官能小説販売サイト 北原双治 『人妻密猟』
おとなの本屋・さん


北原双治    人妻密猟

目 次
露出妻
愛のブルーム
オープンハウス
聖淫族
スペース・カップル
淫飾みみずく
蜜欲の報酬
ホットワッフル
流転の囁き

(C)Soji Kitahara

◎ご注意
本作品の全部または一部を無断で複製、転載、改竄、公衆送信すること、および有償無償にかかわらず、本データを第三者に譲渡することを禁じます。
個人利用の目的以外での複製等の違法行為、もしくは第三者へ譲渡をしますと著作権法、その他関連法によって処罰されます。


   露出妻

     1

〈ん、……どこで着替えて来たんだよ〉
 入ってきた妻の真新しいベージュのスーツ姿を見て、白石和人は唖然とした。
 いつも、彼女はジーンズにジャケットという軽装で出勤している。薬剤師として私立病院の薬局に勤めており、白衣を着るので平気だと言って、そんなラフなスタイルで出勤していたのだ。
「ごめんなさい、遅くなりまして……。主人がいつもお世話になりまして、ありがとうございます」
「いやいや、堅苦しい挨拶は抜きにして。さ、奥さん座ってください。白石君も待ちわびてましたから、乾杯といきましょう」
 深々と頭を下げ挨拶する純恵を制し、教授の若狭盛信がにこやかにグラスを掲げる。
 教授夫人の弥生が、しとやかな手付きで洋酒の入ったグラスを、純恵に差し出す。
 会釈して受け取った彼女が、彼に愛くるしい瞳を向け微笑む。
〈おまえ、知ってたのかよぉ……〉
 スーツに着替えてきたことを、彼に褒めてもらいたいといった感じの誇らしげな妻の笑みを見て、白石は目でいた。
 純恵の職場へ電話を掛け「若狭教授から、夕食に誘われたんだけど、来れるかい」と、彼女の意向を訊いただけだ。服装のことを注意することなく、仕事が終わったら若狭邸へ直行して欲しいとしか、伝えていない。
 その彼女が、スーツに装いわきまえた姿で現れている。あらかじめ、彼女も教授から話を聞かされていたのかも知れないとおもった。純恵も同じ大学を出ており、若狭教授のゼミに参加していたことがあるのだ。そして、研究室の助手として二人は大学に残ったが、結婚を機に薬剤師の資格を得ていた彼女が退き、就職していた。
 そんな経緯があり、若狭教授の教え子でもある彼女が何らかの形で、その日に招かれることを察していたのかも知れない。
 そのことを目で訊こうとした彼に、純恵が気付かないといったふうに澄まし顔でグラスを口へ運ぶ。
「こんど、首都大学から講師の推薦を頼まれて、ね。学期の途中なので講師でスタートするが、来春には助教授を保証するという話なんだ。それで、白石君を推薦しようとおもってね。……いかがですかな、純恵さん」
「本当なんですか、助教授だなんて、凄いじゃあない。あなた、……」
「まだ、確定したわけじゃあないよ。他にも、自薦他薦の候補がいるから……」
 声を弾ませ振り返った彼女に、白石はさとすように言いくちもとを引き締めた。
「おいおい、私を見くびらないでくれよ。こう見えても、首都大学に関しては、かなり貢献してるんだよ。わたしが推薦すれば、……決定したも同然だよ。そうでしょう、純恵さん」
 渋面をつくり口を尖らせて、生徒が訴えるみたいに若狭盛信が言い、人懐こい笑みを浮かべる。
 学生を叱ったりたしなめたりするときの、教授得意のぐさだ。それで、とがめられた相手もジョークのように受け取り、教授に反感を持たない。つまり、人懐こい笑みを浮かべることによって、窘めた相手をやわらげようとしているわけだ。むろん、咎めは本音であり、教授が自信を持って主張しているときに、多く見られる仕種である。
 そのことを、弥生も知っているのだろう。
 夫を窘めることなく、グラスを手にしたまま穏やかな笑みを浮かべている。
「ええ、若狭先生の推薦なら、完璧ですわ。でも、いろんな手を使う推薦者がいるっていうし、……確定するまで安心できないわね」
「まいりましたなあ、……純恵さんまで、私の力を疑っている。確かに、卑劣な手段を用いて、教授になろうとするやからは大勢いる。このわたしのところにも、人を介して懇願してくる輩がおって、な。この前も、五百万円を用意するって奴が現れたくらいだ。もちろん、即座にお引き取りねがったよ。人生、金だけじゃあない。人物が第一だよ、そうだろう」
「あら、惜しいことしたって悔しがってたじゃあない。ふふっ」
 口を挟んだ弥生が、悪戯っぽく微笑む。
 教授より十一歳年が離れていると聞いているから、四十歳になったばかりだろう。彼女は国際線のスチュワーデスをしていたときに、教授に見初められ結婚したと聞いている。
 
 
 
 
〜〜『人妻密猟』(北原双治)〜〜
 
*このつづきは、ブラウザの「戻る」をクリックして前ページに戻り、ご購入されてお楽しみください。
 
「北原双治」 作品一覧へ

(C)おとなの本屋・さん