娘にもよる。
 その点、『F』のミドリは若く痩せ型でちょっと子供っぽさを感じさせる娘……つまり中山の好みだった。
「もしもし、予約の中山ですが、ミドリちゃんはOKですか。……じゃあ、これからホテルに入りますから」
 中山は、池袋の北口にあるラブ・ホテルに入った。
「もしもし、ホテルRの七〇五号室へ入りましたのでよろしく」
 ソファに腰を降ろすと、持ってきたバッグの中から今日使いそうなグッズを並べ始めた。
「やあ、こんにちは。早かったね。……あれっ」
 部屋の中に入って来た娘は身長百五十五cm位であのミドリとは全然違っていた。
「どうも失礼します。エーッと電話お借りしますね」
 その娘は慣れない仕草でベッドの側にある受話器を取ろうとした。
「ちょ、ちょっと、待ってくれ。……あの君は、SMクラブ『F』の人だよね」
「ええ、SMクラブ『F』のミドリですが……」
「おかしいな、僕の知っているミドリさんとは違うね」
「じゃあ、前の方のことかしら。だって私まだ二カ月ですから」
「……そうか、じゃあ彼女は辞めたんだな」
「はい、多分そうだと思います。実は私も初めての方なのに御指名はおかしいな、と思っていたんです。……あの……どなたかとチェンジしますか」
「いや、……君でいいよ」
「じゃあ、よろしくお願いします。……あっ、ミドリです。今入りました」
 受話器を置くと、新しいミドリは改めて頭を下げた。
「まだ入って間もないんだね。経験はあるのかい」
「いいえ、この店がSMって初めてです。だからわからないことが多くて。……すごいですね。こんなに色々お持ちなんですか」
 テーブルに置かれたグッズを見ながらミドリは驚いていた。
「そうだ、君は初めてだから言っておくけど、僕もお店で用意された物しか使っちゃいけないって知っているよ。だから、君がOKした物しか使わないよ。それならいいだろう」
「はい、そうして頂ければ助かります。あのー、どんなプレイがお好きなんですか」
「ひと言で言えばしゅうプレイかな。全身が赤くなる位恥ずかしいっていう姿を見られると一番興奮するんだ。君はどうなの」
「どうって、何がですか」
「だからさ、自分でも感じるプレイがあるのかってことさ。だって多少は興味があったんだろう」
「まだ、わかりません。……でも、こうやってお話できるっていいですね」
「そうかい、あんまりお客とは話さないのかい」
 
 
 
 
〜〜『在宅飼育』(川口青樹)〜〜
 
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