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一条きらら   真夜中のダブルベッド

目 次
妻と夫の秘密
真夜中のダブルベッド
再婚願望の女

(C)Kirara Ichijo

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   妻と夫の秘密

     1

 今夜も未希は、自分の身体が固くなるのを感じた。夫がベッドに入って来た時からだ。スタンドの淡い灯のもとで、固く目を閉じ、全身をこわばらせる。足の指までがピンと硬直してしまうのを感じるくらいだった。
 夫の晴彦は無言で未希に寄り添い、ネグリジェを脱がせかける。その手つきは荒っぽくもないが、優しくもなかった。かすかな息づかいに男の欲望が感じられる。
 ネグリジェを脱がされ、パンティを足首のほうへ下げて抜き取られると、未希の身体のこわばりは、いっそう激しくなった。まるで初体験の時のように。自分の身体がふるえ出さないように、未希は一瞬息を詰めたり、深く息を吐いて全身から力を抜くようにした。
 あらわになった未希の裸身は、男なら誰でも息を呑むほど、きれいでセクシーだった。二十九歳という女の年齢のせいか、ただ美しいというより男の欲望を刺激する肉感的な曲線が魅力的だった。
 面長でおとなしそうな顔立ちの未希に、男を挑発するセクシーな裸身は意外だと言った男があった。
 豊かに盛り上がった乳房。きゅっと、くびれた腰。丸く張りつめた豊満な尻。肌は薄い小麦色で、キメが細かく、すべらかだった。過去の男達の言葉で、未希は自分の肉体が賞賛されるもの、と知っていた。
(でも、夫にとっては何の魅力もない身体)
 胸のうちで未希は呟く。晴彦はいつものように、未希の裸体を撫で回すこともなく、右の乳房に顔を埋めた。同時に彼の右手が、未希の下腹部に置かれ、柔らかい茂みを撫で下ろすようにして秘部へ伸びてゆく。とたんに未希は、
(触らないで、嫌!)
 と胸の奥で叫びをあげるのだ。固く閉じた太腿に力が入り、腰のあたりのこわばりが激しくなる。夫の手を払いのけたくなる両手は、こぶしを作ってギュッと握り締めている。掌に爪が喰い込むほど強く。
(お願い、触らないで……)
 太腿の内側がかすかに痙攣する。快楽のためではなく拒絶のために。両腿を固く閉じ合わせていても、だめだった。晴彦の指は進入してくる。
 その部分が濡れていないことを、二人が同時に感じる瞬間。それはいつも、行為の無意味さを、感じさせた。
 晴彦が指を動かし始めた。それは淫らでも優しくもなく、愛撫というものではなかった。未希のその部分が、濡れてくるのを待ってそうしているだけだった。
 小さな痛みに、未希は耐えた。やがて痛みは、薄れかける。皮膚の上を晴彦の指が摩擦しているだけの感覚。身体中から力を抜いて、人形のように身動きしない未希になる。
 晴彦の唇は、すでに乳房から離れていた。唾液に濡れた乳首は、固くとがっていない。胸も上下に波打っていない。穏やかな呼吸が、未希の口から洩れるだけだ。
 晴彦の手が、離れた。かすかな息づかいと共に、彼は黙ってパジャマのズボンとブリーフを脱ぎ捨て、未希に重なってきた。未希の足が開かされる。
 内腿に触れた晴彦の熱く硬いものが、未希の中に強引にという感じで埋め込まれた。スムーズに挿入されるほど、そこは濡れていなかった。多分、晴彦の性器からにじみ出る液が、辛うじて挿入を果した、という感じだった。未希はその部分に痛みを覚え、それが声となって口から洩れた。
 その声を耳にしても、晴彦は何も言わず、腰を動かし始めていた。痛みが取れて、未希はまた無感覚になった。柔らかい粘膜を、晴彦の性器がこすり続けている、という感覚さえ消えかけるほどに。
(どうして、あたしの身体は……)
 夫に抱かれて何も感じないのか、拒絶したくなるのかと未希は泣きたくなった。結婚して一年半、いつも、そうだった。愛していないわけではなかった。
 六つ年上の岩瀬晴彦とは、見合い結婚だった。半年間の交際期間中、未希は会うたびに晴彦を好きになっていった。いわゆる見合い恋愛、という感じで、二人はキスも交わし、一度だけラブホテルへも行った。
 その時、未希の身体は晴彦を受け入れられなかった。二十七歳の女が、まるで処女のようにふるえ続け、身を固くして、晴彦を拒んだのだ。抱擁とキスを受け入れる時の未希の顔は幸せそのものだった。
 ハネムーンの間中も未希は晴彦を拒み続けた。彼は、あっさり手を引っ込めた。未希がまだセックスに慣れていない女で、その羞恥と不安と、旅の疲れのせいと彼は受け取ったようだった。三十代半ば近くの男には、犯してでも欲望を遂げたい、という旺盛な精力も、あるわけではないようだった。
 といって、いつまでも拒み続けていられるものではない。新居に落ち着いて二日目の夜、夫婦は初めての交じわりを持った。晴彦は汗だくになった。知っている限りの愛撫を、試みた。未希の肉体を燃えさせるためではなく、男の身体を受け入れられる状態にするためだった。
 未希も努力した。好き、愛しているの、という言葉も小さく口にした。それでいて、いざという時には肉体が拒んでしまうのだ。晴彦は未希を押さえつけて、ようやく行為を遂げた。
 
 
 
 
〜〜『真夜中のダブルベッド』(一条きらら)〜〜
 
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