官能小説販売サイト 由紀かほる 『[女潜入捜査官]レディ・ドッグ4』
おとなの本屋・さん


由紀かほる   [女潜入捜査官]レディ・ドッグ4

目 次
1st stage 嘲弄
2nd stage 擾乱
3rd stage 渇望
4th stage 鉄籠
5th stage 懊悩
6th stage 奴隷
7th stage 愉悦

(C)Kaoru Yuki

◎ご注意
本作品の全部または一部を無断で複製、転載、改竄、公衆送信すること、および有償無償にかかわらず、本データを第三者に譲渡することを禁じます。
個人利用の目的以外での複製等の違法行為、もしくは第三者へ譲渡をしますと著作権法、その他関連法によって処罰されます。


   1st stage 嘲弄

     1

 かん自身が頬にかかる涙を信じられずにいた。
 眼を大きく見開いてみれば、しかし確かに脚元の床はゆがんで見えたし、鼻水までがこぼれ落ちそうになっていた。慌てて鼻水をすすり上げながら嗚咽を押し殺そうとしたが、一度決壊した感情のしずくは簡単には止まらなくなっていた。
 もリーもそしてよしつぐも一瞬押し黙ってその様子に見入っていた。
 あれほど強固に超然として数々の尋問に耐えてきた、正義感と義侠心を持つ有能な女医がはじめて重圧に屈し、人間としての弱さをあらわにしてきたのだった。
 何よりもそれがむちや電気ショックによるものではないことが、部屋の緊張感を一段と張り詰めたものにしていた。
 柑奈は握りしめたこぶしをブルブルとふるわせた。土下座をし、頭を踏みつけられたのはもちろんしかった。鞭で小刻みに叩かれるのも我慢できぬほどに神経を逆撫でしてきた。
(だが)と柑奈は思った。
 全ては無視すればいいことだった。
 今までなら屈辱にまみれながらも、この二人の悪魔(それも出来損ないの)をあくまでへいげいして、自分の中の精神への進入を退しりぞけていたはずだった。
 だが、もはやその機能が働かなくなっていた。
 首環をめられたときから、柑奈の精神は自由を奪われていたのだった。本当に恐ろしいのはしかし、これからだった。
 摩耶がうなれた柑奈のかおを興味深げに、冷たいちょうろうと勝利の笑みを浮かべて覗き込んできた。喉にえつを詰まらせながら、柑奈はそれでもかおを正面に向け、汚濁を振り払うように涙を払って背筋を伸ばした。
「口惜しいのかい、うん?」
 摩耶はむちのへらで涙で濡れた頬をピタピタと叩いてくる。
「い、いいえ――」
 どうにか柑奈は答える。
「なら泣くのさ、女医さんが人前で」
「な、泣いてなんか――いないわ」
 ――そう言いたかったが、再び押し殺したはずの嗚咽が胸から喉元を突き上げてきた。胸がけ付きそうだった。
 違うのだ――あくまでもそう言いたかった。が、誰よりも柑奈自身がこれが現実の、今の生の姿であることを承知していたのである。
 両の手は握りしめたまま、ブルブルとふるえ続けていた。手で貌を覆わなかったのは、自分なら耐え切れると信じていたからであり、こんな事態になることなど思いも寄らなかったからだった。
「ほらほら、姿勢を勝手に崩すんじゃないよ」
 どうこくとともに前屈みになる柑奈のあごを、摩耶はざとく鞭の先端で小刻みに叩いてしゃくり上げてくる。
「それとも口惜しくて口惜しくて仕方がないんなら、大声で泣いて、許してくださいと言ってご覧よ、うん?」
「ああ、うっ……ああっ」
 柑奈は唇を慄わせて、涙でぼやけた摩耶の貌を見やった。
「もっとも、土下座してお許しを願っても、〃犬〃のお前を許すことなんか絶対にないけどね」
 愉快気に凍りつくような微笑を浮かべる摩耶の表情に、柑奈は血がにじむほどに唇をみしめた。まるで魂が取り出されて、眼の前で踏みにじられたような感じがした。
 いや、錯覚でもでもなかった。あらためて摩耶とリーの手が乳房を握りしめてくるなり、柑奈は全身をおののかせながら、屈辱の中に潜む異様な戦慄のさんぜんと目覚めるのを感じとっていたのだった。
 ああっ――悲痛な苦悩の中で、さらなる衝撃が女医の心身を襲っていたのだった。
 よしつぐの愛撫からはじまって数え切れないほどみしだかれてきたバストは、この状況の中で信じられないほどの素直さで、本能のままに愉悦のほのおを燃え拡がらせてきたのである。
(待って)
 柑奈は自分に向かってそう叫んでいた。
 
 
 
 
〜〜『[女潜入捜査官]レディ・ドッグ4』(由紀かほる)〜〜
 
*このつづきは、ブラウザの「戻る」をクリックして前ページに戻り、ご購入されてお楽しみください。
 
「由紀かほる」 作品一覧へ

(C)おとなの本屋・さん