官能小説販売サイト 一条きらら 『密  会』
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一条きらら   密  会

目 次
背徳の夜
淫らな私を愛して
魅惑の不倫
濡れた嫉妬
危険な訪問者
人妻の迷い
復讐の淫戯
罠に悶えた人妻
あざむかれた悦楽

(C)Kirara Ichijo

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   背徳の夜

     1

 買い物の袋を下げて、奈津実は自宅に帰り着いた。玄関のポーチに立ち、ドアの鍵を使いながら、ふと緊張感がかすめる。
 夕方近い時刻である。義弟の英司が、まだ家にいるのではないかと、気になるのだった。
 奈津実は、ドアを開けた。上がりかまちに、紺のスリッパが脱ぎ捨てられてあるのを眼にして、小さな吐息をつく。義弟が外出したと、わかったからだった。
 食料品の袋をキッチンに運んでおいて、奈津実は手を洗い、着替えるために二階の洋室に入った。最近の習慣で、何となく室内を見回してみる。
(この部屋に、英司さん、入らなかったかしら……)
 留守にすると、その不安が必ずつきまとう。六畳ほどの洋室に、洋ダンスと和ダンス、ドレッサー、チェストなどが置いてある。
 ローズ・ピンクのカーペットと花柄カーテン。フランス人形や縫いぐるみが飾られたり、ハート形の可愛いクッションや、写真立てや花瓶などが置かれている。
 オフ・ホワイトの壁には、丸い鏡と、バラの花の額絵が掛けられている。
 奈津実専用の部屋であり、いかにも女の城といった感じだった。この部屋に入ると、独身のころの気分にもなるし、ホッとする。
 奈津実はTシャツとコットン・パンツに着替えてから、チェストの引き出しを開けてみた。カラフルな下着が、畳んで入れてある引き出しだった。
 その中から、ブラジャーを数枚、手に取ってみる。
(まただわ……!)
 淡いピンクのと、黒のブラジャーの畳み方が違っている。
 奈津実は顔をこわばらせたまま、その下の引き出しを開けてみた。パンティだけをしまっている引き出しである。
 手に取ってみると、やはり畳み方が違っているパンティが、数枚あった。
「嫌だわ、気持ち悪い」
 生理的嫌悪感に襲われ、奈津実は畳み方の違う下着を取り出して、ランジェリー用の洗濯ネットに入れた。それらを、洗い直すつもりだった。
 奈津実の不在中に、この部屋に、しのび込む。チェストの引き出しを開け、畳んである下着を手にとって、広げてみる――。
 その犯人は、義弟の英司なのだった。今回が、初めてではなかった。気がついただけで、もう四回目である。
 ドレッサーの上も見てみると、化粧品の瓶の位置がいくつか違っている。
 英司はここも、見たり手に触れたりしたのだろう。
 この部屋に入ることさえ許せないのに、あちこち見られたり、いじり回されたと思うと、ゾッとするような不快な気分になる。
 特に下着は、まるで裸の肌を、覗かれ、触れられたような気持ち悪さを感じるのだった。
(英司さんたら、どうしてこんなことをするのかしら……)
 奈津実は、ため息をついた。義弟との同居が、つくづく嫌になる。
 結婚して三年、奈津実は三十一歳、夫は三十四歳だった。子供はないが、平穏な家庭である。
 英司は、夫の弟だった。二十七歳で独身、定職につかず、フリーターをしている。兄夫婦の家に同居するようになったのは、五カ月前からだった。
 それまでアパートで一人暮らしをしていた英司は、家賃が払えなくなり、兄の家に転がり込んだのである。
 杉並区にあるこの家は、夫の親が息子夫婦のために購入してくれた。二階建てで、部屋が五つある。空いている部屋もあるし、夫は弟の同居を簡単に許した。奈津実は内心、反対だったが、逆らえなかった。
「迷惑かけないように、なるべく早く出て行くよ」
 最初のころ英司はそう言っていたが、一向に出て行く様子はなかった。まともな職業にもついていないし、アパートを借りるお金がないのである。
 その夜、ベッドに入ってから、奈津実は夫の洋一に不満を口にした。
「ね、あなた、英司さん、いつまでこの家に、いる気かしら」
「そのうち、出て行くだろう」
「そのうちって……」
「そんなに英司が居候してるのが、嫌なのかい」
 洋一が奈津実を抱き寄せ、ネグリジェの上から胸のふくらみをまさぐってきた。
「今日も、留守をしたら、英司さんがあたしの部屋に入ってるのよ」
「ふうん」
「下着をいじったあとが、あったわ」
「まさか。英司がそんなことするわけないさ」
 洋一は、笑い飛ばすような口ぶりだった。
「本当よ。ブラジャーもパンティも、取り出してみた形跡があるのよ」
「童貞少年でもないのに、下着泥棒みたいなことなんかしないさ。気のせいだよ」
 夫は、わかってくれない――と奈津実は失望した。二十七歳の男が、義姉の下着に関心を持つなんて、常識家の夫には、考えられないことなのだろう。弟が、そんな変態じみたことを、するわけがないと思い込んでいるのだ。
「英司が居候してるのが不満だから、そんな被害妄想を浮かべるんだろう」
 洋一が、奈津実のネグリジェの胸のボタンをはずした。あらわにしたふくよかな乳房を、彼の手が撫で回す。その手を奈津実は、さりげなく押さえた。
「そのことだけじゃないわ。ほかにも、あるわ」
「どんなことだ」
「お風呂に入ってると、覗かれそうなの」
「それも、気のせいだ。実際に覗かれたわけじゃないんだろう?」
「出かけると、あとをつけてくるみたいな時もあるわ」
「まるで、ストーカーだな」
 洋一が苦笑しながら、奈津実のネグリジェの裾をたくし上げ、パンティを引き下ろした。
 
 
 
 
〜〜『密  会』(一条きらら)〜〜
 
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