川口青樹 『体についたクリームはお好き〜フェチ小説傑作集〜』
川口青樹 体についたクリームはお好き〜フェチ小説傑作集〜
目 次
恋人はラバー
体についたクリームはお好き
クロスドレッサーズ
我がパフューム
(C)Seiju Kawaguchi
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恋人はラバー
広い庭では、父親が植木に水撒きをしていた。
「あなた、電話よ」
母親の声に、父親は蛇口を捻るとそのままにして庭から去って行った。
後に残った紗代は、蛇のようにとぐろを巻いているホースのそばによると、まだ水がしたたっているその先を見つめていた。
やがて決心したのか、父親と同じようにホースを持つと、蛇口を思いきり開けて水の出てくるのを待った。
水流が伝わるにつれ、ホースはまるで生きているかのように飛び跳ねて反応していった。
ジュワーッと大きな音を立てて噴出した水の勢いに、紗代の幼い手では、とてもそれを押えていることができなかった。
「うわーん」
「どうしたの、紗代ちゃん」
紗代の悲鳴に母親が飛んできた。
もうその時には、ホースの先がそこら中を飛び跳ね、ホースに絡まった紗代の服は、水と泥で一杯にまみれていたのだった。
母親は、水を止めると、膝を地面につけて泣いている紗代を抱き上げた。
紗代四歳の春の日のことである。
「うん、これはいいね」
宣伝部副部長の野田は、紗代の衣装デザインを見て言った。
「ありがとうございます。使って頂けそうでしょうか」
「ああ、これならいけそうだ。で、君はまだフリーなんだって」
「はい。芦沢先生のもとで働かせて頂いておりましたが、今はフリーでお仕事をさせて頂いております」
「そうだったね。……うちで働く気はあるのかね」
「はい。でも、生意気を言うようですが、契約仕事でお願いしたいんです」
野田は、ブルーグレイのジャケットにストレートパンツ、それにピンクのタートルセーターを着こなして、胸の膨らみが目立つ紗代を舐め回すように見て言った。
「ふーむ、そうか。……まあいいだろう。芦沢先生の御紹介では、むげにできないしな。じゃあ、デザインの花崎君に話をしておくから、詳しくはそちらから指示を受けてくれたまえ」
「はい、どうもありがとうございます」
紗代にしてみれば、やっとここまできた思いだった。
服飾デザイナーの仕事に憧れ、デザイン専門学校、美大へと進み、父親の紹介で服飾デザイン界の大御所と呼ばれる芦沢事務所に入ることができた。
そしてさらに続けた勉強とデザインアシスタントの成果として、とうとうフリーのデザイナーの道が開けたのだった。
そしていつしか二十四歳になっていた。
「うわっ」
紗代は声を上げて目を醒ましてしまった。
淡いピンク調に統一されたベッドの上で、ジトッとするくらい寝汗をかいていた。
(はあー、夢ね。怖かったわ)
何か長い物が自分に襲いかかってきて、逃れようとしても、それはまるで蛇のように自分に巻きついてくるのだった。
(せっかく、お仕事がうまくいきそうなのに縁起でもないわ)
紗代は、そのまま寝ようとしたが、寝汗で気持ちが悪かったので、シャワーでも浴びようと思った。
そして脱衣所でパジャマを脱ごうとした時、初めて股間に異常を感じた。
(何、これ。……いやだわ)
それは明らかに寝汗とは違うヌルヌルとした分泌物だった。
紗代は、デザインの道へ進むため、学生時代から親と離れて一人暮らしをはじめた。
初体験も学生時代のボーイフレンドだった。
それも卒業を間近にひかえた旅行中でのできごとだった。
愛情というより雰囲気、成り行きでそうなってしまった。
その後も数人のボーイフレンドとSEXをしたが、相手もさることながら、どうしてもSEX自体が好きになれなかった。
そしてこんなものなのかと思っていた。
だからこのように身体が反応して、濡れてしまうことなどなかったのだった。
そっとその部分に指を当てると、まるで自分とは無関係に熱くなっていた。
紗代は、裸になってシャワーを取ると、まるで汚れでも落とすかのように激しく水流をその部分に当てた。
「ううっ、あっ、あっ」
割れ目の部分にじかに当てられたたくさんの水流は、黒い毛の部分を素通りして、勢い開きかけたオ○○コの周りの肉を直接刺激していく。
「あうっ、あああー、あーん」
一六〇cmの細身の体が、股間にシャワーのノズルを当てたまま悶えていた。
「……で、こういうコンセプトでまとめて欲しいんだ。……君、どうかしたかい」
「えっ、あっ、すみません。何でもありません」
紗代は、昨夜のことじたいがまるで夢のような気がしていた。
せっかく、デザイン部の花崎という主任に会って、仕事の内容の打合せをしているのに、ついあらぬ方へ気がいってしまうのだった。
「じゃあ、しっかり頑張ってくれたまえ」
「はい、どうもお世話様でした」
(いけない。こんなことじゃあ、チャンスを逃してしまうわ。しっかりしなきゃ)
紗代は、イヤイヤをするように軽く頭を振ると、自宅マンションへの道を急いだ。
パソコンの前で大きく深呼吸をすると、与えられたコンセプトを元に、自分の意匠を模索するようにマウスやキーボードの操作を始めた。
いくつかの案ができると、それをプリントし、机の前に並べてさまざまな角度から検討していった。
「はっ、いやっ」
いつの間にか机の上にうつ伏せになって眠ってしまったらしい。
又昨日と似た夢だった。
ただ今度のはより鮮明で、青い色のゴムホースが口を開けるようにして紗代に近づき、そのまま八十五cmの胸の谷間から侵入してきたところで目がさめた。
(イヤだわ、またあの夢よ。私ってどうかしている)
「はっ」
ビクッと体を震わせると、ショーツの三角地帯に、昨夜と同じような濡れた感触があった。
「ああっ、どうして」
そこに触れた指は、昨夜以上にヌレヌレの状態であることを知った。
紗代は、椅子に背を持たれると、股間の指を激しく動かしていた。
同時に、自然に手が伸びて自分の乳房の膨らみをいじりまわしていた。
乳首は既にかたく尖っていた。
そして小さく開いた唇からは少しずつ唾液が垂れようとしていた。
「あああっ、あーっ、あーん、ああああー」
とうとう紗代は声を放ってしまった。
これが初めてのエクスタシーと言っていいだろう。
味わった快感の余韻がいつまでも続いていた。
紗代はホームセンターへでかけた。
そこは平日にもかかわらず混んでいた。
さまざまなコーナーを見て探していく中、目指す物は園芸コーナーにあった。
「これをお願いします」
「はい。それでどの位の長さが必要でしょうか」
「えーっと……」
紗代は実家の庭に置いてあった物を思い出していた。
「十mお願いします」
「広いお庭なんですね」
「ええ、まあ……」
「それでしたら、こちらに巻き取り器の付いているタイプもありますが」
糸巻きを大きくしたような物に、黄色いホースが巻きついていた。
「いえ、これで結構です」
紗代は青いホースを指して言った。
(とうとう買っちゃったわ)
自分で望んで買ったはずなのに、何かとても悪いことをしている気分だった。
しかし、マンションに帰ると、本能的な衝動の方が先だった。
包みをもどかしく開けると、リビングの床一杯に、蛇のような青い色のホースが広がった。
紗代は自分でもわからないまま、その上にうつ伏せになってしまった。
ゴムの柔らかい感触が肌を通じて感じられた。
「うふーん」
次に紗代がしたのは、ホースを引き寄せてその端を持つと、グルグルと体に巻きつけることだった。
それはまるでホースと格闘をしてでもいるような姿だった。
もちろん長さがあるので、体に巻きつけてもまだまだ余っていた。
さらに紗代の興奮は止まらない。
反対側の端を持つと、巻きつけた胸の間にそれを押し込んでいった。
このことを意識していたのかどうかわからないが、今日の上着は、胸元の大きく開いたカシュクールだった。
そこへ蛇が巣穴に潜り込むようにホースが押し込まれていく。
さらにスカート地に達すると、そのままウェストからスカートの下へ入っていった。
「ああっ、あっ、あっ、いやっ」
自分の手で押し込んでいるのに、ホースの先が股間に達すると、それを避けるように体をくねらせた。
〜〜『体についたクリームはお好き〜フェチ小説傑作集〜』(川口青樹)〜〜
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