中村嘉子 あぶない果肉
目 次
第一章 公園の愛撫
第二章 バスルームの欲情
第三章 開く秘口
第四章 男の感触
第五章 テレクラ遊び
第六章 父と娘の初夜
第七章 恋の予感
(C)Yoshiko Nakamura
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第一章 公園の愛撫
1
男は中年で、外見にはとりたてて個性がなかった。
服装も、エリートコースから外れたサラリーマンの普段着のようで、平凡である。
また、こんなオジサン……。
視界にその男が現われるなり、亜由子は、うんざりして呟いた。
現われるのは、いつもこういう男、いや、この男なのである。
亜由子のほうを見て、男は微笑み、近づいて来た。
亜由子は、身構えた。だが、その構えは、どこか甘かった。男の接近を心で警戒しながらも躰のどこかの部分で期待しているようなのだ。
躰にそれを感じた亜由子は、
(だめ……! いけない……)
と、自分を叱り、ますます躰をかたくした。とりわけ、下半身を……。
男が、ゆっくりと近づいて来る。息づかいが、人間以外の物のそれのように荒い。
亜由子は、男に対して、声を発しようとした。
「あなた、誰?」
と訊きたいし、
「なんで、しょっちゅうアタシの前に現われるの?」
とも訊いてみたい。
いつも、彼を眼の前にするとそう思うのだが、思うばかりで、言葉が出てこないのだ。
亜由子の顔に煙草くさい息がかかるほど、男は近寄って来た。
そうなってはじめて、亜由子は、自分が大きなベッドの上にいることに気がついた。
「い……い……」
男のこれ以上の接近を拒むために、亜由子は「いや!」と叫ぼうとした。だが、この声も出せない。
「亜由子……俺の、亜由子……」
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