一条きらら 背徳の柔肌
目 次
背徳の柔肌
悦楽の目覚め
憧れの淫夢
禁断の性教育
別れの不倫メール
快楽の賭け
不倫の後始末
悶える肌
(C)Kirara Ichijo
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背徳の柔肌
1
財布の中身を見て、麻由子は、ため息をついた。千円札が一枚と、百円硬貨と十円硬貨と一円硬貨が数個ずつ。
(これじゃ、買い物に行けないわ……)
近くのスーパーへ、食料品と日用品を買いに行かなくてはならないのに、たった千円余り。
必要な品物を買うには、全然、足りなかった。
土曜日の午後である。会社が休みの夫は、朝寝坊して、食事をすませると、普段着姿で外出した。
行き先は、わかっている。歩いて五分の駅前繁華街にある、パチンコ店かゲームセンターだ。
麻由子と同い年で三十歳の夫は、パチンコとゲームセンター通いが、趣味だった。
パチンコで儲けたお金で、ゲームセンターで遊んで来るらしい。
夫の給料から、毎月渡される生活費も、
「このあいだ渡した金、三万円返してくれ」
と言ったりするし、その翌週には、
「二万円、貸してくれ」
と、そんな調子で、ほとんど持って行ってしまう。
麻由子は商店街にある生花店で、パート勤めをしている。
その給料で、生活費を補っているようなものだった。
給料日まで、あと十日もある。
どうしよう――と、ため息をついて財布をテーブルの上に置き、
(仕方ないわ。また、借りようっと……)
そう呟きながら携帯電話を手にして、友達の坂井美加の携帯に電話をかける。
昨年、一度、三カ月前にも一度、坂井美加から数万円借りたことがあり、また頼んでみようと思ったのだ。
「はい、もしもし……?」
と、明るく弾んだ坂井美加の声が、携帯電話から聞こえた。
「あたし、麻由子」
着信の時に、名前は表示されたはずだが、そう言った。
「あら、お久しぶりね。お元気?」
借りたお金は二度とも、きちんと返してあるので、友情にヒビは入らなかった。
「あまり、元気じゃないわ、気分的にね」
疲れたような口調で、麻由子は言った。
「どうしたの?」
「あのね……悪いけど、お金を少し貸してもらえないかしら」
「あら、また……」
と、急に警戒心のにじんだ声になるのは、無理もなかった。友達とはいえ、お金を貸しても、絶対に返してもらえるという保証はない。
一度や二度ならともかく、今回も応じれば、今後もたびたび借金を申し込まれる煩わしさも、予想するに違いなかった。
「いくらぐらい?」
やや素っ気ない口調で、美加が聞いた。
「二万円、ううん、一万円でもいいわ」
せめて今日のスーパーでの買い物ぶんだけでもと、麻由子は必死な気持ちだった。
「一万円ねえ」
「駄目かしら……?」
「ねえ、麻由子、花屋の店員の給料なんて、タカが知れてるでしょ。それより、もっとラクで、手っ取り早く稼げるバイトをすればいいのに」
「どんなバイト?」
「フーゾクよ」
すらりと、何でもないことのように美加が言った。
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