官能小説販売サイト 北本世之介(監修) 『愛姦蜜戯5〜投稿ドキュメント〜』
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北本世之介(監修) 愛姦蜜戯5〜投稿ドキュメント〜

目 次
◎田中喜一郎
(仮名・32歳)
◎板橋道彦
(仮名・21歳)
◎中六角路江
(仮名・41歳)
◎磯 佳奈江
(仮名・44歳)
◎漆原英理子
(仮名・女子大生・21歳)
◎白木原由里
(仮名・主婦・42歳)
◎中野いく子
(仮名・主婦・43歳)
◎露木佳奈
(仮名・25歳)
◎前島美智代
(仮名・29歳)
◎堤川 愛
(仮名・26歳)
◎野々下里美
(仮名・31歳)
◎端 満喜子
(仮名・32歳)
◎片桐いずみ
(仮名・28歳)
◎島脇美香子
(仮名・26歳)
◎大浦みゆき
(仮名・28歳)
◎東久保弓子
(仮名・32歳)
◎射水さゆり
(仮名・36歳)
◎猪野まり子
(仮名・40歳)
◎市瀬奈々美
(仮名・29歳)
◎石掛つる子
(仮名・44歳)
◎前田麻里子
(仮名・31歳)
◎長谷真由美
(仮名・28歳)
◎今関ゆみか
(仮名・27歳)
◎内堀由梨絵
(仮名・39歳)
◎七尾はるか
(仮名・43歳)
◎能登部千草
(仮名・32歳)
◎江古田加奈子
(仮名・29歳)
◎白崎とし江
(仮名・31歳)
◎橘 さゆり
(仮名・28歳)
◎七海葉子
(仮名・33歳)
◎小野里るみ
(仮名・36歳)
◎藤池美奈江
(仮名・28歳)
◎又手亜彩美
(仮名・28歳)
◎鴨下美佐子
(仮名・31歳)
◎大賀かすみ
(仮名・29歳)
◎梶原志奈子
(仮名・36歳)
◎大河原綾乃
(仮名・40歳)
◎玉島さとみ
(仮名・35歳)
◎高瀬川るみ
(仮名・38歳)
◎磯崎奈津代
(仮名・43歳)
◎横塚今日子
(仮名・29歳)
◎矢崎すみれ
(仮名・36歳)
◎小田桐法絵
(仮名・44歳)
◎一之瀬菜帆
(仮名・43歳)
◎掛札亜矢子
(仮名・32歳)

(C)Yonosuke Kitamoto

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   ◎田中喜一郎
(仮名・32歳)

     惚れた女は腹違いの妹

 何年か前、行きつけの飲み屋で親しくなった元探偵の男から、こんな恐い話を聞いたことがある。
 それは、かつてジャパゆきさんといわれた日本に出稼ぎにきていたフィリピン女性のドラマである。
 いまもフィリピン国内に何万人もいるといわれている日本の男と現地女性との間に生まれた混血の中に、ジャパゆきさんとなって父親の日本人男性を探しにきていた者たちがいた。
 いまもいるだろうが、避妊もせず快楽だけむさぼった日本の男たちの中には、卑劣にも彼女たちが妊娠したと告げると責任も取らず認知もせず、
「おれの子じゃない」
 とか、
「誰の子か分からんのに認知できない」
 などといって日本に逃げて帰ってきて行方をくらます者が少なくなかった。
 子供たちは長じてから、女の子の中にはジャパゆきさんとなって日本に出稼ぎにやってきた。職業はダンサーなどタレント名目で実際はホステス、それも売春させられている子も多かった。
 さて、そんなお水系の女の子の中に、飛び抜けた美形もいて、ある金持ち実業家のボンボンが夢中になり、果ては結婚までしてしまったのだが、彼女の目的はボンボンの父親への復讐なのだった。
 けんていをはばかり結婚はごく内輪ですませた。彼女も、両親がいないということで親類も呼ばずごく少数の友人だけが出席するきわめて地味なものだったがボンボンは彼女と結婚できたことですこぶるご満悦だった。
 やがて結婚生活も落ち着いて、子供ができたころ、嬉しそうに孫を抱いているボンボンの父親と二人きりの場で彼女は打ち明けた。
「私は、あなたがフィリピン時代に同棲していた女の娘です。母は私を産んでからしばらくして自殺しました。私は一生あなたのそばにいて母をあなたに感じていただきます」
 と。
 その後、彼らがどうなったかは知らないが、やり逃げ男は一生、自殺した彼女の母親の影を引きずることになるに違いない。
 なにしろ自分の実の息子と実の娘が結婚してしまったのだから、これから残りの人生をかけて味わうことになる男の心の負担は簡単なものではすまされまい。
 そして、彼女は最高の復讐を果たしたともいえるだろう……。
 そんな身につまされるような話は、しかし、遠くの世界のことだと思っていたおれの前に、想像を絶する人生の皮肉が転がりこんだのである。
 事故死した亡父は、気のいい父親ではあったが、そして妻であるおれの母親を愛し、それ相応の遺産を母と子供のおれたちに残してくれたのだったが、女極道も熱心だった。
 オンナ極道とは、つまりあっちこっちでお盛んだったということで、母も途中から観念したようだった。
「あのひとはビョーキ、そうビョーキなのよ。だから、もう私はあきらめたの。外のことは外で処理してくれたら、家庭にゴタゴタを持ち込まなければ、それでもういいって考えることにしたの」
 いつか母が、父が外泊した夜シミジミいったのをいまも覚えているが、まさか子供まで外で作っていたなんて。
 いや、おれが惚れた女がまさか自分の実の妹とは天地が逆転する衝撃だった。
 そのことは、彼女とねんごろの仲になってから初めて気がついたのである。

 転勤先で見つけた小料理屋の気のきいた田舎料理と美人のチーママが気に入って通うようになっていた。
 この歳までおれが独身でいたのは、要するに結婚に縁がないからだった。
 女極道の父の血を受け継いだからなのだろうが、近づいてくる女たちとはそれなりの深い関係になるものの、彼女たちからなんとなく遠ざかってゆくのだ。
「私は結婚したいの。でも、喜一郎ってどこか結婚向きのひとじゃないのよね」
 去ってゆく女たちのほとんどが、そういっておれから去っていった。
 考えてみると、おれという人間は、
「結婚してくれ」
 とか、
「おまえしかいない」
 といった、女たちが期待しているだろうセリフは一度として口にしない。
 口にしたくなるような女が登場しないというよりも、おれの中に結婚というものに対して決定的な魅力を感じることができないという致命的な思いが抜けきれないのである。
 むろん、年令相応にベッドの中で女をたん能させる経験も技術もあった。
 実際、女たちはおれの腕の中で十分に性のたのしみを味わい、おれも興が乗れば最高レベルで女を熱狂させる程度にはいささかの自信も持ち合わせていた。
 そのような感想を事実、おれに向かってしあわせそうに述べて通ってきた女たちも少なくなかった。
 けれど、そうなると今度はなぜかおれのほうの熱が冷めて、意識的に以前みたいなサービス精神を発揮しなくなる。
 それで女たちがすねる。
 すねた女を可愛いと思い、いとおしいと感じられたら前向きになれるのだろうが、ひねくれ者なのか、おれはうざったく感じてしまうのだった。
 そうなっては結婚する資格などない。
 結局、流れに身をまかせ、ゆらりゆらりと成り行きまかせの人生を送っているのがいまのおれの姿だった……。
「チーママは結婚経験は?」
 店にかなり通い詰め、だいぶ打ちとけてきたころおれから口火を切った。
「ないの。誰かいいひといないかしら」
「いっぱい、いるでしょう。さばききれないくらいじゃないのかい」
 アメリカのなんとかという知性派美人女優に似たチーママの江利子は、冷えたその夜、めずらしくカウンター越しにおれと同じ焼酎のお湯割りグラスを片手にいたずらっぽく笑ってみせた。
 店の外はいまにも雪が降り出しそうな気配で、平日のことゆえ客足も少なく、カウンター席のおれを除くと、客は他に中年アベックが少し離れてボックス席に二組だけだった。
 初老のママは法事で先に帰り、料理人も厨房の奥で夜食を食べていた。
「もう一人の田中さんは……独身?」
「ああ、そうだよ、縁がなくてね、30すぎて独身……貴族さ」
「あっは、そっか、私たちは貴族か」
「そ、貴族同士、しかも同じ田中姓とくれば、これは運命のときがきたかな」
 上目づかいにヤンチャな視線を送ると薄い笑みを浮かべながらまんざらでもない顔で彼女は視線をからませてきた……。
 誘われても、これまで女の家に行くことはなかった。生活臭のするものはおれの好みではなかったからだ。
 二組のアベック客と調理人が帰ってからそれとなくホテルに誘うと、
「ああいうところは生理的に苦手なの」
「それは悪かった」
「ね、いやでなかったら私のマンションにこない。家でもう少しだけつき合って。明日はお店も休みだし……」
 テキパキと流しで洗い物をする彼女のしなやかな動作と、長い指にゴム手袋をはめて食器や皿を洗う指の動き、そして妄想の中でおれは彼女から和服を脱がし裸にして眺めていたのだった。
 蛇口から湯が出てくるにしても、手指は洗剤で荒れる。彼女の手指が美しいのはゴム手袋を着用しているからだとそのとき初めて分かった。
 ダンディな客を気どるつもりもなく、多くは出勤時間を気にしてのことだったが、この店に通いはじめて最後まで席に残ったのはこれが初めてだった。
 一年間の契約で借りている宿舎に帰っても待っているのは冷えた布団だ。
 それとは別の選択肢は、あたたかい布団とやわらかい女の肉……。
 水商売の女に特有のどこか生活臭さがないことと手指の美しさに心が動いた。
「そうね、明日はお互い仕事が休みだし……図々しくお邪魔するかな」
「はい、決まり」
 彼女の顔に少女のような笑みがパッと広がった……。
 都会のせせこましい間取りと違って、同じ1LDKのマンションでも彼女の部屋はゆったり広く見えた。広く見えたのは余計な家具調度品が置かれていないのと、片づけが行き届いていていつ突然の客が来てもよいように意識されているからだと分かった。
 それだけいつもキチンとしているのだと思いつつ、おれの目と意識はそれとなく男の気配を部屋の中に感じとろうとしていたようだ。
「残念でした。男のひとをこの部屋に入れたのはあなたが初めてよぉ」
「あ、いや、そんなつもりじゃ……」
「ふふ、少しだけ一緒に飲んで、シャワーを軽く浴びて、それから一緒に一つの同じお布団で寝る。これで、どう?」
「いやはや、参った、参りました」
 他の女たちとでは味わえない奇妙な気分におれはめずらしく身体の内側から熱く盛り上がってくるものを感じた。
 どんな気持ちで彼女はおれを家にまで招き入れたのだろう。まさか、結婚話を本気にしたわけでもあるまい。
 どうなろうと成り行き任せのいい加減なおれにとって、いま一番に関心が向いているのは彼女との情事なのだった。
 ……体臭は、申しぶんなかった。
 なによりおれは体臭が受け入れられないと相手に積極的にはなれない。
 シャボン臭や香水の類いも、興奮してくると化けの皮がはげて本来の体臭がにじみ出てくるものである。
 ほのかに甘い彼女の体臭は上等な香辛料の香りに似てほどよいスパイスだった。
 体形も、中肉中背で、肉のつきかたも脂肪の按配もほどよく、おれの脳の中にちょうどすっぽりと納まった。
「ああ……すてきだわあ」
 おれの愛撫に喘ぐ彼女のよろこびの声や息づかいも気に入った。
「ふふ、大きいのね」
「そうかな、自分では分からない、でも気に入ってもらえるなら嬉しい」
「予想通り」
「おや。でも、ママのからだもステキだ」
「ありがとう。こんな女泣かせのお道具でいっぱい外で悪さしてるんでしょ」
 布団の中でお互い横臥して向き合ったまま、ゆったりした口づけを味わいながら彼女はおれの股間を楽しげに手でまさぐり、甘くしごきたてていう。
 時間がゆっくりと流れ、なにかいつもとは違って追われている気がしない。
 せかせかした気持ちから自由になっている自分が気に入ったし、そんな気持ちにさせてくれている彼女におれはめずらしくやわらかい気持ちが働いた。
「ああん……それもステキ、感じるわ」
 いつくしむように彼女の形のいい乳房を愛撫しながら舌と舌をからめ合う濃厚なキスを時間をかけてたん能する。
 細くて長い舌がねっとり巻きつき、彼女の甘い味がする唾液も注がれた。
 日常とは異なるどこか別の世界にいる不思議な気分がおれをゆったりと包んでくる。なにか非常に貴重な感覚だった。
「どうしてママはぼくを……」
「“血”が騒ぐっていうか、最初に見たときから“他人”じゃない気がしたの。でも、ふふ、結婚を迫ったりしないから安心してちょうだい。それより、ねえ、さわって……こんなになっているのよ」
 乳房から細い腕、わきばらからさらにスベスベした彼女の背中を撫ぜていたおれの手を彼女は自分の女の部分に導いた。
 エロチックなひとつかみの蜜毛の茂みに続く花園はハチミツでも塗りたくったようなぬめらかさにみちていた。
「ぼくと同様、すぐにも欲しがってる」
「そう、分かるでしょ、ああ、いいわ」
「キスしてあげる、チューしたい」
「されたいけど、それはあと回しにして……ねえ、早くいれられたいの」
 指をぬかるみにぐっとくぐりこませると、ヒクヒクという淫猥な反応が二指に激しくまとわりついてきた。
「うーん……ママ、素晴しい、こんなにサイズがぴったりだなんて感動するよ」
「私もよ、ああ、ああ、本当にぴったりだこと……ね、いっぱいいってもよいかしら……ううん、うんうん、もうもう」
 腕立て伏せの姿勢で一体化し根元まで深くつなげると、みしみしというやるせなくも甘い締めつけが次々と襲いかかり、しかも彼女が両腕両脚で下からしがみついてきたものだから、たちまち限界が近づいてきた……。
 早朝、まどろんでいる彼女を横目に布団から出たおれは、トイレに立とうとして寝室の一角にあつらえられた小さな祭壇が目にとまり背中に戦慄が走った。
 ベランダに続く引き戸のわずかに開いたカーテンのすき間からまぶしい朝の陽光が祭壇に立てられた彼女の亡き両親の遺影に注いでいて、彼女にそっくりの母親とどこかに二人で旅行したときのスナップ写真であろう、肩を組んでしあわせそうな表情を満面に浮かべている、それは紛れもなく亡父が写っていたからだ。


 
 
 
 
〜〜『愛姦蜜戯5〜投稿ドキュメント〜』(北本世之介(監修))〜〜
 
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