川口青樹 『舐め草子〜時代エロス傑作集〜』
川口青樹 舐め草子〜時代エロス傑作集〜
目 次
舐め草子
戦国孤児性譚
江戸伏須次郎と周布院窟
仕掛師佐渡屋
(C)Seiju Kawaguchi
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舐め草子
「大納言様、今宵の
伽
とぎ
でございます」
「さようか」
「ほれ、御前へいくんだ」
薄綾の布をまとった娘が軽く押されて、お腹の大きな男の前に突っ立った。
「くるのじゃ。……さあ、怖いことはないぞよ」
灯火に照らされた娘はまだ震えていた。
「しょうがないの」
「あん」
娘は太い男の腕に抱きかかえられたまま引き寄せられた。
「ふむ、ふむ」
肌はどこを触っても握ればつぶれそうなくらい柔らかかった。
「中はどうかの」
「あひっ」
帯もない薄綾が取り払われ、ゆで卵の白身のような裸身があらわになった。
「うっ、うむう、むうう」
「ひっ、ひー」
大納言は、帳台に寝かせた異国から来た白磁のような肌に、そろそろと舌を這わせていった。
市で買われた時は、泥と汗にまみれていたが、この屋敷の湯と糠袋で磨き上げられた肌はその本来の輝きを見せていた。
胸の膨らみは、わずかに盛り上がりがわかる程度で、乳首というより果実の種のようだった。
だが男の口は、その種をしゃぶりつくし、母親とつながっていた痕跡を示す窪みに執着するように舌先を当てていた。
「あん、あん、ああん……」
その慣れた舌の動きは、そろそろ娘の声を変化させていた。
「……ほっほ、どうやら大納言様にはあの娘がお気にいりなされたようだな」
「さて、さて、いつまでもちますことやら……」
この屋敷の下家司に仕えるやせた男はしたり顔でつぶやいた。
「それもそうじゃな。……また明日には市へ行かねばならんかのう。ほんに忙しいことじゃて」
「これは、これは、お越しなさいませ」
名こそ言わないが、毎度大枚を払っていく上客に、市でも顔役のこの男は抜け目なく満面の笑顔で迎えた。
「先日の娘はいかがでございました。……はあ、さようで……。で、今日もまたお求めで、……へえ、へえ。おーい、お客様だよー」
「お越しなされませ」
「お越しなされませー、きゃあ」
胸乳があふれんばかりの女達が、この身なりの整った客に抱きついていった。
客の男もこの役得があればこそ、表面は面倒くさそうな顔をしながらも、この市の小屋へ自ら足を運んでいるのだった。
乳房や太腿があらわに見える3人の女達は、我先にとばかりしがみつき、早くも男根を引っ張り出してはもてあそんでいた。
唇に吸いついて離さない者、手を自分の股間へ招き入れる者、馬乗りのように丸出しのお尻を押し当てる者と、いつしか年取った男の体と女体がそれだけで一個の生き物のようにうごめいていた。
(さてと、誰にするかの……)
この間に、市の男は客のめがねに叶う娘を選ぶ算段だった。
なにしろ条件が厳しい。
(うーむ、
如
きさ
月
らぎ
。……いやいや、桜か。だめだ、だめだ、あれではな。……しかたない)
多少なりとも準備期間があれば何とかなるのだが、この客はそれも許さない。
しかし、娘一人で通常の数人分以上稼げるとなるとこれを逃す手はなかった。
「
茜
あかね
、おい、……茜はどこだ」
「おや、茜がどうかしたのかい」
「いいからどこだ」
その声が終わらない間にひょっこり現われたのは、目がぱっちりした可愛い娘だった。
「茜、これからいいとこへ連れてってやるからな。きれいなベベ着て、菓子もいっぱいあるところだぞ」
「あっ、あんた。まっ、まさか、茜を……」
「うるさい」
茜の母親は突然の成り行きにオロオロするだけだった。
娘は飛びつくように父親に抱き上げられたまま小屋を出ていってしまった。
〜〜『舐め草子〜時代エロス傑作集〜』(川口青樹)〜〜
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