官能小説販売サイト 由紀かほる 『美肉の虜囚』
おとなの本屋・さん


由紀かほる   美肉の虜囚

目 次
一、甘美な性奴
二、美肉の虜囚
三、絶頂仮面
四、凌辱者
五、女神の猟人
六、熟れた獲物
七、美人秘書に捧げるボレロ
八、キャリアウーマン深夜便

(C)Kaoru Yuki

◎ご注意
本作品の全部または一部を無断で複製、転載、改竄、公衆送信すること、および有償無償にかかわらず、本データを第三者に譲渡することを禁じます。
個人利用の目的以外での複製等の違法行為、もしくは第三者へ譲渡をしますと著作権法、その他関連法によって処罰されます。


   一、甘美な性奴

     1

 外科の簡単な手術を終えると、上杉涼香は自室に戻って机からコピーした二つのカルテを封筒に入れた。その一つを、鍵のかかる引出しにしまい込んだ。
 ドアがノックされたのは、ちょうどそのときだった。
「失礼します」
 入ってきたのは、今春からインターンとして涼香が面倒を見ている高野真澄だった。
 まだ大学を出たばかりだが、半年間涼香の元に仕えてきたせいか、白衣姿も似合うようになっていた。
 もともと背も高く、整った華やかなかおちは、外科志望という男勝りの資質と上手くバランスがとれ、将来の雄姿を早くも予感させた。
 それもしかし、涼香の前だとさすがにかすみがちになった。
 実力、実績、ポジション等々、病院で着実に身につけた涼香は、普段の言動からその重みが違っていた。
 それでいて、決して尊大ぶった態度を示さずに、常に全力を注いで医者という仕事に立ち向かう姿が、看護婦の間でも敬意を抱かれる要因になっていた。実際、多くのインターンたちの目標であり、憧れでもあった。
 が、何よりも涼香を輝かせていたのは、その恵まれた容姿のせいに違いなかった。一六四センチの肢体はモデル貌負けのプロポーションを誇り、それは切れ長の眼とノーブルな鼻梁の知的で気品溢れる貌立ちと最高のコンビネーションに彩られていた。
 今年三十二歳になっても、その美しさは衰えるどころか、内面の充実ぶりに比例して、ますます艶熟していくように見えた。
「これ、あなたにも預けておくわ」
 涼香はいつになく硬い表情で、カルテのコピーの入った封筒を真澄にさし出した。
「はい。じゃあ、やるんですね、本当に」
 真澄の貌も真剣だった。
「ええ。内部告発なんて嫌いだけど、仕方がないわ。病院にとっては不名誉なことでも、医療ミスを隠し続けるわけにはいかないもの。あなたも、よく教えてくれたわ」
「いえ……怖かったんですけど、先生ならと思って」
 師を敬う思いが、その眼差しに溢れていた。
「大丈夫。もし、上が動かないときは、わたくしの知り合いのジャーナリストに話をしておくから。カルテのコピーはそのときのためのものよ」
 知性のオブラートに包まれた横貌には、頼もしいばかりの正義感と揺るぎない自信が溢れていた。
 十分後、ハイヒール・パンプスのかかとを鳴らして、涼香は地下駐車場の愛車に近づいていった。
 ドアを開け、ミニから伸びる脚をきれいに畳んで乗り込み、エンジンをかける。
 と、窓ガラスをノックする者がいた。インターンの宇田川淳二だった。
「何かしら」
 窓を開けて貌を見上げた。陽灼けした貌が丸い縁なしメガネの向こうで、奇妙に引きつってみえた。
「実は、先生、カルテを――」
「え?」
 声が小さくてよく聴こえなかった。いったんエンジンを切ろうとしたその瞬間、いきなり口元を背後から塞がれた。と、次の刹那、首すじにチクリとした痛みが走った。
「!」
 涼香はシートの上で、猛然と身をよじった。
「ウウッ!」
 その隙にドアが開けられ、涼香を隣りのシートに押しのけるようにして、宇田川が乗り込んできた。
 バック・ミラーに一瞬、口を塞いでくる男の貌が映った。
〃大門慎也!〃
 今回の医療ミスを起こした整形外科の医師だった。
 さらに叫ぼうとしたが、急激に手脚の動きが鈍くなって、間もなく涼香は意識を失っていった。

     2

「薬で眼を覚まさせてやれ」
 遠くで大門らしい男の声がした。
 腕に針を打たれ、やがて涼香は不快な眠りから眼を覚ました。
 そこは地下室なのか、窓一つない二十畳ほどの、レンガ造りの部屋だった。
 床に横座りになった涼香のからだは上体を起こしていた。天井から垂れる鎖と、その尖端のワイヤーの入った革製のかせが、右手首を吊り上げているためだった。
 それを見るなり、涼香は右腕の痺れるような痛みに低く呻いた。あわてて、左手を伸ばして鎖を把んで、右腕の負担を軽くしないではいられなかった。
「気がついたな、上杉先生」
 ソファに座っていた大門が、タバコを咥えて近づいてきた。すぐ脇には注射器を持った宇田川が立っている。
 さらに、ソファでは小指を立ててにコーヒーを呑んでいる弁護士のときますえいの姿が見えた。
 
 
 
 
〜〜『美肉の虜囚』(由紀かほる)〜〜
 
*このつづきは、ブラウザの「戻る」をクリックして前ページに戻り、ご購入されてお楽しみください。
 
「由紀かほる」 作品一覧へ

(C)おとなの本屋・さん